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「あっぶっっ」
転移して崖端だった件に関して、思わず声が出る。
天使様に対して失礼かもしれないが、しゃあないしゃあない。と私は自分を正当化させる。
「ごめんなさいっ。 到着地点の座標計算間違ってました」
焦って謝る天使様。しゃあないしゃあない、もう少しで死にそうではあったが、天使様の可愛さになんでも許しちゃう。
「ほんとはもう少し右側だったんです」
……右って崖から落ちてるが?開幕そうそう出落ちで即死?
実は天使様って性格悪かったの?そんなの可愛さで許される範囲超えてるよ?
「違いますっ。私から見て右ってことで。もうちょっとこっちら辺です」
そう言って天使様は私の3歩ほど左を指さす。
ほぼ今と変わらんがな。
「とりあえずソリーガに入る前に、基礎情報の説明をと思いまして」
気を取り直して、コホンと乾咳をした天使様は話を進めた。
「まずはステータスと念じてください」との天使様のお言葉に従う。
すると目線の先にいわゆるステータスバーなるものが表示された。
名前:アズサ
年齢:25歳
種族:人間
称号:異世界人
ジョブ:召喚士 Lv.1
HP:158/158
MP:800/800
スキル:召喚魔法、治癒魔法
加護:女神の加護、天使の加護
所持:動物図鑑、鉱物図鑑、植物図鑑、昆虫図鑑、鳥図鑑、魚図鑑、恐竜図鑑、薬図鑑、食べ物図鑑、乗り物図鑑、サバイバル大全集
「まずはスキルの召喚魔法を試してみましょう。 召喚士は手持ちの召喚本を活用して召喚を行います。 アズサ様には女神様より、よりすぐりの召喚本が贈られています。どれでも1つ念じてみてください」
その言葉に、なんとなく「お腹すいたなぁ」と食べ物図鑑に意識が行った。
天使様に言われるがままに心の中で唱えると、手元に見知らぬ図鑑が現れた。
私はその図鑑を無意識にパラリとめくった。
開かれたページには食パンやメロンパン、ロールパン、デニッシュ、アンパン、ハンバーガーバンズなどいろんな種類のパンのイラストが描かれている。
よく見るとそのパンの名前の横にMP1の記載があった。
「例えば、このメロンパンを召喚する場合、MPが1必要になります。 召喚方法はその部分を意識して出したい場所を指定します。例えば、食べ物であれば手の上にあるのを想像して見てください」
メロンパンを召喚ってパワーワードすぎん? てか、このページからメロンパンを選ぶ天使様って可愛いな。
私は、天使様の言う想像を意識して、図鑑から手のひらへ視線を移した。
瞬時に、シュッとメロンパンが手の上に現れた。
「まじか、メロンパンだ」
「成功ですね。これによりMPが1つ減ります。このMP残量を意識しながら召喚する必要があります。召喚する対象によってMPも変わりますので注意してください」
「他の本も同じように使用します。アズサ様の持っている本は元いた世界の本ですので、こちらの世界にないものも多くあります。活用する場所は考えてからのほうがよろしいかと思います。 もちろんこちらの世界の召喚カードを手に入れることで、こちらの世界のものも召喚できるようになります」
天使様いわく、こちらの世界の召喚士は基本的に召喚獣とよばれるモンスターの召喚を行うらしく、私の行う食べ物などの召喚はないらしい。
そうだよね。私も食べ物の召喚とか初めて聞いたよ。
しかも、こんなに沢山は誰も持っていないと……。
過剰所持で捕まらない?大丈夫?恐竜図鑑とかあるけど。
低級であれば冒険者ギルドで、希少性のあるものは専門のショップに召喚本ではなく、カードのようにして販売されているらしい。
そのカードをカードホルダーのついた本に1枚1枚保管していき、自分だけの召喚本を作っていくそうだ。
「次は治癒魔法を試してみましょう。治癒魔法は女神の加護により付属しています。治癒魔法はスキルボードが開きますので、念じて見てください」
その言葉通り治癒魔法と念じると治癒魔法のスキルボードが表示された。
HP回復:15
MP回復:15
傷(小):10
傷(中):10
病気(風邪):20
病気(疫病):50
「MP回復がありますので、MPがなくなる前に使ってみてください。MPが全回復しますので実質無限に魔法を使うことができます。横の数値が使用MPですね」
天使様には失礼かもしれないが、手にあるメロンパンが気になってしまったので、メロンパンを頬張りながら説明を聞く。
私知ってる、これチートってやつですね。ありがとうございます。
「……アズサ様?メロンパンは美味しいですか?」
「……はい、美味しいです」
「それは良かったです。説明は以上ですが、ご質問はありますか?」
あらかた喋る終えた天使様に見つめられて気まずいが、私はなんとかメロンパンを食べ終える。
たいへん美味でございます。
ついでにもう一つメロンパンを召喚して、天使様に渡した。
天使様は大変素晴らしい笑顔で受けとり、メロンパンを頬張った。
「それでは、ソリーガへと行きましょう」
メロンパンを食べ終えた天使様は回れ右をして、崖と反対側にある高くそびえ立つ壁沿いに歩き出す。
しばらく壁沿いに歩くと、地上から伸びる光の柱が見え、辺りに人だかりができて賑わっていた。
光の柱から門までの道に5、6人ほどの列ができている。
「列に並ぶと、ソリーガへ入る事ができます。身分証が求められますが、私の持つ天界カードでアズサ様が異世界の民だと説明します。そのあとは係の人に従ってください。そこで私は天界に戻りますが、アズサ様のサポート係でもありますので、困ったことがあればいつでもご連絡下さい」
そんな説明を受け、天使様と列に並ぶこと15分。
順番がきて、傭兵の前へと立つ。
「ソリーガへようこそ。身分証をお願いします」
「私は天界の使者です。異世界の民をお連れしました」
天使様が天界カードなる、ゴテゴテに輝くカードを傭兵に見せると、傭兵は「なんとっ」と吃驚する。
「身分証作成の担当を呼びますので、少々お待ちください」
慌てながらも傭兵は後ろの長机においてある、一つの角笛をブオーと吹いた。
てか呼び出し角笛なの?
「それではアズサ様、私はこれで天界に戻ります。異世界ライフを楽しんでください」
「ありがとうございます!」
にっこり微笑む天使様。可愛さの宝石箱や。
微笑みながら手を振る天使様は、空へと舞い上がり、姿が見えなくなった。
さて、傭兵に言われ、門の横でしばらく待つと、町の方から、トテトテと男性が小走りにやってきた。
「ようこそソリーガへ。事務担当のヘンリーです。役場へご案内いたしますので、どうぞこちらへ」
ヘンリーと名乗る男性に連れられて、私はソリーガの町へと足を踏み入れたのである。




