雀って何であんなに高いんだろうね
結局のところ、日本人は醤油だれの誘惑には勝てないのだ。
俺は本能に赴くままに、神社の手前で売っているウズラの丸焼きと、ついでにその隣の屋台でフライドポテト(トルネードしてるやつ)を購入。有名な雀の丸焼きは、お値段的に断念をした。食べてみたかったんだけどな。
佐伯はいなり寿司を買ったみたいだ。
歩きながら食べられるものばかりとはいえ、人で混みあっている中では普通に食べづらかったので、屋台のはずれの方で立ち止まる。
「ほい」
元より、一人で全部を食べるつもりはなかったので、トルネードポテトが入っているカップを佐伯の方に差し出す。
「ありがとう、ほれいなり寿司だ」
等価交換。
大変ありがたいのだが。
「手が空いてないんすよね」
「なら、口開けろ」
あ、そういうあれですか。
ちょっと屈むと、口のなかにおいなりさんを突っ込まれる。
おお、五目いなりだ。
しばし咀嚼して。
「普通に、俺がポテトのカップをちょっとの間渡せば良かったんじゃ……」
「あ」
頭が回ってなかった。
あと、いなり寿司は美味しかった。
そんなこんなのやり取りがありつつ、ちょっとした腹ごしらえも終了。
満腹とはいえないけど、これから結構歩くことになるので、腹八分目くらいがちょうど良いのだ。
食べ物が入っていた容器は、参道に設置されているゴミ箱へ放り込む。
「って、佐伯おいなりさん残すの?」
それなら、欲しかった。
「んー、ああ。念のために、な。あと、これはやらんからな」
一つだけ残ったおいなりさんは、ケースごと佐伯のバッグのなかに収納された。
荷物ふえるのにわざわざそんなことをするのか。嫌な予感がしてきたな。
◆
まず、千段くらいの階段を登って、いわゆる神社!って感じのところでお詣りをする。
「お賽銭は、下一桁を五円にすると、語呂で『ご縁がありますように』と、縁起が良い感じにできるぞ」
「へー」
「近年囁かれるようになったことで、謂われなどがあるかは、私も知らん」
「まあ、こういうのは、気持ちの問題だから、良いんじゃない」
「そうだな」
じゃあ、俺は十円玉四枚と五円玉一枚で、『始終ご縁がありますように』でいこう。
二礼二拍一礼。
佐伯と並んで、神様にご挨拶をする。
そういえば、願い事とか何も考えてなかったな。無病息災で良いかな。
ご縁の方は、まあうん。
隣をチラッと見る。
充分恵まれてるわけだし。
さて、本番はこれからだ。
「それじゃあ、行こっか」
「ああ」
ガチ登山。階段とか整備されてるから登山っていうほどではないんだけども。
「ところで、伊豆野」
「うん?」
「ここの鳥居、本当に千基か…………?」
「もっと多いでしょ」
全長何kmくらいあるんだろうね、ここの鳥居の順路。千本鳥居っていう名前は、少なくとも数字を正確には表していない。