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視えるカレと陰陽師なカノジョ  作者: Wana-wana
学部三回生秋~
3/97

プロローグ③ 大学の緩い授業の、ノートの価値は高め

場所を移して、大学近くのファミレス。

あのあと、土下座したまま動こうとしない佐伯さんをなんとか説得して、ファミレスまで移動したのだ。


「ここの代金は、私が持つからなんでも好きなものを頼んでくれ……」

「ああ、うん。なら遠慮なく」


フライドポテトに、セットでドリンクバーをつけるという贅沢をすることにした。佐伯さんも同じくドリンクバーを注文する。

俺はコーラを、佐伯さんはジャスミンティーを取って席へ座った。

佐伯さんは一口飲んで顔をしかめる。苦手な味だったらしい。


「それで、質問良い?」

「なんでも聞いてくれ。全て答える」


少しだけ俺は緊張しながら、当初の目的を果たすことにする。


「佐伯さんって、その、幽霊とかそんなやつ視える人?」

「ああ」


極めてあっさりとした返事が返ってくる。


「そっか……」


そうか。

この人が人生で初めて遭遇した、俺と同じ人なんだ。俺が視てきたものは、本当にいるものだったんだ。

ああ、良かった。


「そっちもか?」

「うん」

「ご両親や、ご兄弟は、その、視えるのか?」

「いや、俺だけだよ」

「そうか……」


ちょっと沈黙。

シュワシュワと、コーラの泡が弾ける。


「佐伯さんの所は、皆視えるの?」

「厳密には全員ではないが、うちの家系は大体そうだな」

「へー、陰陽師とかそんな家系なの?」


幽霊とか視える家系なんて聞くと、これくらいしか思い浮かばなかった。ある意味小説とかの定番職業だ。


「佐伯の家は少し違うが……まあ…………そんな所だな」

「やっぱり、あるんだね、そういうの」


散々、幽霊とかそんなやつを視てきた俺が、今さら疑うのは変な気もするけどやっぱり非日常感はある。


「じゃあ、あの猫は、式神ってやつ?」

「まあ、一応」

「チュールとかあげてんの?」

「猫じゃらしもだな」


現代の陰陽師は意外とほのぼのしてるようだ。


俺が注文したポテトが届く。佐伯さんがじっと見てたので、テーブルの真ん中まで皿をずらしてあげる。佐伯さんの目が輝いた。

うん、だんだん分かってきたけどこの人、犬感があるな。


「他に、なにかあるか?」

「あー……」


実家の差し金とか言ってた所とか、気になることはあるけど、そこにはまだ踏み込まない。それは、一回だけ一緒にファミレスに来ただけの男が知ることじゃない。

だから、質問じゃなくて。


「じゃあ、お願いでも良い?」

「ああ、どんなことでも」


どんなことでも、とかあんまり言わない方が良いんじゃないかな。

俺は、大学の同期に大事なことを頼む。


「俺と、友達になってくれませんか」


うわ、なんかこれ恥ずかしいな。

果たして、佐伯さんは俺の顔をじっと見つめてきた。


「あ、あの、なんでしょうか?」

「うん…………伊豆野君、人から変わってると言われたことはないか?」

「大学構内の猫を従えてる陰陽師さんには、言われるのは心外だなあ」


目の前の彼女は、ふわりと微笑む。少し見惚れてしまった。


「それもそうだな。よろしく頼む、伊豆野」

「うん、佐伯」



「というわけで、今日の四コマの授業の第三回のノート持ってたりしない?」

「お前……まさかそれが目的で…………?あるぞ。それなら、第七回のノートほしい」


新たな友達とのノート交換会は実に有意義だった。

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