普段そんなに、デレないやつらがデレだすのはフラグっぽくみえる
◇
「方法はわかったけど……」
「そんな、こいつバカじゃねえのって顔をするな」
「してる?」
「してる」
しょうがないところも、あると思うんだ。なんせ、
「諸々は、納得はしないけど、了解するとして、なんで巫女服着たの?」
「形から入るということも、重要なのだよ、卓也君。 何せ、これから彼女には″佐伯の巫女″ということを見せつけてもらわなければならないからね」
もっとも、と仙人が付け加える。
「愛しのカノジョの、そういう格好を独占したいという気持ちは無論分かるがね」
「カレシが、私のこと大好きすぎてツラい」
「悪い?」
「…………冗談のつもりだったんだが、まあ、うん、私もお前のことが大好きだから安心しろ」
もうちょい実感しといてほしい。
抗議の意味を籠めて、髪の毛をワシャワシャしておく。
「やめろ、髪型が乱れたらどうする」
「直す」
「できるのか?」
幼少期にませ始めた侑芽に仕込まれたので、それなりには。
『なにも食べていないはずなのに、お腹いっぱいになってきたのですが、これはなんででしょうか?』
仙人は、さっきまでいなり寿司山ほど食べてただろうと、由緒正しい白狐に対して思ったが、口にはしない。代わりに、
「あてられた、というやつですね」
『あてられた。 なるほど! 勉強になります! ようやく、主から教わった言葉を使えそうです!』
「ほう?」
かなり、俗っぽいことが判明しつつあるがこの国においても古い一柱である存在から教わった言葉とは一体──
『爆ぜろリア充!』
「現世に染まりすぎてませんか、あなたの主」
そして、微妙にワンテンポくらい流行からズレている。
◆
方法その一
「人海戦術かあ」
「人数は力だからね、まあ考え方は色々あるが。 とにかく、今回の大前提になる」
「言われた通りに、集めてきたわよ、術者たちの和洋折衷」
花風堂の一階に、先生が声をかけたズレを操れる人たちが待機しているそうだ。
「分かっていると思うけれど、ぶっちゃけるとこのままだと烏合の衆よ。 彼らも、あくまでズレの、それも新しい存在由来のなにかが得られると思って、集まっただけだから」
「承知しているとも。 今回は、それで問題ないし、こっちには加奈君がいる。 ズレが視れるならば、一応こっちの言うことは聞こうと思うさ」
そんなもんなのか。そして、肝心の加奈はどこに。さっき、髪の毛を直してそこから行方知らずだ。
「まあ、君に会わないようにしているんだろうね」
「なんでさ」
「これから、加奈君は″佐伯の巫女″を身に纏う。 曰く、″卓也といると、その、もろもろ、緊張とかがな、ほぐれすぎてしまってだな、その……と、とにかく、ちょっと隔離されてくる!″らしく」
二十分程度の隔離で意味があるの?「俺のカノジョかわいすぎ」
「今の発言、心の声と本音が入れ替わったのではないかね」
「伊豆野君、あの巫女服クリーニングに出してくれたら、私的利用しても良いわよ?」
「なに言い出すんですか」
「え、それはもちろん巫女プ──」
あんた、薄々感じてたけど仙人と感性一緒だな。
「まあ、それはともかく。 卓也君、君はしっかりと見届けたまえ。″佐伯の巫女″がどのような存在なのかを」