神を創るとき②
「うわ…………」
まず目に入ったのは、倒れ付している人々だった。外見年齢からして、俺と同じような学生が多い。
しかし、確実に大学生ではない幼い外見の子達や、お年寄りも同様に地面に横たわっていた。多分、近隣の住民達なのだろう。
「死んで、る?」
「生きているから安心しろ。 本業どもが、意識だけ奪って放置したのだろう」
加奈は、副業術者ご一行のうち何人かに声をかけた。倒れている人々を回収するのだろう。
「体育館の鍵を持っているか?」
「持ってない」
基本的に、教員が管理しているから、部活しているからと言って鍵を預かっている訳ではないのだ。
「裏口のなら持っているから、私もこちらに回ろうか」
「お願いします」
教員がそう提案してくれたので、加奈がお願いする。
「ひとまず、一般人達の避難場所は確保できたがもう少し人手が必要だな」
「そこは僕が何とかしよう」
仙人が紙をばらまくと、自立してわらわらと動き出した。
「紙鬼」
「おや、知っていたか。 ああ、加奈君の姉に会ったことがあったな」
しかし、沙彩さんのものと違うところは、乗り物みたいな形の紙鬼まであることだ。ヒト型の紙鬼の乗り物かと思ったらそんなことはなく。
乗り物達が一ヶ所に集まると、変形して大きな(といっても成人男性の平均くらい)紙鬼になった。
「合体は、浪漫。 違うかね」
最初から、このサイズの紙を準備しとけよ。やっぱこいつアホだわ。
「なにはともあれ、人手の問題は解消しただろう?」
「ああ、助かる。 そして、君はそろそろ卒業するつもりはないかい?」
「機会があれば前向きに検討させて頂きます」
絶対に卒業する気ないだろこいつ。
教員は、肩を落としながら副業術者達を先導して体育館へと向かっていった。
大変だったのは、ここからだった。
目的地である池が近づくにつれて、襲撃者が増えてくる。者っていうか、ほとんど蛙なんだけど。
ただ、蛙とはいえ、否むしろ、徒党を組んでこられると中々に厄介だ。飛びかかってくるわ、顔に引っ付いてくるわで。
「俺だけ襲われてるよね!?」
「おや、加奈君なにも護りを渡していなかったのかい?」
「忘れていた…………」
『sya!』
白丸が、俺の顔に引っ付いていた蛙を引き裂いてくれた。蛙の返り血が顔にベッタリ引っ付いて、大変に気持ち悪い。
「卓也」
「どうにかしてくれるのこれ」
「蛇を頭で思い浮かべろ」
蛇。
蛙の天敵。
なるべく詳細に思い出すよう務める。俺の自転車のサドルでとぐろを巻いていたあの頃を思い起こす。
「思い浮かべたよ」
「才能があればそれだけで追い払えるのだが、お前には無理なようだな。 今から、気合いで才能を生やすか?」
生やせるか!
こうしてる間にも、仙人と加奈は前に進んでいて、俺だけ蛙に集られている。顔だけは、白丸が『sha-sha-!』って唸りながらネコパンチを蛙にお見舞いしてくれているからなんとかなるけど、足とか腕とかに纏わりついてくるのは避けられない。
振り払ってもこいつら変な気合い見せて張りついてくるんだよな……。
「うん、人は居なさそうだ。 ハニー、構わないよ」
『────』
襲撃(被害者俺一人)が収まる。辺りを見渡すと、カラカラに乾いた蛙が転がっていた。
「ありがとう桜花さん、でももう少し早くやって欲しかった……わぷっ!?」
おいこら加奈、なんで水ぶっかけてきたんだよ、汚いから? 正論はやめてください。