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視えるカレと陰陽師なカノジョ  作者: Wana-wana
学部三回生秋~
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神を創るとき①

花風堂は大学近くのケーキ屋さんであるので、徒歩で向かっても大して時間はかからない。なので、歩いて向かうという選択肢も、まあ理解できるんだけど。


「こうさあ、もうちょっとさあ」


術者って、要するに魔法使いとか能力者とかそんな感じの連中なんだから、そういう箒みたいな移動手段とかあると思うじゃん。何なら、式神とか使い魔とかに乗って移動するとかそういう、何て言うの、浪漫のある方法とかさあ。

徒歩でぞろぞろ移動するのかよ。なんか、俺も「チャリで行きます」とは言いづらいから、押して列の最後尾にいた。


「変に早く着きすぎると、中二病連中の取り残しまで相手せざるを得なくなるじゃないか」

「中二病で呼称固定なの?」


本業術者たちがかわいそうになってきた。


「あと、真面目な話だが」


今回は巫女服で全部こなすらしく、そのうえで狐耳尻尾生やしてる加奈は、大変コスプレ感が強い。

しかも、その服装ゆえか暑いらしく、一足早くハンディータイプの扇風機で風を発生させながら大学までの道を歩いている。


「私の式神の背中に乗れると思うか?」


そういいつつ、俺の自転車の荷台部分に腰掛けだした。


「重い」

「デリカシー」

「腕もげそう」

「私がここに乗ることで、筋トレができるな、良かったな」


ああいえば、こういうなこいつ。

そして、白丸の背中は無理ですね。

何なら本猫は、今ママチャリでここまで駆けつけた副業術者さんの前かごで丸くなっている。もはや、歩きすらしていないのだ。


『nyaaaaaaaaaaa』

「あら、白丸ちゃん。 起きたのね」

「うちの猫がすみません…………」

「良いのよ。 うちの式神もこんなに可愛かったらねえ……」

『mihiii』


特段、用がないと悟ったようで白丸はもう一度鳴いて、再度丸くなる。


「どんな式神なんですか?」


一般的なというか、加奈とか仙人以外の術者の式神が気になって、俺は子供会の役員に一人はいるタイプの術者さんに質問した。


「おい、卓也。 式神というのは、すなわち戦力そのもの」

「良いのよ。 別に私は誰かとやりあうつもりはないからねえ。 ええとねえ、まず太くて」

「ふっくらしてるんですね」


どんなやつなんだろうか。脳内のイメージに雪だるまとか、ベイ○ックスが浮かび上がる。


「はげてて。 低血圧だとか言って、休日はずっと寝てて、家事もなにもせずに。 若い頃の体型は見る影もなくて」

「あ(察し)」


やべえ地雷を踏んだか気がする……!


「そ、その、旦那様が式神なんですか」

「ええ、そうよ。 あなたも、そうならないようにね…………絶対よ…………」


ひえ。


そんなある種ほのぼのした一行も、口数が少なくなってくる。

大学が──ズレが近づいているから。


「さて、それじゃあ卓也君。 加奈君」


ぬっと仙人が現れた。その少し後ろに、桜花さんが控える。


「うわ! どっから湧いてきたの」

「僕はミステリアスな男だから、これも企業秘密さ」


自分でミステリアスって言うな。


「僕たちは門を潜ったらまず池に向かうよ」

「ああ。 やっぱり、そこか今回の大本は」

「恐らくね。 そこではなくとも、手がかりはあるだろうさ」


池って、文化部棟の前の?


「そこだね」

「何で」


分かるの。


「今回の異変は、主に行動に現れていた。 例えば、図書館前の焚書なんかもね。 つまり、被害を受けたのは、ズレで狂った対象は、人間だ」

「だけど、卓也。 今回は他に二種類の生き物が迷惑を被っている。 何だと思う?」


迷惑を被った──例えば、これまでにあまり捕獲されていなかったのに急に襲われることになった生き物。


大学の門が見えてきた。白丸が、飛び移ってきて、そのまま俺の肩を踏み越える。


「おっと」

『myam』

「猫と」


そして、食堂のメニューになった。


「──カエル」

「そうだ。 人以外では、私が知る限り、その二種類だけだ。 そしてズレには、ズレなりの行動原理がある。 なぜカエルだったかはわからない。 しかし、必ず意味が、理由がある。 だから、ひとまず水場に向かうことにする」


だから池に向かうのだと、巫女は行った。


「猫の方は?」

「そっちは」

『miiiiiiiiiiii!!!』


天に吠えるように白丸が声をあげる。暗闇に無数の目が光っていることに気づいた。

都会では人間にもっとも近い、野生の獣達。

学内から姿を消していたと思ってたけど、たくさんいる。


「ご覧の通り、加奈君の式神がチェック済みだ」

「特に異変はなし、だそうだ」


そういうことか。



いよいよ、門が近い。いつもいつも何百回と通り抜けたそこは、しかし奇妙な雰囲気すら今は漂わせている。

加奈が、地面に降り立つ。術者一行の視線が全て、異形の気配を纏わせた女に向けられる。

瞳が妖しく光った。


「いくぞ」

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