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雪と太陽  作者: やも
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第一話 雪の日

初執筆初投稿です。

厳しくダメ出しされたら泣きます。優しくしてください。

 暖かい水の中にいたのに急に苦しくなって、痛くて、めちゃくちゃ泣いた。赤ん坊の声が聞こえててこれは自分の声だと悟った。だって、知らない天井、知らない人に持ち上げられている。

 痛すぎてよくわからないけど、無事生まれたことにはほっとした。でも、これって、なんで?生まれたばかりなのに目は見えるし耳は聞こえるし、赤ん坊って見えないんじゃないの?ていうかこの知識はどこから?いろいろ疑問だけど、考えられない。眠すぎるからね!

「そんな……」

 え?母親らしき人が悲しんでる?

「この子は育たない。諦めよう…私に渡すんだ」

 父親らしき人が何かを諦めようとしてる?この子って私じゃん。なんで諦めるの!元気に生まれたじゃん!

「ウッ…こんなことって……」

 え、これは諦められる流れですかね。どうしよ…育ててもらえない系?てか、なんで言葉わかるんだろ。あ、そんなこと考えてる場合じゃないか。どうしよ…あ、ねむ…無理…


 寝てしまったけど寒くて起きた。今度は知らない人に背負われて雪山の中を移動している。雪山だから寒いのかぁ~。父母に見捨てられ人買いに売られたのかな?何か理由があって捨てられた感じだったな。育たないってことは私の体に問題があるのかしら。でも、この人は私を買った?どういうことだろう。と、いろいろ考えていたら、雪の中に置かれた。

 置いた人はそのまま来た道を引き返していき、ようやくわかった。ほんとに捨てられた。別に私は買われたわけではなく、雪山の中に捨てられた。最悪奴隷でも育ててもらえれば儲けものとか思ってたのにこれはまずい。凍死まであと少し。なぜなら衣服をまとっていないから。捨て子に衣服は贅沢ですか。ええ、よくわかります。育てられなくて赤子を捨てるくらいに貧困にあえぐ家庭には死にゆく我が子に着せるだけの布などの余裕もないのだろう。野生動物が食べるときにも邪魔だもんね。でもそのせいで命がピンチ。衣服が欲しい。この際、贅沢は言わないから服じゃなくても保温する布が欲しい。しかし、よく考えれば体を布で覆えたところで生まれたばかりの赤子が雪山で生き延びられるわけがないか…。これは周囲の気温が急に上がるとかいう奇跡が起きないことにはどうしようもない…。なんて考えていたら。

 あれっ?なんか暖かいかも。冷えていた体中がポカポカ温まってきた。可哀そうな赤子を保護する神的な存在が来たのかしら?それとも死にそうなわが身の感覚がくるってしまった?色考えながら時間がたっていく。体感で十分ほどたったが、全く第三者の登場の予感は感じられない。それに、考えている間もずっと温かい。暖かいと感じているだけで実際は冷えていたりしたら私はもう死んでいるだろう。ということは実際に体が温まっているのだ。なぜかしら。

 考えても考えてもわからない。生まれたばかりで動くこともままならないし、生命の危機が去ったからか安心してまた眠くなった。このまま寝たら死ぬってやつかもしれないけれどこの眠気には逆らえない。それにこのままじゃどうせ死ぬのだから心地よいまま死ねるのならばいいじゃないかと考え、私はもう一度眠ることにした。


 眠りから起きたが私はまだ生きている。次に起きるときは屋根のある場所で誰かに保護されているのだと思っていたが、そんなことはなかった。相も変わらず周囲は雪ばかりで空に浮かぶ厚い雲からは更なる雪が降ってくる。白銀の世界は美しいが、そうなると猶更、何故私が生きているのかが疑問である。

眠りを妨げられるような寒さは感じないし、さりとて私がいる場所は雪の降りしきる山の中。寒くないわけがないだろう。実際、眠りに入る少し前まで私は寒さに震えていたし、私をここまで運んだ人も見るからに寒さ対策をした防寒着を着込んでいた。もしかしてすでに私は死んでいて、何か夢を見ているんじゃないかなどとも思ったが、そんなことを考えても変わらない現状にどうしようかと悩む現在。だって動けないので考えることしかできないのである。

 と、考えているとふと気づく。お腹がすいた。そうであろう、私は生まれたばかりから一度も食事をとっていない。赤ん坊は二時間おきに授乳する必要があると聞いたことがある。そのような赤子である私のお腹がすかないはずはない。正常な生体反応である。しかし困ったことに、私に乳を与えてくれる母親はいないのだ。どうしよう。

