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雪と太陽  作者: やも
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第六話 太陽の日2


 通りには太陽が照り付けて、砂色の道と建物、行きかう人日を照らす。日差しは私にも降りかかり、雪山にはなかった熱を肌に伝えてくる。少し砂っぽくてからからに乾いた空気を思い切り吸い込むと、本当に異国に来たという実感が沸き上がった。

 ほかにも、行きかう人々の服装も特徴的だ。皆、薄くて、風通しのよさそうな白っぽい服を着ている。裾が窄んだ形のズボン。ひらひらしていなくて、強い風が吹いても布がたなびくことはないだろう。男性も女性も、顔の周りに布を巻いている。肌をどこも露出していないのに、布地のせいか涼し気に見える。

 人々の服装の理由はすぐに分かった。この国では強い風が吹くと、砂も一緒に巻き上げられる。ワンピースを着ていた私は、スカートがめくれないよう抑える必要があったし、砂が顔に当たって痛かった。


「早く買い物しなくちゃ。風が吹くだけでダメージを受けちゃう」

「そうだね。まずは、あそこに行こう」


 彼に促されるまま道を行く。バザールに入るとあまり風の影響を受けなくなった。きっと店が風を防いでくれているんだろう。店のおかげで日差しも遮られ、肌を焦がすような痛みもなくなった。あまり長い間日差しを浴びていると真っ黒に焦げてしまいそう。

 私は、バザールの入り口にある式次第のようなものが気になった。人が数人並んでいる。


「あれはなに?」

「ああ。あれは、魔力変換機。あそこに立って、魔力をお金に、お金を魔力に換えるんだよ。自分がためていたお金をリングに引き出すこともできる。リングを買ったら早速使ってみよう。こっちだよ」


 あれが、私のお金を手に入れる手段になるらしい。とにかくリングを手に入れないと始まらない。彼に案内されてリングを取り扱っているお店に入った。

 店の中はそれほど広くなかったけれど、壁一面にたくさんの腕輪が飾ってあり、店主が一人で店番をしている前にもたくさんのリングがあった。それぞれ違うデザインで、キラキラ輝いている。真ん中に透明な宝石がついているものとついていないものが場所を分けておかれていた。


「魔石がついているものは、そのまま魔力を認証させるだけで使える。ついていないものは自分で魔石を用意して取り付ける必要がある。魔石だけでも売っているから、好きなものを選んで」


 疑問が顔に出ていたのか解説してくれた。じっくりと店の商品を見るけどよくわからない。金色の腕輪、銀色の腕輪、真っ黒な鉱石でできた腕輪、木の腕輪もある。


「どう選べばいいの?」

「簡易的なものだから、好きなのを選べばいいよ。後で買いなおしてもいいものだからね」

「でも…」

「まずは良いと思うものをいくつか選んでみて」


 言われた通り、いいと思うデザインを探す。腕に着けるから、あまり邪魔にならなくて、肌の色にも合うようにシルバーのほうがいいかな。

 派手過ぎず邪魔にならないシンプルなシルバーのリングを選んだ。まっすぐなリングの真ん中に小さな透明の石がついている。飾りは一切ない。


「これにする」

「わかった。お会計をお願いします」


 彼は店主が差し出した手のひらサイズの何かに自分の腕輪をかざし、店を出た。ああやってお会計するのか。次は、お金を手に入れよう。式次第のような場所に並び、順番を待つ。ATMの列みたい。

 式次第の前に立つと、記憶にあるATMのように、何をどうするかの順番がちゃんと出てきた。近未来的な光るウインドウで。少し驚いたけれど、指示に従って“魔力を売る”を選び、数字を入力しリングをかざす。—数字についてのこの国の貨幣価値がわからないので彼の言うとおりにした。これでお金が手に入ったのかな。


「ちゃんと魔力を売れたか確認してみよう。リングに向かって、残高確認と言ってみて」

「残高確認」


すると、リングの上に光るウインドウが現れ、10000jと出ている。


「10000jって書いてあるよ」

「よかった。それがお金として使えるんだ。今回は、10000j分の魔力を売ってみたけれど、10000jを手に入れるのに必要な魔力はその時によって微妙に違うんだ。魔力領分をお金に換えることも出来るから覚えておいて」

「わかった」


魔力には時価があるってことね。換金システムは少しガソリンスタンドみたい。


「次は服を買いに行こう。…といっても服についてはあまり詳しくないんだ。」

彼は少し照れたように言う。

「いつもはどこで買ってるの?そのローブとか」

「このローブは魔法省職員の制服のようなものだから。いつもの服も、仕事仲間が買い物に行くついでに一緒に買ってきてもらっていた」

「あんまり服には興味がないのね」

「仕事ばかりだったから…」

「じゃあ今日は私と一緒に見て回ろ。エーシンヴァの服もいいの見つけなきゃ」


こんなに美しいのに服に興味がないとはもったいない。まぁ、彼ならどんな服でも着こなしてしまうから問題はないのかも。もちろん今着ている黒いローブだって驚くほど彼に似合っている。しかし、白系の服を着ている人が多いこの場所ではかなり目立ってしまうので、周囲に溶け込むためにも服を買う必要があるだろう。

近くにあった店に入る。さっきの店よりも広い。さっきが露店ならこっちは商店街の婦人服売り場って感じ。


「いらっしゃーい」


中から元気な店員が出てくる。20代ぐらいのお姉さんで、センスは悪くなさそう。この国の服についてはよくわからないからこの人に決めてもらおう。


「あの、二人分の服を買いたいんです。ここで着替えられますか?」

「もちろんですぅー。ただいま準備いたしますね!何かご希望はありますか?」

「いえ、特には。エーシンヴァは?」

「私も特には」

「おまかせくださーい!」


 店員は元気に店の奥に向かっていった。きっといい服を選んでくれるだろう。エーシンヴァは美しい男だし、私だって美少女だ。張り切って選んでくれるに違いない。

きょろきょろ店内を見回していると、店員はすぐ両手に抱えきれないほどの服を持ってきた。


「ゼェゼェ…お気に召すものはございますでしょうかー?こちらでご試着もできますので!」


 ゼエゼエ言っている。すごいスピードだったし、無理したに違いない。その善意を無碍にしないよう。私とエーシンヴァは服の山の一番上から服をとった。


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