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男の子は一般住宅区のとある一軒家でようやく止まった。

当たり前のようにランちゃんも後ろにいた。

ランちゃんあのスピードについていけるのね。


「ただいま」

男の子は私を下ろすと、手を引いて家へと入って行く。

「お邪魔します」

私は形式上の挨拶を述べると、引きずられるままに奥にある寝室に連れていかれる。

「お母さん大丈夫?治癒魔法使える人連れて着たよ」


部屋にはベッドの上で汗を大量にかきながら息苦しそうに喘いでいる女性と、その女性の前にたつ青年。

「ロイ!勝手なことをするな!  ……すみません治癒師の方、うちにはお金がないので、せっかく来ていただいたのですが……」

「兄ちゃん!このままじゃお母さんが」

「だからといって、治癒師に治療を頼むお金なんてないんだ。わかってくれ。ロイも辛いだろうけど現実は知っておかないと」

青年は膝をつき、男の子の肩を掴んで諭すように言い聞かせた。

男の子は最初は勢いがあったが、だんだんと元気がなくなっていく。


「お姉ちゃんは治癒師じゃないよ?」

そんなシーンの後ろからランちゃんが声をかける。

その治癒師というのがわからなく、男の子にも青年にも声をかけることができなかったが、ランちゃんのおかげで話が進みそうであった。


「ランちゃん。治癒師ってなに?」

「治癒師っていうのは、教会にいる怪我を治す専門家だよ。治療にはお金がかかるんだけど、すごく高いんだ」

ランちゃんの頭を撫でながら私は青年へと向き直る。


「私は治癒師ではないので、お金のことは気にしないでください。治癒といっても大したことは出来ないんですが、試して見てもいいですか?」

「……お願いします」

少し不安そうな顔を見せる青年ではあったが、頭を下げて母親の前へと導いてくれた。


私は母親の手を握ると治癒魔法スキルボードを病気(風邪):20をタップする。

先ほどの男の子の時と同じように淡く光が立ち込め、そして消えて行く。

母親の症状は先ほどとは変わり、呼吸が落ち着いていた。


私の治癒魔法スキルボードの病気項目は風邪か疫病かの二択だ。

兄弟に感染していないのを見ると疫病ではないので、風邪の治癒をかけたが、根本的な原因解決ではないので、完治はしない。

天使様は魔法を使っていけば、高度なものを習得していけるといっていたが、風邪の治癒を続けたところで、他の魔法を覚えていけるのか……。

とりあえず体力も消耗してそうなので、HP回復:15もかけておいた。


「あの、応急処置でしかないんですけど……」

「いえ、ありがとうございます。こんなに落ち着いている母を見るのは久しぶりです」


呼吸が落ち着いたからといって完治ではない、彼女を助けるには、高度な治療魔法を習得しなくちゃ。

私は志を新たにし、不安ではあったが、ヤドクラスに泊まっているので何かあれば来るように言って家を後にした。



その後ランちゃんにギルドまで送ってもらい、一応、初級依頼ボードの確認を行った。

「なにかないかな」

そう言いながら見るが、頭の中はロイくんのお母さんのことでいっぱいだった。

選ばないと宿がなくなるというのに……。

ギルドは最後のチャイムがなる20時には閉まる。

19時のチャイムもなった以上、長居はできないという焦りも手伝い、目線は初級依頼ボードの依頼書を泳ぐだけだった。


「はぁ」

私はため息を吐きながら宿へと戻る。

結局いい依頼を見つけることはできなかった。

朝一で町から出て、薬草採取に出かけた方がいいのかもしれない。

なんなら、サバイバル大全集をフル活用して、一晩は野外で泊まってもいいかもしれない。

明日の朝もう一度ギルドに向かおう。

そう決めて私はお風呂に入り、早々に眠りについた。


そういえば、今日はいろいろあった。

いきなり穴に落ちて、女神様・天使様にあって、異世界にきて。

呪っていた部長なんて、心の片隅にもいやしなかった。

世界中のみんなが消えてしまえばいいなんて思っていた私が、ロイくんのお母さんの病気を治したいと思うなんて不思議なものである。


次の日の朝、チャイムの音で目が覚めた。

思いの外疲れていたのか、ぐっすりと寝てしまっていたようだ。

早く準備してギルドに行こうと、共用のお風呂場にある洗面台で顔をパパッと洗う。

昨日と同じ服しかないが、サバイバル大全集にも洋服はなく、これは服装代も稼がないとなと、一層焦りがでる。


当面の目標は1日の宿泊費2000ネル、それ以外で洋服代としてだいたい6000ネルくらいを稼ぐ、そしてロイくんのお母さんの治療のためのスキルアップ。

宿を出たところで、昨日の青年がおり、会釈をしてこちらに来た。

「昨日はありがとうございました」

「いえ、お母さん大丈夫ですか?」

「はい。今は大分落ち着いています」


青年と並びながらギルドへと向かう。

青年の名前はリュイくんというらしい。18歳とのことだ。

リュイくんとロイくんはギルドで私と同じように日銭を稼ぎながら、母親の薬代や生活費をまかなっているらしい。

昨日もロイくんはゴミ掃除の仕事を行なって家に帰る近道として路地を通り、横柄な大人に絡まれたようだ。

ロイくんを助けた事に関しても感謝を述べられる。


「リュイくん、君のお母さんの完治ができるよう、私スキルアップ頑張るから」

「ありがとうございます」

「そうだ!私、今日から野宿すると思うから、ヤドクラスに行っても会えなの」

「野宿ですか?」

びっくりしながら私の顔を見て来るリュイくん。耳や尻尾まで逆立っている。

私は恥ずかしながらもお金がなく、宿に泊まれないので、いっそのこと出稼ぎのように町から出て、薬草や素材などを集めてこようと思っている事を伝える。

なんなら従業員の女性に部屋の鍵も返却済みだ。


リュイくんはそんな私の言葉に悲観そうな顔をする。

「夜の地上はモンスターが活発化するのでオススメはしません」

初心者は16時のチャイムを目処に町へ戻るのが普通なのだと教えてくれる。

その言葉に不安にはなるが、やはりない袖は振れないのである。

私の覚悟の決まった顔を見たのか、焦ったリュイくんは俺の家に泊まればいいと爆弾発言をする。


「えっ?」

「あっ」

私の唖然とした声に、リュイくんも自分の言った言葉を反芻したのか、顔がみるみるうちに赤くなる。

「違います!いや、あの違くて、いや違わなくて。あの、泊まってください」

顔の赤いリュイくんが顔をブンブン振りながら慌てふためくが、最終的に覚悟を決めて目を合わせてきた。

いやそっちに振り切れなくいいんだよ!


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