 あ~あ、なんかおいしくて赤ん坊でも食べられる木の実とかが落ちてこないかなぁ~。それか、野生動物が捨て子を育てるみたいな聞き覚えのある物語みたいな展開が起こらないかなぁ。でも、やっぱり動物の乳とか臭そうだし嫌だなぁ。ここはやはり口を開けているとうまいこと美味しくて栄養があって食べやすい木の実なんかが口の中に落ちてくる展開がいいなぁ。

 そう思いながら大きく口を開けると本当に木の実が落ちてきた。いや、木の実かどうかはわからないけれど、多分、赤くて、赤子の口にも入るほどの大きさで、でも喉に詰まるほどは小さくなくて、やわらかくて、甘い果物みたいなものがちょうど口に入った。歯の生えていない私でもちゃんと食べられるくらいに歯茎ですりつぶせる。

 都合の良い展開過ぎて、本当に神様的な人が私を監視しているんじゃないかと思った。神様ってすごいな。私の思ったことを思った形で叶えてくれるじゃん。それなのに親に捨てられたのはどうしてだろうとは思わなくもないけれど、だからこそ願いをかなえてくれているのかな。

 服も着ていない生まれたばかりの赤子だけれど、雪山の環境は苦になっていないし、おいしい果物?も食べることができた。いつまでこの状態が続くかはわからないうえ、二度と食べ物は手に入らないかもしれないけれど、とりあえず今はすべての欲求が満たされている。となると残るのは睡眠欲だけ。また寝ます。


 起きました。まだ生きてる。寒くない。なにこれすごいな。でもお腹がすいた。またあの食べ物を想像して口を開けると落ちてきた。ほんとにすごいな。なんだこのシステム。 

 もしや服なんかも想像したら手に入る?と考え、着る毛布的なものを想像してみた。寒くはないけど周りが寒そうだから何となくね。すると驚くことに空から着る毛布みたいなものが落ちてきた。え、すごすぎる。何となく想像してたものと柄とかが違う気がするけどほとんど一緒だ。神様ってほんとにすごいのね。

 着るものが落ちてきたのはいいけれどよく考えたら私は動けないんだった。どうしよう。この毛布が勝手に動いて私に着られればいいのに。と考えてる間にそうなった。魔法の毛布かよ。毛布は私が想像した通り、私の首をやさしく支えながら背中に入り込み腕を通し前のひもをかわいくリボン結びにした。

 ここまで思った通りになると、怖いけどそれを通り越してよくわからない感情になる。まぁ、悪いことにはなってないし、思い通りに事が運ぶのは悪くない。眠いのでまた寝るが、次に起きたらどこまで思い通りのことを神様が叶えてくれるのか検証しよう。おやすみなさい。


 起きると空が暗かったので、夜になったんだと思う。眠る前は分厚く空にかかっていた雲はなくなって雪は止み、満天の星空が見える。大きな月とたくさんの星は、雪ばかり見ていた私に新たな感動を与えてくれた。状況は変わらないが美しいものは良い。多分ここが雪山の中で、周囲に民家なんかなくて、人口の光も一切なくて、そんな絶望的な状況だからこそ見ることができた美しい星空は私に勇気を与えてくれた。

 さて、検証を始めよう。未だに体は暖かく、毛布を身にまとっていて、口を開けたら果実が落ちてきた。これは眠る前と同じ状況。神様はどこまで私の願いを叶えてくれるのだろう。

今の私に必要なものを考える。人間生活の基本は衣食住と聞いたことがある。衣は毛布があり、食は果物が降ってくるならば必要なのは住だろうか。雪が周りにたくさんあるので、頭の中でかまくらを思い描く。するとどうだろう、周囲の雪がもこもこと動き、私の周りを覆い、考えていた通りのかまくらがつくられた。すごーい。

 これで住居は完成だ!しかし、かまくらの弱点はきれいな星空が見えないところ。かまくらが完成してから気が付いた。どうにか天井部分がなくならないかな。でも、それだと家とは言えないかな。うーん。天井だけきれいな氷になって星空は見えるようにならないかしら。

 今度も考えただけで実現した。かまくらの天井が変化し平らになり、窓のような氷ができた。これで星空を見ることができる家が完成した。入口からは風が入ってくるので、ドアをつけようと想像すると雪でできたドアが完成。なんでもできる。これは調子に乗ってしまうかもしれない。というか現在調子に乗っている。チートってやつかな。なんでも思い通りかも!でも、体が動かないから思い通りにしたいこともないな。とりあえずまた眠いし、赤子の仕事は眠ること。ちょうど夜だし眠りましょう。おやすみなさい。


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