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視えるカレと陰陽師なカノジョ  作者: Wana-wana
学部三回生秋~
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シリアスさんが出ずっぱり……

「産まれてすぐに、私は狐に憑かれたらしい」


加奈のお母さんの気持ちを考えてみる。

産まれてすぐの娘。その娘から、異形の耳がみるみるうちに生えてきて。


「なんでも、父の指を噛みきらん勢いだったそうだ」


他人事のように、加奈はたんたんと続ける。いや、実際他人事なのだろう。本人には、もう記憶がないのだろうし、少なくとも加奈自身の意思ではない。


「その狐に、うるせー口だなをしたのがあの阿呆で、父は事なきを得たんだが」

「そこに繋がるのかあ……」


仙人は、獣もいける口なんだ、すげえなあいつ。

そして、時系列的にはここで許嫁の話は破談になったのか。


「でも、なんで破談」


破談になって良かったと思ってるけど、話的には仙人って色々と恩人だよね。多分、加奈のお父さんのピンチを救ってるし、憑かれてた加奈自身と狐を引き剥がしてるわけで。


「いくら恩人であっても、獣姦趣味の男を父は娘にあてがいたくはなかったらしい。 」

「どこまでやっちゃったの!?」


人目をはばからなかったのかよ。生々しい部分は知りたかないけど!


「そんなことがあって。 母は私に口を利かなくなった」


ごっそりと表情の抜け落ちた顔で。加奈は事実をただただ紡ぐ。


「父と姉がいなければ、私はこうして育つこともできなかったかもしれない」


嘲るでも、なんでもなく。ただただ、そこにはなにもない。

俺はつよくつよく、目の前の女の子を抱き締める。


「だが、そこで終わっていればまだ良かった」

終わらなかった。


「うん」

「今度は、私がズレを扱う技術を習得するのを邪魔するようになった。 想像してみて欲しい、卓也。 ズレを扱う技術は、つまるところ私に憑こうとするものに対処する術だ。 それを奪って母はどうするつもりだったと思う?」

「それは……」


その技術は、加奈自身を守るためのもの。それを邪魔するということはつまり。


「母は、私にいなくなって欲しかったんだろうな。 結局父が母の妨害に気づいて、事なきを得たが」


話は終わらない。


「その次に母は、どうしたと思う?」

「…………」

「私が、高校に入学してから、釣書が毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日。 机の上に置かれるようになった。 まだ、未成年で法律でも婚姻が禁じられているに関わらずだ。 追い出したかったんだろうな、私を」


これで終わりだ、と加奈は言う。

この子に、俺ができることは一体なんなのだろうか。ただ、一つはっきりしてるのは。

加奈を一人にしてはいけないということだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 父親は、よく妻と離婚しなかったな汗
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