2.出会い、そして始まり。
ちょっと早めの投稿。
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「ど、どどどどどどど、どうするのこれ!?」
「うーん、倒すしかないねー」
「そんなあっさり!?」
あからさまに狼狽えるボクとは対照的に、ミクリアはニコニコ笑顔で言う。
しかしながら、眼前にはA級冒険者でも苦戦するという巨大ドラゴン。あまりの威圧感に困惑、動揺するのは仕方のない話だと思った。
だけど、今さら逃げ道がないのも事実である。
そうなると、戦うしかないわけで――。
「ミ、ミクリアは戦えないの!?」
「んー? アタシに戦闘技能はないよ?」
「またもやあっさり!?」
念のため、藁にも縋る気持ちで少女に訊ねたが希望は消えた。
どうやら本当に、ボクだけで戦うしかないらしい。
「せ、せめてキミだけは……!」
「……え?」
破れかぶれながら、そう覚悟を決めると身体は自然と動いていた。
どのみち、食糧難で餓死するしか道がなかったのだから。この命の捨て方は、自分自身の意思で決めたい。そう考えて、ボクはミクリアを守るように前に出た。
そして、こう伝える。
「キミだけは、どうにか生きてくれ!!」――と。
すると少女は、どこか驚いたように言った。
「……へぇ、やっぱりカッコいいね。巻き込まれたのに、アタシを助けるの?」
「そんなの当たり前だろ! これでもボクは、男なんだから!!」
「あはは! すごいよキミ、改めて惚れ直しちゃった!」
「え、なに、惚れ……!?」
そして、唐突に声色を変えて。
ミクリアは静かに、ボクの背中を押すように告げるのだった。
「大丈夫、安心して。キミもう、以前のキミじゃない。だって――」
心の底から、嬉しそうな声で。
「この【大精霊】ミクリア・リューセンクルスの加護を得ているのだから!」
「え……?」
少女がそう口にしたと同時、ボクは魔法を使うための魔力を練り上げた。
すると、すぐに異変に気が付く。
「なんだ、この馬鹿みたいな魔力は!?」
ボクの中から溢れたのは、今まで感じたことのない力の奔流。
しかし、決して制御不可能ではなく。自分の中で完結しているその力は全身を巡って、次第に指先へと集中し始めた。これなら、あるいは――!
「くそ、ワケが分からないけど行くぞ!」
ボクはそう考えて、唯一使える【初級魔法】をドラゴンへ放った。
「喰らえ……【ファイア】!!」――と。
次の瞬間、ボクは信じられない者を見た。
自身の手から放たれたのは【篝火】ではなく【業火】であり、その灼熱は執拗にドラゴンの大きな肉体を焼き尽くしていく。藻掻き苦しむ巨大な魔物は、やがて断末魔の叫びを上げ、ゆっくりとその場に地響きと共に倒れ伏すのだった。
「いま、のは……?」
その光景が、いまだに信じられない。
ボクは自分の手を見つめて、ただただ唖然としていた。すると、
「あはは! だから言ったでしょ? ――願いを叶える、って」
「え……?」
そんなこちらに笑いかけたのは、ミクリア。
少女はボクの前に立って、どこか大人びた表情を浮かべていた。そして、
「それにしても、凄いね。『潜在能力を解放した』と言っても、ここまでの火力を出すには相当な努力が必要なんだ」
「えっと、ミクリア……?」
「キミはきっと今まで、誰にも負けない努力をしてきたんだね」
「…………!」
ボクの今までを肯定するように、そう語る。
それは決して嫌味ではなく、ただ純粋な称賛だった。
だからこそ、彼女の言葉はボクの中に沁み渡るように広がっていく。
「それじゃ、改めて自己紹介しようか」
それに気を取られていると、ミクリアはそう言って恭しく礼をした。
そして、慈愛に満ちた笑みを浮かべて名を口にする。
「アタシの名前は、ミクリア・リューセンクルス。世間ではよく【大精霊】とか呼ばれてるけど、それはどうでも良いんだ。いまのアタシは、ただ――」
途端に、とても無邪気な子供っぽい笑みに変わって。
「キミに恋する、一人の女の子だよ!」――と。
これが、ボクと【大精霊】ミクリアの出会いだった。
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