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不死鳥の少女カミリア(旧・不死鳥少女建国紀)  作者: かんざし
第一章 転生と冒険者の道

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第三四話 手紙と冒険者組合長

 南門を破壊したオークを少女が追い返したその夕方、既に報酬を受け取って去っていたにも関わらず、組合内はその話が絶えなかった。


 旅人と言いつつ冒険者になって一週間ほどで三級まで駆け上がり、オークの攻撃を予想するどころかやってきた五体を撃破して見せたのだ。


 そんな期待の新人に対する評価は様々であった。


 ほとんどの冒険者や市民は肯定的な意見を持っていたが、一部の冒険者は仕事がとられてしまうのではないかと心配しているものもいる。


 そういった理由で騒がしい組合の中へ、一人の男が姿を現した。


 白髪交じりの強面の男、ここの冒険者組合長、ベルント・シュテルンだ。ヒューエンドルフの冒険者でありながら彼に会ったことのない人間は基本的にいない。少女とクラーラくらいだろう。


 そして彼は受付の女の方へと歩いて行き、話し始めた。


「何の騒ぎだ? オークは倒されたんだろう?」


「ええ。その撃破した冒険者の方々が新人でしたから、話題になっているみたいですよ」


「例の女冒険者たちか。確か……カミリアとクラーラ……だったか?」


「はい。冒険者バッジを渡して一週間ぶりに帰って来たと思えば三級になっていましたから、本当に驚きましたよ」


 受付の女は苦笑いしながら言った。


「いっ、一週間で? たしかヴェルナーの依頼を受けたと聞いていたんだが、そんなに難しいものだったのか?」


 組合長は驚いた様子で聞尋ねる。


「護衛の仕事と聞いていましたので、道中でなにかと戦ったのかもしれません。もしかするとそれも、オークたちかもしれませんね」


「……六級で雇った冒険者が、たった一つの依頼を終えて三級か。あいつには見る目があるのかもな。とにかく、二人の今後に期待したいところだ」


「それで、お仕事の方はどうでしたか?」


 受付の女の質問に、組合長は首を横に振る。


「いや、だめだった。貴族の連中は話を聞こうともしない。だらだらと話を長引かせるだけ長引かせて、話の途中でオークが現れたという報告を受けたら、冒険者じゃなくて騎士を呼びやがった。何のための俺たちだって話だよ、全く」


 組合長は愚痴を言う。


「まあ、活躍したのが冒険者だったのは、唯一の救いだな」


「そうですね。あっ、そういえば、ヴァイテンヘルム様からお手紙を預かってますよ」


 そう言って、女は少女から受け取っていた手紙を組合長のベルントに手渡す。


「ほう。あいつから俺に手紙か……珍しいな」


 彼は手紙の入っている便箋の封を切ると、中身を取り出して広げる。


 すると、突然その便箋の空白の部分に文字列が現れた。


 それは〝開けられた〟という意味だ。


「こんな魔法を仕掛けておくなんて、そんなに大切な書類か?」


 そう言った後黙々と読み進める。


「内容を伺っても?」


 ベルントの顔がやや険しいものであったため、受付の女が尋ねた。


「う~ん。〝白い(ほう)は信用できるが黒い方はわからない。だが、白い方に懐いているように見える〟と書いてある。白? 黒?」


「……。あっ、まだ見たことがないのでしたね。例の冒険者二人は、カミリアさんが真っ白な服を着ていて、クラーラさんが黒っぽい服を着ていましたから、きっとそのことだと思います」


「なるほど……」


「その手紙を送ったということは、例の件に参加してくれるのでしょうか?」


「いや、それはないだろう。だが……少し手伝うくらいの気持ちはあるのかもしれない。それにあいつのことだから、きっとこの手紙は貴重品が入っているとか言った上であの二人に渡したんだろうな」


「それで、二人は計画に組み込むのですか?」


「会ったことがないから決められない。まあ、どこかで話す機会を作るさ。信頼できるやつしか使うつもりはない」


「信頼できる……と言っても、今の人数じゃ絶対に無理だと思いますよ」


「それはわかってる。探してはいるが……最近は忙しくてな」


「無理をしてはいけませんよ。歳なんですから」


「ああ。体も言うことを聞かなくなってきた。全く、人間ってのは弱いもんだ」


 彼は受付の横の壁にもたれかかりながらそう言った。


「エルフの方々が羨ましいですか?」


「ん? いや、そうは思わないな。あいつらは暇そうにしているらしい。まあ、ハルトヴィンから聞いた話にすぎないんだが」


「そうですか。……そういえば、カミリアさんがこの事態を予測したという話は聞かれましたか?」


「それは……一体どういうことだ?」


「いきなりのことでびっくりしたんですけどね、シュヴァルテンベルクから帰ってこられてすぐにオークが攻めてくるって言われたんです。理由を聞いたら、オークがそう言ったって。初めは信じられませんでしたよ。でも実際に来ましたから、もしかしたら本当にしゃべったのかもって」


 その言葉を聞いたベルントは、一瞬固まった。


「オークがそう言ったと、それは本当なんだな?」


 彼は少々強い口調で尋ねる。


「えっ、ええ……」


 すると顎に手を当て、少し考え事をした。


「早いうちに話した方がいいかもしれないな。機会があれば会いたい。カミリア君が来たときに、そう伝えておいてくれるか?」


「はい。わかりました……」


 受付の女はまさか本気にされるとは考えてもみなかったため少々驚いたが、当然上からの命令のため承諾する。

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