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不死鳥の少女カミリア(旧・不死鳥少女建国紀)  作者: かんざし
第二章 新たな統治者たち

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第一七話 盗賊団との決戦

 シュヴァルテンベルク宮殿の庭と門の前の広場にそれぞれ八〇人ほどが集まっており、皆剣を抜き弓に矢を番えている。


 その人数の多さはギルベルタ盗賊団の規模の大きさを物語っていた。


 門の正面の広場の先には大通りがあり、そこは別の存在で埋め尽くされている。


 騎馬隊が菱形に陣取り、その後方にはこの国の衛兵と冒険者たちがずらりと並んでいた。


 無論少女とクラーラの二人の姿もあるが、少女はブルーノの馬の後ろに乗っている。


 また、他の騎馬隊員の後ろにも衛兵が一人ずつ乗っていた。


「盗賊ども! 死ぬ覚悟はできているか!」


 ブルーノは馬上から宮殿の盗賊たちに向けて大声で問う。投降しろなどとは言わない。


「死ぬのはお前らだ!!」


 そのような言葉が返される。


「全員準備は出来たか?」


 衛兵、そして冒険者たちは首を縦に振る。


「では計画通り、手始めにクラーラ殿、お願いする」


「クラーラ、任せた」


「わかりました」


 クラーラは騎馬隊よりも前に出ると、魔導書を胸元で開く。


 ――その瞬間、彼女の正面には自身の身長を優に超える巨大な魔法陣が現れた。


 燃えるように赤く、中央には火属性を示す三角形の記号がある。


 その光景を見た盗賊たちには、怯える時間さえ与えられなかった。


 巨大な炎の渦が魔法陣から出現すると盗賊に向けて直進し、瞬く間に到達する。


 刹那の間に触れた存在を焼き尽くし、鉄柵のようなつくりの門の隙間を通って更に進むと、宮殿の庭にいた盗賊たちの一部は焼死するか、酸欠で死ぬか或いは大火傷を負った。


 また、炎を浴びた鉄の門も赤く光っている。


 盗賊たちは驚きと恐怖の声をあげ、同時に伯国側の人間もかなり動揺した。


 そして、クラーラはすぐさま別の(ページ)を開き、新たな魔法を使用した。


 魔法陣は先ほどのものと比べると小さいが、一般的な魔法使いが本気で魔法を使用した時ほどの大きさはある。


 黄土色に光るそれは、土属性を示す、逆三角形に一文字を重ねた記号が中央にあった。


 魔法陣からは岩が出現し、宙に浮いた状態で宮殿目掛けて加速する。


 既に炎によって正面の盗賊たちは倒れているため、目的通り赤熱した鉄の門に直撃し、質量でこじ開けた。


 クラーラは魔導書を閉じると少女のもとにやって来て、少女はクラーラの体を左腕で担ぐ。右手は落馬しないようにブルーノの体を掴んでいる。


 準備は遂に整った。


「総員、突撃!!」


 ブルーノは周囲一体に響き渡るほどの大きな声でそう叫ぶと、馬の手綱を強く引き、宮殿へと進み始める。


 彼の言葉に呼応し部下も馬を走らせ、その後ろから衛兵と冒険者たちが追従した。


 盗賊たちは彼らの動きを止めるため立ち塞がろうとするが、未だに火のついた足元の死体が邪魔で上手く立てない。


 しかし、鍛えられた軍馬は主人の命令通りにその上を一瞬にして駆け抜け、宮殿の庭へと突入した。


 入り口の大扉の前に来ると全員馬から降り、騎馬隊と少女、クラーラはそれをこじ開けて中へ入って行く。


 馬で共にやって来た衛兵たちはと言うと、その大扉の前で防衛の陣形を作った。宮殿内部よりも外部の方に盗賊が集中しているとわかったため、援軍に駆けつけられないようそこで死守するのだ。


 衛兵や冒険者たちは随時戦闘を開始し、互いに命を奪い合い始める。


 宮殿に入った少女たちは、外と対照的な内部の静けさに驚いた。


 ここにもある程度の人数がいることは予想していたが、その姿はない。


 魔法使いのクラーラを中央にして陣形を作り、ゆっくりとロビーへと入って行く。


 ――瞬間、頭上に大きな音が轟いた。


「避けろ!!」


 ブルーノの声と同時に天井は崩壊し、瓦礫が降り注ぐ。


 騎馬隊員と少女、クラーラは咄嗟に飛び避け、何とか一命を取り留めた。


 すると、突如として周囲から足音が聞こえ、一瞬にして包囲されてしまう。


 しかし、彼らはいきなり切りかかってくるようなことをしなかった。


「生きていたか、流石だな」


 頭上から野太い女の声がする。


 見上げた先にはギルベルタ盗賊団団長のギルベルタ・ミースの姿があった。


 天井は四枚全てに大穴が空き、彼女は屋上から見下ろしている。


 鉄の小手に付いた塵を払っていた。彼女は天井を自身の拳でかち割ったのだ。


「そこの女二人、伯爵夫人を助けたのはお前たちだろう? やるじゃないか」


「ギルベルタ! 貴様はここで――」


「うるせえ!! 野郎には聞いてねぇよ! 女、名前は何だ? 私はギルベルタ・ミースだ、知ってると思うがな」


「カミリア」


「クラーラ」


 少女が名乗ると、クラーラは続いた。


「そうか。どうだ、女同士の対決としないか? 野郎は野郎の相手をしておけ」


 少女は少し考える。


「……ブルーノさん、ここはお任せしてもいいですか?」


「お待ちを。見縊っているわけではないが、二人でギルベルタを相手するのは危険だ」


「危険は承知です。伯爵様の仇、わたしたちが討ちます」


「……了解した。では、ご無事で」


 少女はクラーラに担がれて天井に空いた穴を飛行魔法で潜り抜け、ギルベルタが待ち受けているであろう屋上へと向かって行くのだった。

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