君と夏、溶ける心
溶けたアイスが手首を伝う。
夏のまだ暑い日。町の数少ない日陰のバス停に座ってアイスを食べている。バスを待つわけではないけれど...
「暑いよなぁ...」
通りすがりの一人の男の子が私の隣に座る。私が密かに想いを寄せている男の子。想いを伝えたくても、彼のバスケへの愛を邪魔したくない。彼の青春の邪魔をしたくなくて、伝えられないでいる。
「大丈夫?アイス溶けてきてるけど」
「えっ?あ、あぁ大丈夫」
私は急いで食べ進める。でもあまり急いで食べているところは見られたくはないな。
「やっぱここは涼しくていいなぁ、俺もよくここで涼むんだよ。木の下とかもいいけど、なんせ虫やら何やら多いからなぁ」
「そ、そうだよね、私も虫が苦手で...」
「あはは、むしろ女子で虫が平気なのが珍しい感じあるけどな」
町と言えど、田舎みたいなものだ。周りは木々で囲まれているようなこの地では、小さい子供や高齢の人達は木の下で涼むことが多いけれど、虫が苦手な若者などはそこには行かない。
「...そういえば、大会近いんだったよね。調子はどう?」
「ん?あぁ、バスケ?う〜んそれがさぁ、最近あんまり練習に身が入らなくてさぁ」
カバンに入れていた飲みかけジュースを手に取り、飲み干して君は答える。
「なんというか、どうやっても上手くいかなくってさぁ、自分って努力しても無駄なんかなって思ってしまって。それで最近どうも練習する気が起きなくて」
私は確かに感じとれた。彼の悔しそうな表情。
「あ〜あ、これじゃ、次の試合でスタメン落ちかな?」
「え...とね...」
私はそっと、想いを伝える。
「私は...もっと頑張ってほしいかな...」
「...え?」
「私、知ってるよ?君が毎日部活終わってからも練習していること、試合でミスして、苦手なこととか熱心に練習してたこと...この前負けた時も、一人で悔し涙流してたよね?」
「あぁ...見られちゃってたか」
「そこまでバスケに愛情があるんだったら、私は君に諦めずに頑張ってほしいなぁ」
「...ははっ、なんかそこまで言われると頑張んねぇとなって思っちまうよ。」
そう言うと彼は立ち上がった。
「なんか、ありがとな!励ましてくれて」
「え、う、ううん!私は自分が思ったことを言っただけで...」
「いやいや、それでもこっちは励みになったんだし。感謝くらい言わせてよ。」
───伝えたい───
「いやぁ、努力してるところ見られるって恥ずかしいんだけどなぁ」
───この思い───
「わ、私は...」
───今、伝えたい───
「熱心に努力している君の事が───」
夏のまだ暑い日。陰の恋しい夏の暑い日。溶けて滴るアイスは固さを失う───
やっと言えた
※こちらはTwitterのお題を素に作らせて貰いました。