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そのまま押し切られるように、リュイくんの家へ泊まる事が決められた。
家の位置を覚えていないというと、なんなら今日1日一緒の依頼を受けるとまで言って、ギルドの初級依頼ボードの中から、3つほど候補をあげてくれた。
ヒケシ草の採取、トゲオオアリのトゲ、ナマラダケの採取
よくわからないが、この3つがお得らしい。
さすが普段からギルドで稼いでいるだけある。
そしてそれらの生物や植物を見た事ない私は、リュイくんの初心者講習を受ける事にしたのである。
「町から出るのは簡単です。何も手続きいらないので」
門から出て、光の柱へとリュイくんと向かう。逆に町に入るときには身分証のチェックがあるので時間がかかる。
特にみんなが帰宅し始める16時台は大変らしい。
光の柱はエレベーターのような感じで順番に乗れば、そのまま下まで自動で動いているらしい。
最初の一歩が地面のない場所に立つため、恐怖でしかなかったが後ろがつまるといけないので、リュイくんに引きずられるように乗せられた。
「こっちです」
光の柱から出でてもしばらく浮遊感が残っている。
ふらふらとなりながらもリュイくんのほうへ付いて行く。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫」
車酔いしやすい体質なのを忘れていた。
頻回にあれには乗りたくないな。
ソリーガの下の土地は整備された道になっており、右に50kmでガガーリという町へ、左へ150kmでアルガイガという町へ続いているそうだ。
今回受けた依頼はガガーリへ行く道から逸れた、森の中でほぼ揃うらしい。
「こちらです」
森へ入り、獣道ができており、その道沿いに進むこと30分ほどでヒケシ草が取れる場所へついた。
ヒケシ草はよもぎのような形をしており、これを30本集めるらしい。
同じ場所に大量に生えているので、簡単に集まるそうだ。
茎を3cmほど残しておくと再度生えて来るため、継続的に同じ場所で採取できるのが特徴だ。
30本集めたら、リュイくんからもらった小さい輪ゴムで茎の部分を一纏めに止めておく。
大体2時間ほどの作業で25束ができた。
「次の場所へ移動しましょう」
リュイくんの言葉に腰を鳴らしながら立ち上がる。
「ここからさらに奥に行きます」
ヒケシ草の群生地からさらに進んで鬱蒼とした森が少し開けた。
太陽がちょうど真上あたりにいた。
「リュイくん。お腹空かない?」
「えっ? 俺いつもご飯食べずに作業しているんで忘れてました。ご飯もってきてなくて……」
「大丈夫!私に任せて」
私は食べ物図鑑を出してページをパラパラめくる。
「リュイくんなに食べたい?」
どうせならとリュイくんに図鑑を渡してみると、わたわたと受け取り、ページを見て固まった。
あっ。この世界にない食べ物だらけなんだった。
「こ、こんな大切な物、ぽんぽん人に渡しちゃダメですよ」
リュイくんにも注意されて、私はしょんぼりと謝る。
大丈夫だからと、無理やリュイくんに好きなものを選んでもらった。
なんとなく味が想像つくからと選ばれたのは、ステーキだった。
ステーキなら白米とコーンスープあたりもつけとこう。
私は食べ物図鑑からステーキ、白米、コーンスープを2セットずつ召喚し、サバイバル大全集からフォークを2つ召喚した。
もちろん食べ物が召喚されたことに驚いていたリュイくんには、お茶目にウィンクして誤魔化してみた。
同じくサバイバル大全集で召喚したブルーシートの上にそれらを乗せて、隅の方に座ってリュイくんと食べ始める。
最初はおずおずとした感じで食べ始めたリュイくんだったが、一口食べた瞬間に目を見開き、瞬く間に食べ終えてしまった。
「おかわりいる?」
無言でコクコクと頷くリュイくんは、初めて年相応の表情をしていた。
「こんな力があれば、野宿するのも簡単かもしれませんね」
ご飯を食べ終えた後、リュイくんはしみじみといった感じで漏らす。
食後にコーヒーで一息ついた後、私たちは再出発することにした。
ちなみにリュイくんはコーヒーの匂いを嗅いだだけで耳がぺしゃんこになったので、麦茶を飲んでもらった。
「この先に岩穴があって、そこでトゲオオアリとナマラダケが取れます」
トゲオオアリはバナナサイズのアリの頭に1本のトゲが生えた生き物で、イノシシのように突進して来るので注意が必要らしい。
しかし一直線にしか進めないので、避けるのは簡単だそうだ。
トゲオオアリは敵を見つけると突進して攻撃を仕掛けてくるが、避けられるとそのまま壁に突っ込みその衝撃でトゲだけ残して消えるらしい。
なんとも悲しい生き物である
ナマラダケは岩穴の天井からぶら下がるように生えているキノコで、赤色をしているそうだ。
電球のように光っているのが特徴だ。
ここでは、ナマラダケを採取しながらトゲオオアリからの攻撃を避けていくだけで2つの依頼を同時進行できるようだ。
天井を見ながら足元のトゲオオアリに注意が必要なのでコツが必要そうだ。
私は足元を守ってくれる護衛を召喚することにした。
動物図鑑をペラペラめくり、アリといえばアリクイと安直な考えでアリクイを召喚した。
しかしアリのサイズが大きすぎて、アリクイにはどうすることも出来なかったので召喚を解除した。
再度動物図鑑をパラパラとめくる。
次は動く標的を仕留める意味でネコ科の動物を吟味する。
ライオン、ヒョウなどは大型すぎるし、無難に猫でいいのかもしれない。
普通に鳥とかも捕まえるし。
しかし、動物図鑑に載っている猫の愛玩動物感の強いこと。全然敵を仕留めそうには見えない。
私は複数の猫の種類から気品にあふれるロシアンブルーを召喚した。
ロシアンブルーは猫らしくマイペースに毛繕いなんかしていたが、トゲオオアリが動くのを見ると果敢に飛びかかっていく。
攻撃を食らってはいるが、猫パンチでなんなく倒していっている。
私はトゲオオアリをロシアンちゃんに任せて、ナマラダケの採取に集中する。
リュイくんからそろそろ帰りましょうと声がかかるまで無心で採取していた。
ロシアンちゃんには、動物図鑑の猫のページにあった好物のチュールを召喚して褒美として与えた。
喜んで食べるロシアンちゃんに癒されながら召喚を解除し帰路につく。
「結構取れましたね」
リュイくんも無心で作業していたので、2人合わせるとかなりの量のトゲオオアリのトゲとナマラダケとなった。
早めの時間のおかげで町への入門も短時間で終わり、ギルドで換金するとリュイくんの家へと向う。
光の柱?あれは忘れさせてください。