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135.買い物の珍客

ついったぁでもお知らせしましたが、昨夜R-18の3本目を公開しました。


「あとは…………紗也ー?あと何があったっけー?」

「もうっ!いちばん大事なの忘れてるよ! お兄ちゃん!!」


 クリスマスパーティを翌日に控えた23日の日中。

 俺は紗也と近くのスーパーまで買い出しに来ていた。


 買うものといえばスマホにあるリスト。つまり夕飯等の買い出しだ。

 白菜に人参にストック用のインスタント麺に…………ふぅむ、特に過不足なんて無いと思うのだが…………あぁ、アレかな?


「お菓子のこと? 買ってもいいけど自分のお金で――――」

「そんなんじゃないよぉ! まったく、お兄ちゃんは子供なんだから……」


 なんと!?

 絶対そうだと思ったのにまさか怒られるとは!!

 でも、お菓子じゃないなら何だというのだ?ジュースも違いそうだし……思いつかない。


「他……何かあったっけ?」

「あれほど大事なのに忘れたの!? 明日のパーティ用にプレゼント準備してって言われてたじゃん!!」

「…………あぁ」


 明日用のプレゼント。

 いいものが中々見つからなくって結局今日までもつれ込んだんだっけ。

 い、いや、決して忘れてなんかいないよ。ただこの買い物終わってからにしようかと思ってただけで……


「そうだったね……うん。プレゼント……。 でも、スーパーにいいのあるのかな?」

「それは帰りにいい店行ったらいいじゃん!ほら、急ぐものは無いし一旦帰ってからまた出るのって億劫だしさ!」


 なら買い物の確認で言わなくてもいいのでは?とも思ったが言葉を飲み込む。

 確かに一度外出して戻ってから再度出るのは中々面倒に思う事が多々ある。しかもマンションだとエレベーターでの昇降が地味に面倒くさい。


 幸いリストに書いてあるものは野菜や軽い調味料が多くて運ぶのもそんなに苦にならない。

 ちょっと遠回りになるけどそれも悪くないだろう。


「じゃあ、ここでの買い物はこれくらいにして次は何処か探してみようか」

「うんっ!」

「――――あら、前坂さんちのご兄弟じゃありませんこと」

「「?」」


 お互いに方針を決めあってレジに赴こうとしたところで、背後の影からかけられるそんな言葉。

 誰だろう。そんな言葉遣いを常用する知り合いなんて記憶の限りでは誰も居ない。少し警戒心を持ちながら紗也とともに振り返る。


「――――璃穏ちゃん!」

「やっ。紗也ちゃん、久しぶりだねぇ」


 片手を振りながら現れたのは俺たち同様この店のカゴを手にしたリオだった。

 彼女はもちろん変装の一つもすることなくピンクのモコモコしたフェイクファージャケットを羽織り、その下はシャツ一枚とラフな格好だ。


 まさかこんなところで会うとは。驚きを隠せない俺をよそに紗也は彼女の元へ駆け寄っていく。


「どうしたの!?こんなところで!!」

「いやぁ、暇なときは慎也クンに会えないかなぁって、空いた時間にちょくちょくココに来てたんだけどね。まさか会えるとは思ってなかったよ」

「そんなぁ! 私もいるんだしウチ来てくれればよかったのに!」


 こうして紗也とリオが対面するのはあの夏祭りの日以来だ。

 昔なじみだからか、人見知りの気がある紗也でも臆することなくリオへと話しかける。

 リオも、あの日は少し控えめだったもののいつの間にか普段どおりに接することができているようだ。


「それは……そうだけどね……その……」

「璃穏ちゃん?」


 紗也の提案にどうも端切れが悪そうだ。

 たしかに近くに来たのなら顔くらい出してくれればよかったものを。

 紗也たちが帰ってくる前は俺一人で色々と問題があったかもしれないが、帰ってきた今なら気兼ねすること無いのに。


「ほら、せっかく紗也ちゃんも帰って来れたから……家族の時間に割り込むのもなぁって……」

「~~! もうっ!そんなの気にすることないのにぃ!」

「わっ! 紗也ちゃん……?」


 リオの言葉にこみ上げるものがあった紗也は感情のままに抱きついていく。

 片手が塞がって抵抗する手段も無かったリオは当然されるがままに抱きつかれ、勢いを殺しきれなかったのか数歩後ろに後ずさる。



「あたし……向こうから戻ってきて今話せる友達なんて璃穏ちゃんしか居ないんだよ? なのに遊んでくれないなんて…………寂しいよ…………」


 それはきっと本心だ。

 紗也からリオ以外の友達の話というのは聞いたことがない。そもそも学校を行かなくなったら疎遠になるのも当然だ。故にこうして学校外の友人というのは大事にしているのだろう。


「でも、紗也ちゃんには慎也クンが……」

「こんな誰でも好きになるような浮気症なお兄ちゃんなんて知らない! あたしは璃穏ちゃんがいいの!」


 とんでもない流れ弾にグサッときた。

 うん…………妹よ、否定はしないけど外でそれは勘弁してほしいかな。お兄ちゃん悲しい。


「…………うん。そっか。 ごめんね、紗也ちゃん」

「わかればいいの! 今時間あるんだよな?じゃあこれからお買い物しない?」

「へ? どこに?」


 ぽかんとするリオの手を掴む紗也。

 まさかの誘いを思っても見なかったのか、リオには何のことか予想のついていないようだ。


「まだ明日のプレゼント決めてないんだぁ! だからこれから買いに行こうって思って!!」

「へ? 色々と買ってるみたいだけど……いいの?」


 リオの視線の先には俺が持つカゴが。きっと冷食等の心配をしているのだろう。


「常温で平気なものだから大丈夫。 紗也もそう言ってることだし、どう?リオ」

「むむっ…………愛おしい兄妹に言われたら仕方ないかね。それじゃあ僭越ながら一緒させてもらおうかな」


 少しわざとらしい空気を残しながら握られているその手を握り返す。

 紗也も握り返されたことでパアッと笑顔が咲き開いた。うん。やっぱり紗也には笑顔でいてもらわないとね。



「ちなみに紗也ちゃん…………浮気症のお兄ちゃんがいらないって言うんなら私にくれてもいいんじゃない?」

「!! 絶対ダメ!! 浮気症でもお兄ちゃんはあたしの大事なお兄ちゃんなの!いくら璃穏ちゃんでもそう簡単にあげないんだから!」


 含み笑いのまま聞く璃穏に慌てたように俺の腕に抱きつく紗也。

 あぁ、やっぱり紗也は兄離れできないのか。でも、俺も妹離れできる気配もないしかなり嬉しい。

 でもリオ。恥ずかしげもなくそれを聞くのは、ちょっと恥ずかしいかなぁ……


「むぅ……ざ~んねんっ!」


 リオは否定されても小さく笑うだけでそれ以上深堀りするつもりはないらしい。

 それは余裕なのか譲っているのかはわからないが、小さく俺にウインクしたのを見て、こんな俺でも好かれているという事実にどうしようもなく嬉しくなった――――。


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