学食で昼食を食べるのは至難のわざ
しばらく説明回です
猫。
古代より、人間と長い付き合いのある動物の一種であり、猫の飼い主達は大体が「うちの子が一番かわいいに決まってるだろ!」という思いを、内心で秘めているという、あの生き物だ。
この生き物には、結構不思議なエピソードがある。魂が百個あるとか、黒猫は幸運の象徴とか。果ては、神様だったり、神様の使いだったりと、枚挙に暇がない。
ちなみにその昔、猫がどっか虚空を見つめているときに、その視線を追いかけた俺はギャン泣きをした。猫が、神様の使いかどうかはともかく、色々と見えていることは事実だと思う、割りと確実に。
ところで、俺が通っている大学には、野良と呼んで良いのか判断に迷う猫が学内をよくうろついている。野生を失いすぎて、迫り来る自転車を避けようともしないのはやめてもらいたい。
まあそれはどうでも良いんだけど、ごく稀にこの猫達にちょっと特殊な猫が混ざっていることがあるということを、今知った。
「ねえ、佐伯」
「うん?」
「脚しびれないの?」
「慣れた」
さいですか。
俺と同じ学部の同回生である佐伯加奈の太股の上の白猫さんは、にゃあと鳴いた。
空には雲ひとつなく、まさに秋晴れといった感じだ。昼休みにもなれば、屋外のベンチは昼食をとる学生達で賑わう。まあまあ快適な気温で、食堂ほど混雑してないからな。かくいう俺も、今日は友人どもは全休ということもあって、一人でふらふらと昼食をとれる場所を求めてさ迷っていたら、
「座るか?」
「あ……はい」
顔見知りに呼び止められたのだった。
「いつもレジャーシート持ってきてんの?」
「いや、そんなことはない。この子達に用事があるときだけだな」
用事って……、と一瞬思ったが、そういえば佐伯は学内の猫を従えていた。確か、式神だっけ?
「用事ってそのチュール?」
「そうだ。今日の、二番目に大事な用事だ」
どうりで、猫さんたちが大量にいるわけだ。猫好き大歓喜だろう。
俺のお弁当を狙われたりしないか少し心配だったけど、杞憂だったみたいだ。人間なぞを気にかける様子もない。
佐伯さんは、俺の存在を忘れてるわけではないだろうが、一心不乱に白猫さんの毛並みを整えている。
「ほれ、白丸動くな」
『mi』
名前までつけてるんだ。
「別に、全部につけている訳じゃないぞ」
「もしかして口にしてた?」
「もろに。厳密には、私の式はこいつだけだしな」
白猫さんは、尻尾をゆらりと振った。ぱっくりと尻尾の先が分かれている。
「だから、ちょっとだけ雰囲気が違うんだね」
雰囲気というか、尻尾というか。こういうのを、猫又っていうんだっけか。
「そうだ。…………そういえば視えるんだったな」
「実は視えるんです。ということは、この白丸は本物の猫じゃないの?」
「いや、猫といえば猫だし、そうじゃないと言えばそうじゃない。私たち以外には、白丸は普通の猫だしな」
どういうこと?