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ユニ -モチーフ・桐歌-  作者: オッコー勝森
第二話:マサコ

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8/21

能木・1


「明日で撤収かー」


 昨晩戦地となった「特別倉庫群」からの捜査を切り上げて、宿泊しているカプセルホテルに向かう。彼女の名は能木陽菜。対海底人戦闘組織AUFO(オーフォ)のメンバーで、その本分は戦闘部隊のオペレータだが、人手不足から海底人に対する捜査・研究の補助も行う。

 滞在期間は明日で終わり、明後日から東京での通常業務に戻る。


「これからどうなっちゃうんだろ」


 ζ-01こと冬林が死んだ。彼はA級四位の実力者だった。しかも不思議な力で、「これから為すべきこと」を正確に言い当てた。AUFO日本支部が、此度を含めて過去四回の国内襲撃に備えられたのは彼のおかげだ。

 お告げがなくなった。

 自分が大丈夫か連絡を入れた時には、すでに殺されていた可能性が高いという。入れ替わりに気づかなかった。あの状況では仕方がない。

 冬林さん、いい人だったんだけどな。


「あの”ζ-01”は、いったい誰だったんだろう」


 敵には回したくない頭の回転速度、また指揮能力を持っていた。

 曲がりくねった暗がりの小道を行く。能木は溜息を吐いた。さすが、安さ重視で選んだホテル。


「振り向くな」「え?」


 喉元に、刃を突きつけられた。能木は恐怖で硬直する。言葉が出てこない。何も考えられない。

 不審者は名乗る。


「私は昨日のζ-01だ」


◇◇◇


 力なく椅子にもたれかかった。


「海底人とやらが、私のお父さんとお母さんを殺した真犯人……?」

「お前がいくら調べても、テロリストの影も形も掴めなかったじゃろ?」


 言葉に詰まる。

 市井に混乱をもたらさぬよう、海底人に関わる情報はすべて機密扱いされていたとして。お父さんとお母さん、あと叔父と叔母を殺したのが海底人だったとすれば、この私を以って辿り着けなかったことにも、確かに納得が行く。


「というか、なぜ私のお父さんとお母さんのことまで……マサコ」

「君に関して知ってることは、洗いざらい吐かせてもらったよ」

「猫なら毛玉だけ吐いときなさいよ」

「その発言は猫差別かい? 君は『カワイイ猫ちゃん』に理想を抱き過ぎだ」

「AUFO加入は、お前にとって損はないはずじゃ。街外れの宿泊施設『中川』に、セキリュティ意識の比較的低い女性オペレータが泊まっている。付け入りやすいタイプじゃ。まずはこいつに接触せよ。方法は問わん」

「あなたはAUFOのメンバーというわけではなさそうだけれど。スパイでも送り込んでいるのかしら?」

「すべての質問は、このミッションを達成した後に受け付けよう」


 有無を言わさぬ口調だった。


「お前なら朝飯前じゃろ?」


◇◇◇


 というわけで私は今、女性オペレータにナイフを突きつけている。ニット帽、サングラス、変声機能付きのマスクを装着して。相手からは男か女かすらも判別出来ないはず。

 攻撃的接触は、なし崩し的なAUFO加入を防ぐためだ。部屋で待ち構えても良かったけれど、黒くてカサカサ動く虫が棲家にしてそうな場所に長く居るのは嫌だった。辺りはすでに暗く、周りに誰もいないのは確認済みだ。


「昨日のζ-01?」

「そうだ。証拠が必要か? 本物のζ-01が焼死体として見つかったのは特別倉庫群64号倉庫」「は、はい。当たってます」

「ならいい。では、いくつか私の問いに答えろ」


 思考を、昨日WorkHorse上で取った口調(リズム)に乗せる。


「貴様はAUFO支部のオペレータだな?」「そうです……」

「あの水柱は、世界で何件目撃例がある?」

「二十件ほど……」「日本では?」

「四例目です、前の三例ともに、冬林さんのお告げのおかげで対応出来ましたけれども。き、昨日の水柱は、過去最大の高さでした」


 聞いてもないことをベラベラと喋る。付け入りやすいというか、自ら付け入られにやってきているというか。お口のチャックは壊れているらしい。命の懸かった現場をオペレートする立場にあるのだから、別に無能ではないのだろうけれど、出来ることがあれば出来ないこともあるのが人だ。

 私がリーダーなら、こんな奴に重要情報は持たせない。尋問で得られるのは、AUFO内の共通認識くらいだと考えていい。逆に言えば、それなら簡単に得られるということだ。

 いや、欲をかいて根掘り葉掘り聞ける局面じゃないか。ここは人通りがほとんどないだけで、皆無というわけではない。それに、帰りが遅くなれば弟を心配させてしまう。話はなるべく絞ろう。


「海底人を狩るための武器の仕組みは?」

「武器の、し、仕組みとかは分かりませんけれども……彼らの皮膚は硬く、普通の刃では通らないのですが、刃の熱が一定以上に高くなれば切れます。なので、ヒート・ブレードと呼ばれる熱い剣で対処するのです……」


 乾燥に弱い。熱にも弱い。違う要素だ。人間も焼かれたら死ぬけれど、皮膚にバターみたいな性質はない。


「しかし」「しかし?」

「昨日の件で、津波対策用の吸水ポリマーが奴らに効果的と判明したため、戦闘のあり方が劇的に変わるかもしれません、いい方向に。それについては、その、ありがとうございます」

「礼には及ばない。最後に一つ。AUFOはどのようにして会員を集めている」

「大抵はコネか、被害者またはその関係者です。わ、私はコネです」

「なるほど。情報提供感謝する」


 スタンガンを当てた。スーツに極小のGPS発信機を取り付け、その場を立ち去る。さて緑髪、ちゃんと「接触」はしたぞ。後で詰問してやる。

 そして、AUFOを利用するかどうかは別にして、お父さんとお母さんを殺したかもしれない(・・・・・・)海底人どもは、一先ず皆殺しの方向で検討を進めたい。


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