オール明けのシャワー、とにかくタイルが冷たい
アルバイト二日目──
12/25日午前12時24分。日にち的には、確かに25日だから二日目といえばそうなんだけど寝てないから二日目っていうのは違和感がすごいな。
花風堂に帰ってきた俺達を待ち受けていたのは、積み重ねられたエナドリ缶(中身入り)と、集計するための表計算ソフトだった。
「…………これ、今じゃないとダメなんですか?」
「ごめんねー、納期が今日の2時までなのよ」
クソ進行じゃん。
どうやら、本日の雇われバイトは俺と佐伯だけではなかったらしく、他スポットの幽霊数の報告がされているらしい。余計に無理だよ。
「しかも、この報告、人間語じゃねえじゃん」
『Nyaaaaam!』
私がやりました、とばかりに白い猫又は胸を張る。白丸というか、文字通り猫の手を借りてたのか。道理で見かけなかったはずだよ。それはいいとして、肉球の判子なんてどうやって翻訳すんだよ。佐伯に投げよ、俺は猫と会話できる面白人間じゃない。
「ほれ伊豆野、カフェイン入れろ」
俺と同じくPCに向き合っている佐伯が、ノールックでエナドリ缶を放ってくる。三缶目は、そろそろお腹がしんどいんだけど。
「なんか、余裕あるよね」
「慣れたからな、後余裕はない」
「ぶふぉあっ!」
炭酸鼻に入ったんだけど。
顔を上げた彼女は、目の周りに湿布を貼っていた。どうやら、スースーするあれで無理やり寝落ちを防いでいるらしい。
「なんつー、力技を」
「力がなければ、何事も為せないからな」
せやな。
「どうだ?お前も、目の周りが白い系パンダにならないか?」
「ならない。というか、目の周りが白かったら、もうそれはシロクマじゃないかな」
「しぃーろいぱーんだに♪」
先生まで入ってくんなよ。無茶苦茶だよ。深夜テンションのせいで、腹がよじれるほど笑っちゃうよ。
必死のパッチで手を動かして、なんとか作業は終わった。現時刻午前1時55分。ギリギリだ。
「これは依頼人のところに持っていくから、二人はお疲れさまでした。お給料と売れ残ったケーキは……ってあら」
ごめんなさい、先生。眠いです、無理です、お休みなさいです。佐伯は既に三分くらい前には床に崩れ落ちていた。
◆
目覚めるとそこは。
「知らない天井だ……」
「知らないことはないだろう」
「そこは、マナーだから……」
すぐ隣から佐伯の声がして、ちょっとドキドキしてるのは内緒。
おそらく先生がかけてくれたのであろうブランケットが自分の身体を暖めてくれていたようで、意外と熟睡できた。後でお礼言わなきゃ。
「ほれ」
「毎度」
それなりに分厚い封筒を、佐伯から手渡される。お給料だ。
時給3万円だから………………学生バイトのお給料3ヶ月分くらい入ってるな。
「早速だが、このお金を」
いきなり使うのだろうか。
「ATMに入れに行こう」
「うん」
こんな額、手で持ってぶらぶらする勇気はない。
先生にお礼をしてから、俺達は仲良くコンビニへ向かった。手数料とられるけど、しゃーないね。




