4.想起。
う、うおおおおお(ガス欠
「えっと……王国史の資料は、こっちだったかな……」
それはボクがまだ学園に通っていた頃の話。
歴史学にも手を出そうと考えた当時の自分は、王都立図書館の歴史書が並ぶ場所へと足を運んでいた。周囲を見回しても、ボク以外に人の気配はない。それもそのはず。王国史というのは専攻している人も少なく、不人気の学問だとされていたから。
だからこそ自分は、藁にも縋る気持ちで選んだわけだ。
いまになって思えば失礼極まりないが、とかく当時は必死だった。
「ん……?」
そんな折に、ボクは一つ不思議なことに気付く。
それというのも、並んでいる資料の多くに欠落があったのだ。経年劣化によって文字が掠れて読めないなら分かるが、割と近年のものでさえも意図的に削除されたような部分がある。これではまるで、何者かが作為的に情報を削除したようだ。
そう考えていると、嫌でも好奇心が刺激されるというもので。
ボクは欠如した箇所を埋めるように、各々の資料の比較を始めた。
「こっちが、こうだから……あぁ、いや……?」
まるでパズルを組み立てるような感覚。
そんな作業を続けていると、薄ボンヤリと何かの影が浮かび上がってきた。文章の端々から見え始めたそれは、次第に輪郭を帯びてくる。
暗殺、毒殺……言葉としては、不穏な響きのものが並んでいた。
だがしかし、そのような話なら古今東西どこにでもある。
「いや、違う。これは……」
それでもボクには、不思議な確信があった。
この資料の数々から削除されたのは、もっと闇の深い何かに違いない、と。そしていま、自分はその答えに近付いてきている。
少しだけ呼吸が速くなるのを覚えつつ、ボクは最後の資料に手をかけた。
その時だ。
「ほう……? 並の学生風情が、存外に賢しいものだな」
「……え?」
背後から、先ほどまで露ほどもなかった気配が生まれたのは。
ボクが驚いて振り返ると、そこにいたのは目深にフードを被った男。彼はこちらを見下ろすように立つと、小さく笑いながらこう言うのだった。
「そこから先の資料に、目を通されては困るのでな。……忘れてもらうぞ」
「な、に……?」
そして、こちらの眼前に手を翳す。
その直後にボクの思考は、緩慢なものへと変化していった。全身から力が抜けるような感覚があって、今さっき見ていた資料の内容が虫食いのように消えていく。
酒を知らないが、酩酊状態とはこういった感覚なのだろうか。
そんな状態のボクに向かって、男は最後にこう告げた。
「さらばだ。……探求心に溢れた者よ」――と。
そうして、ボクの意識は途切れたのだった。
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異世界転生の仕様が変わったらしいので。
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