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視えるカレと陰陽師なカノジョ  作者: Wana-wana
学部三回生秋~
56/97

四月はゴールデンウィークの前振り

さて、と仙人は咥えていたストローを口から離して言った。


「加奈君」


これまでに見たことがないくらい、真剣な表情だった。


「なんだ」

「君、帰省していないだろう。 厳密には帰省はしているようだが、実家には近づいていないだろう」


加奈は、仙人から目をそらす。


「放っておけ、私の勝手だ」

「そういうわけにはいかない。 なんせ、僕は一応君を親御さんから預かっている立場だからね」

「保護者面をするな」


なんだろうか。

俺と、桜花さんの目が合った。居心地が悪そうだ。

そうだよね。急にまじめな雰囲気になって。


「風邪ひきそうですね」

『───』


こくこくうなずく桜花さん。

やっぱこの妖精さん、まっとうな感覚持ってるな、ほんと……。


俺たちが交流を深めていることもお構いなしに、シリアス会話は継続されていた。


「そもそも、私はもう子供じゃない」

「さてさてそれはどうだろうか。 まず、君はしっかりと親御さん、ああ正確に言えば母上と対話したことはあるのかい?」

「対話が成立するわけないだろう。 こちらの話も聞かずに、勝手に見合いをあれほど押し付けてくる人なんだぞ」

「それは君も同じではないか。 母上の言い分も聞かずして、勝手に家出して、帰省もせずに」


これはきっと、加奈の大事なところにかかわる話だ。さすがに、風邪をひきそうなんてことを言ってる場合じゃないなと、察した。


「君も、わかってはいるのだろう? 今のままじゃダメということは」

「………………っ」

「ということで、卓也君」

「あ、はい」


急に会話飛んできてびっくりする。


「加奈君の実家についていきたまえ」

「あ、了解です」

「おい、まて」


どうせ、いずれしなきゃなんないことだし。


「ゴールデンウィークでいい?」

「そうだね、学生の本分は勉強だからね」

「どの口が言ってんの、この五留」

「正確には十五留だよ。 この通り僕は君よりも学生歴が長いからね、学業の重要さは君よりも身に染みて理解しているさ」

「そうだね、卒業できてないもんね」

「おいおい、何を言ってるんだい卓也君。 卒業じゃないよ、僕が出来ないのは。 僕は進級がままならないだけだよ」


偉そうに言うことでは断じてない。


「さて、加奈君。 彼もこう言ってくれているんだ、胸を張って帰省したまえ。 それとも、君は彼との関係を学生時代の淡い思い出で終わらせるつもりかい?」

「それは……」


加奈は、まるで迷子になった子供みたいに。

どうすれば良いのかわからないような顔で。


「あとは、二人で話してきたまえ。 なあに、これくらいなら先生も許してくれるさ」


パチンと、仙人が指を鳴らす。



花風堂のカフェスペースが、一気に姿を変えた。


「ここって」


武家屋敷?


「あいつが造り上げたズレだ」


振り向くと、加奈がいた。

しかし、その姿はひどく幼い。ぎり小学校高学年くらい?


「え、加奈若くない?」

「それは、お前もだぞ」

「おれも?」


思った以上に甲高い声が出た。

ひょっとせずとも、俺も加奈と同じ歳くらいになっているということだろうか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 十五留……日本は日本でも法律が違うんやね。
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