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第7話 ラーメンと尾行

お盆の連休に入る前日、優斗の家に泊まった悠里。翌朝、朝食中の2人にそれぞれメッセージが入る。後日、それぞれ別の相手と約束した日に会った2人は…。


 数日後、優斗は自宅の最寄駅で結美を待っていた。今日は、例のメッセージの約束日。結美にランチを食べようと誘われたのだが、あまり外食をしない優斗は、何となく抵抗があった。その為、手料理を振る舞うことにして家に招待したのだった。

「お待たせ!一本遅くなっちゃった。」

さっき到着した電車から結美が降りてくる。駅の階段を駆け足で降りてくる彼女は、すっかり都会のOLっぽくなった私服で眩しく見えた。普段見ている仕事着のスーツからは、想像できない姿に少し驚きながら出迎える。

「悪いな。俺の我儘で来てもらって。」

「そんな事ないよ!佐藤君の手料理を食べられるのすっごい楽しみなの!」

目をキラキラさせてそう言う結美は、少し幼く見えて微笑ましかった。そんな彼女を家に案内すると、まずこんなことを言われた。

「へぇ〜。意外と綺麗にしてるんだね。」

それ、みんな言うな。と思いながら、事前に用意していた鍋に火を入れる。今日のメニューは、結美リクエストのラーメン。あっさり系が食べたいということで、ズバリ塩ラーメンにした。と言いつつ塩味は控えめにして、具のベーコンやソーセージの塩気を生かす。更にキャベツや人参、ピーマンなど歯応えのある野菜をどっさり入れて塩野菜ラーメンにする。具材はレンジで茹でものにしておき、結美が来てから麺とスープを用意する。といっても、市販の生麺を茹でるのだが。そうして出来上がったものを結美の前に出す。すると、目を丸くした結美が歓声を上げる。

「おおー!あんまり見たことない感じだけど、すごく美味しそう!私、最近野菜にハマってるから、めっちゃ嬉しい!」

「それは何よりだな。冷めないうちにどうぞ。」

いただきます!とまず野菜を口に運ぶあたり、相当ハマっているのだろう。

「んんー。歯応えがしっかりしてていいね!すっごく美味しい!」

屈託のない笑顔でそう言う結美。優斗は、彼女の向かいで、箸を進めながらそれを眺める。満足感を得る優斗だったが、どうしても悠里の笑顔が浮かんでくることを不思議に思うのだった。

「ご馳走様!そうだ佐藤君。この後、時間ある?」

「あるけど?」

優斗がそう答えると、結美はこの後買い物に付き合って欲しいと言う。何でも、地元の男友達に贈り物をしたいが、何を送ればいいか分からないからアドバイスが欲しいようだ。優斗が了承して、2人は電車で出掛けることにした。

 同じ日の夕方、悠里は居酒屋で柚木と女子トークに花を咲かせていた。

「ねぇ涼ちゃんはさ、最近いい感じの人とかいないの?」

「そうですね。最近は、男より結美ちゃんと飲んだりすることが多いので、いませんね。男不足ですよ。悠里さんはやっぱり優斗君ですか?」

互いに程よく酔っているが、そう言う時こそ、油断しているとドキッとさせられる。

「え?どうして?」

「違うんですか?月曜日とか、たまにお昼一緒にいるじゃないですか。」

「あっ、あれは違うのよ。月曜日は、バタバタしてお弁当作れないから佐藤君にお願いしてるだけ。何もないわよ。」

言い訳するも尚、ニタニタしている後輩に詰め寄られる。

「そこですよ。何で優斗君に頼んでるんですか?」

「か、彼の料理が美味しいからよ。味が私好みすぎて、やめられないの!」

追い詰められて突然、心から本音が飛び出て来た。その言葉に柚木は、「ほお~」という顔をしながら確信を得た。

「あ、これマジなやつだ…。」

それ以上、踏み込む必要はないと判断した柚木は、話題の転換を図った。

「優斗君の料理って、そんなに美味しいんですか?彼にはなんというか、あまりイメージがないんですけど。」

「私は結構好きよ。普通より具材のサイズを大きくして、主張させるの。調味料とのバランスが絶妙なのよ。」

まるで、心を奪われたかのように語る悠里は、柚木から見ると驚きだった。お酒が入っているとはいえ、今までこんな姿は見たことがなかった。機会があれば、今度食べてみようと思う柚木だった。

 そのまましばらく飲み続けて、いい感じに酔いの回った2人は、店を出た。時刻は午後8時過ぎ。そのまま駅へ向かって歩いていると、途中のショッピングモールから見覚えのある人が出て来た。

「悠里さん。あれ、優斗君じゃないですかぁ?」

「んー、どれどれ…あら、結美ちゃんも一緒じゃない。涼ちゃん、追うよ。」

どうやら、スイッチが入ってしまったようだ。ノリノリで尾行を続ける上司についていくと、電車を降りて少し歩いたとあるマンションの前で、優斗と結美が別れた。どうやら結美の家のようで、優斗はそのまま歩いて行った。

「なーんだ。面白くない。ま、健全な関係ならいいか。」

口ではこう言っているが、柚木にはどこかホッとしているように見えた。その後は、悠里の情緒が心配だったものの、自分もしんどかったため、駅まで引き返した後、反対の電車に乗って別れた。

 自宅の最寄り駅までの間、少し手持ち無沙汰になった柚木は、葛城にメッセージを送った。

「悠里さん、どうやら優斗君の事マークしてるみたいです。」

お読みいただきありがとうございます。

また、ブックマーク登録や評価をつけていただいた方、ありがとうございます!

Twitterで拡散してくださっている方、ありがとうございます!

そろそろ、完結の目途が立ってきたかな…という感じに構想を立てていますが、今後ともお楽しみいただければ嬉しいです。よろしくお願いします。

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