プロローグ
初めまして。
楽しんで書いていこうと思いますので、読んでいただいた方にも楽しさをおすそ分け出来たら幸いです。
──少女がマッチの火でおばあさんに会い、天国へのぼった事など、誰も知りませんでした。おしまい。
おばあちゃん、この子死んじゃったの?
──そうだね。
なんか、悲しいお話だね……僕、このお話好きじゃない……
──こらこら、そんなことを言うもんじゃないよ。なにも死んだからって必ずしも悲しいとは限らないんだ。
どういうこと?
──彼女はね、最後の最後に幸せな夢を見たんだ。それが夢だと気づかないまま、夢の中で死んだんだ。きっと、あのまま生きているよりも、幸せな笑顔になっただろうさ。
よくわかんないや。今日はもう本読むの終わりにするね。
──待ちなさい、読み終わった本をそのままにしておくつもりかい?
おばあちゃんが読んだんだから、おばあちゃんが片付ければいいじゃん。僕その本好きじゃないもん。
──いいや。これはお前の本だ。だから、お前が大切にしなきゃいけない。それに、いつも言っているだろう? 本を大切に読んでいれば、いつか本が恩返しにくるってね。
もー、またその話。聞き飽きたよ、おばあちゃん。そんなこと言って、今まで一度だって恩返しになんか来たことないじゃんか。
──1度や2度読んだだけで大切にしたなんて言うもんじゃないよ。本って言うのはね、何十年、何百年と語り継げるものなんだ。だからお前がこの本のことを覚えている間は、何回でも読んで、何回でもこの本のことを考えなさい。そうすると、今まで見えてこなかったものが見え、より本を大切に読もうと思えてくるもんだよ。
それで、いつ恩返しに来てくれるのさ。
──さあ、来年かもしれないし、五年後かもしれないし、十年後かもしれない。もしかしたら、お前が大人になってからかもしれないね。
ええっ!? そんなの待ってられないよ! その頃には、その本のこと忘れてるかもしれないし、捨てちゃってるかもしれないよ。
──大切にしろと言っているんだ。捨てていいわけがないだろう? まあまあ、お前もこの街に生まれた人間なら、黙っておばあちゃんの言うことを聞いて、本を大切にしてみなさい。そうだね、将来は……おじいちゃんの本屋さんを継げると良いね。