本場のエルフさん、妖精なんだけどビジュアル的には妖怪
12月24日。まごうことなく、クリスマスイブ。
至るところで、赤い衣装を着た人たちが目に入ってくる。思うんだけど、あのサンタコスって防寒機能ちゃんとしてるんだろうか。心なしか、キャッチのお兄さんお姉さん達も、元気が無いような気がする。
「寒さだけが原因じゃないのかもなあ」
あっちのお姉さん、キャッキャウフフしてるカップル見て舌打ちしてるよ。
「ふぁっひぅふぁふぁふぁ」
「飲み込んでから喋ろうね」
本日の、というか、今回のバイトの相方である佐伯加奈は屋台で買った食い物を頬張っている。
ジャーマンポテト美味しそうですね、俺も買お。
「ふぉふぇへえ」
「お前も飲み込んでから喋れ」
失敬。
「それでさ、佐伯よ」
「なんだ?」
向こう一キロメートルにおよぶ、長大なイルミネーション。
日頃は、普通のオフィス街も、今日は欧州風の屋台が立ち並んでいて、そこだけ異国情緒が満ちている。
端的にいえば。
「ホラースポットじゃなくて、デートスポットですやん」
「うん?ちゃんとホラーしてるぞ。ほれ」
箸で指さないようにしようね。
箸の先には、首がない人とか、お腹に包丁が刺さってる人とか、上半身だけの人とか、五本以上のノコギリが首にぶら下がってる人とか。最後のやつ、どんな人生歩んでたんだよ。
「コスプレじゃないねえ……」
「ホラー的存在がいれば、そこはホラースポットだぞ」
そうだけど!
こう、違うじゃん!
ホラースポットが、ホラースポットたる由縁は、まあ一般的にはこの世でない存在が何かしらうじゃうじゃいる点である。
その点でいえば、今のここはホラースポットに相違無い…………やっぱ違うよ!
ホラースポットは、絶対プロジェクションマッピングとか催されねえよ。しかもこれ、呪われた洋館じゃなくて国の指定建造物だし。
「なんで、今日はこんなにも多いの?」
「まあ、広義の意味での祭りだからな。地獄の釜もゆるゆるなんだ」
そんな理由?
「それに、基本的に霊的存在はお祭りが好きだからな。賑やかなところとかに、出没するのも自明の理だぞ」
「せやろか」
「因みに、オリックス○ファローズが優勝を決めた試合の時は、大正あたりに異様に関西出身の霊が多かった」
「未練残してたんだあ」
阪○タイガースが優勝を決める試合とか、ヤバいんだろうなあ。道頓堀辺りとか、俺みたいな体質じゃなくても霊的なあれそれに気づく人増えそう。
「ということで、ほれ」
手渡されたのは、カウンターだ。台という意味じゃなくて、数を数えるカチカチするあれ。
「数えるぞ」
「全部?」
「そうだ…………私は所用を思い出したので、ちょっとあっちに行ってくる」
たこ焼きの屋台に向かうな!
俺にも半分ください!