部室、においこもりがち
部室棟は二ヵ所あって、キャンパス内の池のほとりに一つ、グランドの側に一つある。池のほとりのは文化系、グランドの側のは体育会系、の部活がそれぞれ使っているのだ。
因みに、俺が所属している部活の部室はグランド側の方だ。こっちには、シャワー室とか洗濯機といった設備が揃っている。
「おっすー」
「うぃーす」
「やっときたな」
「「「ちわっす」」」
前田と共に、部室までやって来た訳なんだけど、当然ながら他の部員達も集まっている。そして、肝心の部室なんだけど。
「なんだよ、ドア開いているのかよ」
前田の言う通り、横にスライドさせるタイプのドアは、しっかりと開いていて部室の内部が普通に覗いている、のだろう。
「違うねん」
「なにが違うんよ」
「いいから、ちょい試してみ」
前田はぶつくさ呟きつつ、言われた通りに部室の敷居を越えようとして。
「あ?」
そこから前に進めなかった。
前田はもう一度、今度は勢いをつけて前に進もうと試みた。
しかし。
ぼーん、という感じ弾かれた。
「おわっ!」
俺含む周りの全員で、慌てて背中を支える。
「はあ?なんで?」
狐につつまれた様な表情を前田は浮かべた。
なるほど、だから『部室に入れない』というメッセージが送られてきたのか。
ドアは、開いているのに、誰もそこから先に進めない。中に入れない。こんなこと、文章で説明されても納得できないだろう。
「なんで、入れないんだよ」
「俺に聞くな」
「僕たちも試したけど無理ですね」
後から来た後輩たちも、前田と同じことを試して、当然のように無理だったのだ。
俺は、まあうん。少なくとも、こうなる原因は分かっていた。
というか、ここに来た瞬間に、視えていた。
「おかしいだろ、こんなの」
「そんなんいわれても、実際こうなってるんやし」
「集団催眠か?」
「お化け?」
「んなわきゃねえだろ」
「別になんでもいいけど、用具とられへんの、困るよな」
「困るというか最悪、部活休みにするしかないか…………?」
「えー」
喧々諤々と、この現象の原因について議論を交わしている連中を尻目に、俺はじっと部室の入り口を視つめる。
壁みたいなのが、入り口に出来ていた。壁というか、要するに内側から塞いでいるナニかが、あるというか。
うん。一般の方々には見えないようなので、あれはいわゆる怪異のせいなのだろう。
しまったな、佐伯の連絡先貰っとくの忘れてた。その辺の猫に頼んだら、なんとかならないかな。って、白丸いるじゃん。ラッキー。




