5
ギルドでの換金の結果、私1人の分で1万2050ネルになった。
日給1万越えとは、やはり町からでるのは、儲けやすいのかもしれない。
ギルドではちょうど、町内での仕事を終えたロイくんもおり、3人で軽く買い物を済ませることとなった。
ちなみに、私が家に泊まると聞いて、ロイくんはすごく喜んでくれた。……嬉しい。
「あっ」
ギルドから市場へ向かう途中に、教会とみられる建物があった。
教会では誰でも聖堂で祈ることができるそうだ。
新しい治癒魔法の習得になにか役立つかもしれないと、リュイくんとロイくんにも付き合ってもらって入ることにした。
「こちらが礼拝堂です」
受付で見学を希望すると、受付の人が礼拝堂まで案内してくれた。
ステンドグラスが輝く幻想的な場所であった。
私は軽く祈ってみるが、何かが変わる感覚はなにもなかった。
……そう簡単にはいかないか。
軽く見学を済まし、市場で買い物を行う。
リュイくん達の家に帰ると、リュイくんたちのお母さんがベッドに座って編み物をしていた。
「母さん、寝とかないと」
リュイくんがお母さんを横にしようとするが、お母さんは首を振る。
「今日ね、とても調子がいいのよ。アズサさんのおかげね」
微笑みながらお礼を言うお母さんに、私は苦笑いを返すしかなかった。
「今日も、一応治癒かけときますね」
私は、何かが変わればと、今日もHP回復と病気(風邪)の治癒をかける。
病気(風邪)の治癒がかかり終わったと思うと、私の体も同時に淡く光る。
「えっ?」
それと同時に目の前にステータスバーと同じ要領で案内が表示された。
『MPを累計100消費した記念にスキルを獲得できます
1.採掘
2.解析
3.絶対音感
4.治癒魔法:病気(ウイルス)
5.治癒魔法:病気(細菌)
獲得したいスキルを1つ選んでください』
こんな感じで増えるんだ。
私は、スキルが本当に増えるのだと知ることができて安堵したが、どれを選ぶか迷っている。
病気の項目は2つ、ウイルスか細菌か……。
必ずしもこの2つがお母さんの病気の治療になるとも限らない。
ライフライン!ライフラインの使用を求めます。
テレフォンで、天使様にテレフォンお願いします。
そんな私の願いが通じたのか、私は再度まばゆいステンドグラスの教会にいた。
「えっ?」
「アズサ様の思念だけをこちらに呼びました。私のこと、頼ってくれて嬉しいです」
現状をいまいち理解できていなかったが、あの可愛い天使様が笑顔で喜んでくれているので、私も嬉しいです。
「スキル獲得おめでとうございます」
「まだ!まだ獲得していないんです。どれ選んだらいいかわからなくて」
天使様との再会を喜ぶが、それよりもスキルの選択を急がなくてはならない。
私はどう説明しようかと、わたわたと意味もなく手を動かし天使様に訴える。
「アズサ様の願いはわかります。その上で私の最適解は解析です」
「解析?」
天使様は聖母のような微笑みで私の問いに最適解をくれる。
しかし解析とは、ギルドの依頼の薬草などを判別する以外に使えるのかな?
「はい。解析は物を分析するものと思われているかもしれませんが、この解析で病名も調べることができます。その結果を踏まえて、次回のスキルで適切なものを選ぶのがよろしいかと」
まさかのチートな活用方法ですね。今、一番欲しい能力でもあります。
しかし、病気を解析できたところで次のスキル獲得がいつかわからないと意味がないのである。
そんな私の疑問に天使様は答えてくれた。
曰く、スキル獲得クエストというものがあり、これをクリアすることで、新しいスキルを獲得することができるそうだ。
そして今の私が達成できそうなクエストは『一気に100MPの消費』と『累計消費MP200』辺りだそうだ。
ちなみに獲得できるスキルは、現状で必要であろう項目が自動で選択肢として提示されるらしい。
天使様との短い逢瀬を行い、瞬きの間に私の意識は現実世界に戻った。
私は慌てて、案内の中から解析の項目を選択した。
『解析魔法を獲得しました』
その案内が出ると、案内ボードは自然に消えた。
私はお母さんの手を握ったまま、解析魔法を使用してみる。
解析魔法と心の中で唱えると、目線の先に照準位置を示すマークが出る。
目線を動かすとマークも動く。
マークが標的を検知すると横に解析に使用するMPの数値が表示される。
私はそのマークをお母さんの胸あたりに持って行き、MP30を使用して解析を念じる。
マークの横に案内ボードが出て来て。お母さんの状態が記載されていた。
『名前:レミ・アークシィ
年齢:38歳
種族:獣人族
ジョブ:コック
HP:128/130
MP:120/120
状態:衰弱(軽度)
病名:肺炎(ウイルス性)』
これにより次にゲットすべきスキルは病気(ウイルス)に決まった。
私の行動を不思議そうにみている、お母さん改めレミさんに、勝手に解析をしたことを含めて謝る。
「大丈夫よ。それより、私のためにいろいろしてくれてありがとね」
レミさんは優しく私に微笑んでくれた。
今、MPを30使用したことにより、累計消費MP200に近づいている。
明日にでも達成できそうな勢いなので、私は、明日も家によることを伝える。
レミさんは宿がないなら、しばらく泊まってもらっても構わないと言ってくれた。
リュイが年齢が近いから不安かもしれないけど、と付け加えられたが、リュイくんには不安を感じていない。
安心してくれと答えたが、微妙そうな顔をされた。
さて、リュイくんとロイくんによって作られた団子鍋をみんなで食べてその日は終わった。
ちなみに寝る部屋は客間をしばらく使っていいとのことだった。
レミさんはリュイくんの肩を叩きながら、もっと頑張れと声をかけていたが、リュイくんはとても頑張っているので褒める方向に変更してあげてください。