中学生男子に起きる悲劇の創造主、ブルードラゴンさん
ふう、と普通に息を吐いたつもりだったのに気づけばため息になってしまった。色々ありすぎた。
加奈の母親の話。
全てを本人に伝えるかどうかは、俺の裁量に任されてしまった。
『僕は、とうの昔にあの子からは″敵″として認定されてしまっているからね』
どこか寂しげに仙人はそう言った。
そんなことはないと思うんだけども、本人がそう感じてしまっているのでこちらの意見を聞き入れることをしやしない。
何だかんだで、仙人と加奈は似ているのだろう。面倒くさいな、ズレとかを操ることができる技術持ち達は。
「にしても……」
どうしたものか。
伝えるか、伝えないか。昨日の今日諸々の事情を加奈と、そして仙人から聞いただけで、こんなにも消耗しているのだ。十年以上抱いていた価値観を、ひっくり返されることになるかもしれない加奈はどうなってしまうのだろうか。予想がつかない。
いや、本当は。
俺がそれを伝えることで加奈に──。
『Nyaaaaaaaaaa』
「うわ、ビックリした!」
『miiii』
「突然、俺のチャリのかごに飛び降りてくるのやめてくれません?」
俺の思考をぶったぎった白丸は、苦言などどこ吹く風で満足そうに後ろ足でくしくしと顔を洗っている。
『myam!』
早よ自転車をこいで帰れとばかりに、俺の家の方向を指さされた。
「そうだね……」
ここで悩んでいても仕方がない。今は無性に、帰りたかった。
『nimohi』
「今煮干しって鳴きました?」
◆
『Myaaaaaaaaaaa!』
「ただいまー」
白丸は、脱兎のごとく俺ん家に進入していった。猫なのに、兎とはいかに。
ずいぶん長い間仙人と話していた気がしたけど、現在の時刻は6時ちょっと過ぎくらい。母さんはまだパートの時間だし、他県の大学に通っている侑芽もまだ帰ってきていない。
「おかえり」
だから、俺にそう返してくれたのは加奈しかいないのだが。ただ、なんというか、うん。
「破壊力」
「うん? ああ、なるほど、どうだエプロン姿は」
エプロンの女の子は俺に見せるために、くるっと、その場で一回転する。
「中学生男子の調理実習」
「感想がおかしいだろう!?」
「なんで光の巨人なのさ」
「小学校の家庭科の授業で作った」
何も間違えてないじゃん、小学校時代に「これいいなー」ってなって作ったエプロンが後々悲劇をうむやつと。
「まあ、冗談は置いといて」
光の巨人でも、普通に可愛いです。
「それはよかった。 ところで、卓也。 なにか、あったのか?」
加奈は心配そうに俺の顔を覗き込む。
そんなにも顔に出てしまっていたのか。
「充電するか?」
「……そこは、何があったか聞くとこじゃないの? 」
「聞かなくても、必要なら私に話すだろうお前は」
ああ、もう本当に。
俺はこの子のことが好きで。
「充電はしたいかな」
お互いの距離が近くなる。二人の熱が、ひとつになって。
結局のところ、加奈から──。
嫌われたくないのだ。




