セルカ棒、便利といえば便利
しばし歩いて、ようやく長い長い鳥居の階段の折り返し地点へとたどり着いた。
せっかくなので記念に写真を撮りたいところなんだけど、残念ながら両手は塞がっている。
佐伯にお願いするかあと思っていたら、彼女は既にスマホを構えていた。
「伊豆野、もうちょい近づけ」
「自撮り?」
「そうするしかないだろ」
二人(と一匹)が画面に収まるように、身を寄せあって。
「にいちが」
「にー」
「さんいちが」
「さーん」
「ごいちが」
「ごー…………もう口角をあげるための掛け声でもなんでもないじゃん!」
止まらないシャッター音。まさかの連写だった。あとで写真送ってね。
一息ついて、下山ルートへ。
それで。
「俺はいつまでこの子抱っこしてたらいいの?」
『koooo』
お狐さんはぷうぷう鼻提灯を作って寝てる。ずっと気になってるんだけど、鼻提灯ってあれ何が膨らんでるの? 鼻水かな。
「麓までだな」
厳密には社務所までだ、と佐伯は続ける。
「ここの神社は、ズレをこの世に馴染ませるようにできている。 だが、ここにこうして眷属が顕現してしまっているわけだ」
「うん」
「これは、あまり望ましいことではない。なので、しっかりと手順を踏んで、元に戻して貰う必要がある。お前は今、手にニトログリセリンのビーカーを持っているような状態だ」
思わず腕の中のくうくう寝てる狐さんを見た。どう見てもイヌ科の生き物にしかみえないモノは、耳をぴくりと動かした。
ついでに、佐伯の耳はへちょっと萎びた。感情に連動するらしい。
「巻き込んで申し訳ない……」
「別に佐伯が原因って訳じゃないんでしょ?」
予測できることじゃなかったんだろうし。
「そもそも私がここに来たいと言わなければ、こんなことにはならなかった」
あー、それで責任を感じてると。
「あほか」
「あほって……」
「そんなことに、責任感じてもどうしようもないでしょうが。そもそも初詣に誘ったのは俺なわけだし」
だから、まあ、佐伯の理屈でいえば俺が全部悪い。
「謝らなきゃならないのは、俺の方でしょ」
「そんなこと、ない」
「うん、だったら佐伯も悪くないよ」
なんせ、問題の原因そのものを悪くないと佐伯が断言したんだから。
ケモ耳がゆらりと動く。
佐伯は少し微笑んでくれた。
「お前はそうやって論点を煙に巻いて、今まで何人も言いくるめてきたのか」
「毒えぐない?」
冗談だよ、と女友達は半歩近寄ってくる。腕と腕がひっついた。
「でもごめん」
ありがとう。俺の耳元でそう囁いた。




