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視えるカレと陰陽師なカノジョ  作者: Wana-wana
学部三回生秋~
67/97

学割証明は、複数枚前もって確保しておきましょう

お茶濁し回です。

「それで、どうするんだい?」

「伝えない、ことにしようかなと」

「ふむ、理由を尋ねても?」


仙人は首の角度を調節して、メガネのレンズに光を反射させて、キラーンってさせたのでどんな目をしているのかはわからない。とにかく、俺は続ける。


「俺より、佐伯の家の方が資源が多い」


心の支え、という意味での資源。


「ふむ……こちらでは、だめなのかね」

「侑芽や母さんもいるけど、まだ、無理だ」


関わってから、まだまだ日が浅い。

それに、聞いたところでは、加奈のお父さんとお姉さんはこっち側だし。厳密に言えば、加奈のお母さんも、悪意とかがあるわけではないんだけど。


「ふむ……一応、筋は通ってるね。 ″嫌われたくないから″という理由を言われなくてよかったよ」

「げふっ!?」

「それじゃあ、良いGWを」

「仙人はどうするの?」

「ハニーとあんなことやこんなことを」


そうかい。


同級生の帰省に一緒について行く。

GWの予定を聞かれてそう答えていたら、ほぼ全員から変なやつを観察するような目で見られた。不満はあるが、気持ちは分かる。

俺だって、同じことを例えば前田あたりから言われたら、かわいそうなやつを見る目になるだろうし。


「お前、今ナチュラルに俺をちょっとディスっただろ」

「ソンナコトナイヨ」


因みにこいつ──前田は、GWの予定を聞かれて、『未来の彼女とデートする、なんならお泊まりする』とかいう訳の分からない返答をしていた。こんな発言を真顔でするやつは、かわいそうなやつを見る目になっても仕方ないと思うんだ。


「今年のGWとは、誰も定義付けてないからな」

「前田ってあれ? 子供に、『おしっこ!』って言われたら、『おしっこじゃないです』って揚げ足とるタイプの人?」


なんでそうなるんだよ、とトイレ男はアイスコーヒーをぢゅうとすすりながら反論してくる。


「でさ、前田」

「あん?」

「相手方のご両親に挨拶するときの服装って、スーツで良いのかな」

「俺に聞くな、普通の大学生がそんなもん経験してるわけないだろ。 近頃はクールビズに配慮して、アロハシャツでもオッケーらしいぞ」

「どこの文化なのそれ、つーか私服にクールビズもくそもないよ」


日本の中央省庁のうちの一つである、某省の文化だった。本当に着てる人いんの?


「それでGWは全部、帰省?」

「んー、ビミョーなところ」


加奈のご実家でお世話になるかどうかは、加奈の状態による。いざとなれば、拐ってこいと頼まれてるし。

一応加奈が、帰省する旨をお姉さんに連絡したら、防音完備の二人部屋があると言われたらしいけど。

別にそこの配慮は要らなかったかな……。


「なんでそんなこと聞いたの?」

「どっかで、BBQするかもしれないけど、お前を誘うかどうか悩んでた」

「あー……前日までにご連絡いただけましたら、検討するかもしれません」

「佐伯さん、次第ってことか」

「そうだね」


文字通り、加奈次第である。


「で、お前ら付き合ってんの?」

「付き合ってない」

「めんどくせえな」


最近、周囲に同じことを言われてキレられる。皆、カルシウムが足りてないのだろう。牛乳と煮干し、いっぱいとってほしい。


そんなこんな前田とだべっていたら、パタパタと二段飛ばしで階段を駆け上がってくる女がいた。


「加奈」

「ごめん、卓也。 待たせた」

「そんな急がなくても良かったのに」

「いや……急いでる所を見せないと教授に捕まりそうでな…………ワーキングメモリの測定実験なんて、無料でやって許されるわけないだろう…………一時間半は余裕で拘束されるんだぞ…………学生は都合の良いモルモットじゃない………………横暴だ…………」


なんか色々あったようだ。


「あー、あいつらは学生を人間として見てないですからね(※個人の感想)。 伊豆野達はここで待ち合わせしてたのか」

「うん。 学割証明取りにいかないとダメだから」


一緒に行く必要は全くないんだけど。まあ、時間も合ったし。


「リア充爆ぜろ! じゃあ、良い週末を」


シュタッと手を上げて、前田は去っていった。感情の起伏、どうなってんだ。


「人間を取り扱う学問なのに、人間扱いしてないっておかしいと思わないか、卓也」

「取りあえず、疲れてるのは分かった」


あとで、ラムネ一粒あげよう。

次回から、本当に帰省編が始まる、はず、多分。

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