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視えるカレと陰陽師なカノジョ  作者: Wana-wana
学部三回生秋~
32/97

セルカ棒、便利といえば便利

しばし歩いて、ようやく長い長い鳥居の階段の折り返し地点へとたどり着いた。

せっかくなので記念に写真を撮りたいところなんだけど、残念ながら両手は塞がっている。

佐伯にお願いするかあと思っていたら、彼女は既にスマホを構えていた。


「伊豆野、もうちょい近づけ」

「自撮り?」

「そうするしかないだろ」


二人(と一匹)が画面に収まるように、身を寄せあって。


「にいちが」

「にー」

「さんいちが」

「さーん」

「ごいちが」

「ごー…………もう口角をあげるための掛け声でもなんでもないじゃん!」


止まらないシャッター音。まさかの連写だった。あとで写真送ってね。


一息ついて、下山ルートへ。

それで。


「俺はいつまでこの子抱っこしてたらいいの?」

『koooo』



お狐さんはぷうぷう鼻提灯を作って寝てる。ずっと気になってるんだけど、鼻提灯ってあれ何が膨らんでるの? 鼻水かな。


「麓までだな」


厳密には社務所までだ、と佐伯は続ける。


「ここの神社は、ズレをこの世に馴染ませるようにできている。 だが、ここにこうして眷属が顕現してしまっているわけだ」

「うん」

「これは、あまり望ましいことではない。なので、しっかりと手順を踏んで、元に戻して貰う必要がある。お前は今、手にニトログリセリンのビーカーを持っているような状態だ」


思わず腕の中のくうくう寝てる狐さんを見た。どう見てもイヌ科の生き物にしかみえないモノは、耳をぴくりと動かした。

ついでに、佐伯の耳はへちょっと萎びた。感情に連動するらしい。


「巻き込んで申し訳ない……」

「別に佐伯が原因って訳じゃないんでしょ?」


予測できることじゃなかったんだろうし。


「そもそも私がここに来たいと言わなければ、こんなことにはならなかった」


あー、それで責任を感じてると。


「あほか」

「あほって……」

「そんなことに、責任感じてもどうしようもないでしょうが。そもそも初詣に誘ったのは俺なわけだし」


だから、まあ、佐伯の理屈でいえば俺が全部悪い。


「謝らなきゃならないのは、俺の方でしょ」

「そんなこと、ない」

「うん、だったら佐伯も悪くないよ」


なんせ、問題の原因そのものを悪くないと佐伯が断言したんだから。

ケモ耳がゆらりと動く。

佐伯は少し微笑んでくれた。


「お前はそうやって論点を煙に巻いて、今まで何人も言いくるめてきたのか」

「毒えぐない?」


冗談だよ、と女友達は半歩近寄ってくる。腕と腕がひっついた。


「でもごめん」


ありがとう。俺の耳元でそう囁いた。

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