表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/41

2.出会い、そして始まり。

ちょっと早めの投稿。

応援よろしく!









「ど、どどどどどどど、どうするのこれ!?」

「うーん、倒すしかないねー」

「そんなあっさり!?」




 あからさまに狼狽えるボクとは対照的に、ミクリアはニコニコ笑顔で言う。

 しかしながら、眼前にはA級冒険者でも苦戦するという巨大ドラゴン。あまりの威圧感に困惑、動揺するのは仕方のない話だと思った。

 だけど、今さら逃げ道がないのも事実である。

 そうなると、戦うしかないわけで――。



「ミ、ミクリアは戦えないの!?」

「んー? アタシに戦闘技能はないよ?」

「またもやあっさり!?」



 念のため、藁にも縋る気持ちで少女に訊ねたが希望は消えた。

 どうやら本当に、ボクだけで戦うしかないらしい。



「せ、せめてキミだけは……!」

「……え?」



 破れかぶれながら、そう覚悟を決めると身体は自然と動いていた。

 どのみち、食糧難で餓死するしか道がなかったのだから。この命の捨て方は、自分自身の意思で決めたい。そう考えて、ボクはミクリアを守るように前に出た。

 そして、こう伝える。




「キミだけは、どうにか生きてくれ!!」――と。




 すると少女は、どこか驚いたように言った。



「……へぇ、やっぱりカッコいいね。巻き込まれたのに、アタシを助けるの?」

「そんなの当たり前だろ! これでもボクは、男なんだから!!」

「あはは! すごいよキミ、改めて惚れ直しちゃった!」

「え、なに、惚れ……!?」



 そして、唐突に声色を変えて。

 ミクリアは静かに、ボクの背中を押すように告げるのだった。





「大丈夫、安心して。キミもう、以前のキミじゃない。だって――」





 心の底から、嬉しそうな声で。





「この【大精霊】ミクリア・リューセンクルスの加護を得ているのだから!」

「え……?」



 少女がそう口にしたと同時、ボクは魔法を使うための魔力を練り上げた。

 すると、すぐに異変に気が付く。




「なんだ、この馬鹿みたいな魔力は!?」




 ボクの中から溢れたのは、今まで感じたことのない力の奔流。

 しかし、決して制御不可能ではなく。自分の中で完結しているその力は全身を巡って、次第に指先へと集中し始めた。これなら、あるいは――!




「くそ、ワケが分からないけど行くぞ!」




 ボクはそう考えて、唯一使える【初級魔法】をドラゴンへ放った。






「喰らえ……【ファイア】!!」――と。






 次の瞬間、ボクは信じられない者を見た。

 自身の手から放たれたのは【篝火】ではなく【業火】であり、その灼熱は執拗にドラゴンの大きな肉体を焼き尽くしていく。藻掻き苦しむ巨大な魔物は、やがて断末魔の叫びを上げ、ゆっくりとその場に地響きと共に倒れ伏すのだった。




「いま、のは……?」




 その光景が、いまだに信じられない。

 ボクは自分の手を見つめて、ただただ唖然としていた。すると、




「あはは! だから言ったでしょ? ――願いを叶える、って」

「え……?」




 そんなこちらに笑いかけたのは、ミクリア。

 少女はボクの前に立って、どこか大人びた表情を浮かべていた。そして、




「それにしても、凄いね。『潜在能力を解放した』と言っても、ここまでの火力を出すには相当な努力が必要なんだ」

「えっと、ミクリア……?」

「キミはきっと今まで、誰にも負けない努力をしてきたんだね」

「…………!」




 ボクの今までを肯定するように、そう語る。

 それは決して嫌味ではなく、ただ純粋な称賛だった。

 だからこそ、彼女の言葉はボクの中に沁み渡るように広がっていく。




「それじゃ、改めて自己紹介しようか」




 それに気を取られていると、ミクリアはそう言って恭しく礼をした。

 そして、慈愛に満ちた笑みを浮かべて名を口にする。





「アタシの名前は、ミクリア・リューセンクルス。世間ではよく【大精霊】とか呼ばれてるけど、それはどうでも良いんだ。いまのアタシは、ただ――」






 途端に、とても無邪気な子供っぽい笑みに変わって。






「キミに恋する、一人の女の子だよ!」――と。










 これが、ボクと【大精霊】ミクリアの出会いだった。



 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。

創作の励みとなります!


応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 3.出会い、そして始まり。 『2』ではありませんか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