プロローグ 思わぬ勘当と、天啓。
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「――ヘリオス。お前は本当に何をやっても中途半端だな!」
「も、申し訳ございません!!」
家族や使用人がいる面前で、父はボクのことを叱責した。
それというのも、ボクがあまりにも器用貧乏だから、ということが原因だ。自分は剣技や魔法、さらには体術や治癒術についてまで。何をやっても中の下か、できても中の中くらいの成績だった。栄光ある伯爵家の嫡男としては、なんとも情けない。
そのことは自覚していたし、必死に努力を続けていた。
しかし、いくらやっても、どこかで壁にぶち当たってしまうのだ。
「……次こそ! 次こそは、学園の成績上位を獲ってみせます!!」
「もういい! そのように口約束して、貴様は何度となく私の期待を裏切ってきたからな!! ――少しは妹のクレアを見習ったらどうだ!?」
「そ、それは……!」
父の視線を追いかけると、そこには母の陰に隠れる妹の姿。
彼女はとかく魔法の天才であり、様々な属性のそれを操ることができた。それでいて、まだ学園に入学する前だというのだから、末恐ろしい話である。
そんな妹がいるためか、最近は以前にもまして風当たりが強くなっている。
そして、その時は唐突にやってきた。
「そろそろ潮時だな。――ヘリオス、貴様は勘当処分とする」
「え…………?」
ボクは父の言葉に、つい呆然としてしまう。
彼は一体、なんと言ったのか。
勘当処分、ということは。
つまり、廃嫡という意味だろうか。
ボクは一気に青ざめて、父に縋り付いた。
「そ、そんないきなり! あんまりです!!」
「ええい、うるさい! 誰か、この部外者を摘まみ出せ!!」
「お父様……!!」
ボクは伯爵家の衛兵に取り押さえられ、父の背中を見送るしかできない。
それが、ボクの貴族としての終わり。
アークライトという名を剥奪され、ただのヘリオスとなった瞬間だった。
◆
「はぁ……。どうしよう、これから」
――勘当処分となって、はや数日が経過した。
その間はどうにか、支度金として用意されたお金で食い繋いだ。しかし、それも間もなく尽きようとしている。このままでは餓死してしまう。
日雇いの仕事を探してはみたものの、しかし都合良くいくわけもなかった。
それに、何をやっても中途半端なボクだ。
「きっと、どこに行っても邪魔者扱いだよね」
王都の中央広場。
その噴水横に備え付けられた椅子に腰かけて、ボクは空を仰いだ。
なにもかも、終わりなのかもしれない。そんな諦めが、ボクの心によぎった時だった。
『ねぇ、キミ! もしよかったら、一つだけ願いを叶えてあげようか!?』
そんな、嘘のような言葉が聞こえたのは。
ボクはボンヤリとした思考で、上の空なまま声に応えていた。
「それ、だったら――」
こんな器用貧乏な自分は、もう嫌だ。
だから――。
「中途半端な自分じゃなくなりたい。とにかく、強くなりたい」――と。
そう、答えていた。
すると次の瞬間、また同じ声が聞こえて……。
『りょーかいっ!』
「え……?」
ボクの運命は、大きく動き始めたのだった。
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