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視えるカレと陰陽師なカノジョ  作者: Wana-wana
学部三回生秋~
12/97

小さいリュックサックに、手提げバッグを持つなら最初から大きいリュックを背負えば良いのに

レポートなんかの量が増えれば、画像フォルダーの写真も必然的に増えていく。過去の叡知(正式名称は過去問ともいう)は、あればある程良いからね……。俺はパシャパシャと撮らせて貰った。


「荷物、置く?」


写真撮るのに邪魔だろうし。


「うん…………鞄だけ置きたいんだけど……」


佐伯が、提げているバッグに目をやると、ボコリと中身が動いた。

………………なにいれてんの?それ、テーブルに置いて大丈夫なやつ?

普通の人の荷物が、なんか動いても犬とか猫かなとか思うだけですむんだけど。いや、学校に犬とか猫とか持ち込んでくる人が普通ってことはないか。

佐伯の場合、闇に蠢く何かを使役とかしてる系のバックボーンがあるから、確実にこの世のものではない系の危険物なんだろうなあ。

そんなもん、持ってくんなよ。

思わずその顔を見ると、すっと目をそらされた。やましいこと、というかモノがあるんですね?

ある種のチキンレースを、佐伯と繰り広げていると、前田に名前を呼ばれた。


「伊豆野、俺ちょっと研究室戻るわ」

「どしたんよ」

「ウェア、置き忘れてきた」

「あー、なる」


練習開始前に気づけてよかったな。


「ということで、えーと」

「佐伯です」

「佐伯さん、さようなら」


キラーン、という効果音がつきそうな笑顔を佐伯に向けて前田は去っていく。ものの10分以内に、俺は再会するんだけど。


「あ、はい、さようなら」


……………。

あいつ、名前知りたいがために、研究室戻るとか言い出したんじゃねえだろうな。うちの大学の男子工学部生は、他学部の女子との交流に飢えているからな。(※諸説あります)


「そんで、ほい」

「ありがとう」


ゴトン、と硬質な音を立てて佐伯はバッグをテーブルに置いた。

俺が渡したレポートをそこに置いて、写真を撮る。

その間も、バッグはずっと蠢いていた。


「ナニいれてんのさ」

「知りたいか?」

「やっぱやめときます」


世の中には、知らない方が良いこともあるもんだ。


「痴情のもつれで男を呪うための」

「やめとくっていったよね!」


物騒だな!?

ますますそんなもんを、学校に持ってくるなよ!


ぼちぼち、部室に行かなければならない時間になった。

机とかが置かれているオープンスペースで別れるのかと思いきや、佐伯の方は帰宅の時間らしく校門らへんまで雑談しつつ向かうことになった。


「ぼちぼち冬休みだね」

「そうだな…………」


あんまし、気乗りしてないようだ。


「下宿生だっけ」

「ああ」

「帰省するの?」

「しないと、だめだな…………」


これが、冬休みをあんまし嬉しそうにしてない理由っぽいな。


「用事があれば、帰らなくてすむのに…………隕石とか降って来ないか…………」


そこまで、帰省したくないんだ。

だったら。


「初詣でも一緒に行く?」

「それだ!」


そうなった。いや、自分で言っといてなんだけど、理由付けとして弱すぎない?

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