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妹×異世界×幼馴染×後輩  作者: 山田健一
7/10

そのなな

前回までのあらすじ


さいきょうの ぶきを てにいれた!

 そういえば、俺はこの世界の下級兵士らしい。

 前に神様が言っていた。忘れた人は第一話を見てくれよ~。

 ちなみに俺も忘れていた。

 まあとにかく、そんな下級兵士の俺は銃声のしない方へしない方へ逃げまくっていた訳だが、ついに対峙することになってしまった。

 目の前に広がるは、かつて俺を苦しめた銃使いたち。

 今こうして全体像をつかむと、こんなにカラフルな集団だったのか。

 赤、青、黄、紫、緑、黒……。

 目の前のやつらは全員男だが、どこかに女がいてもおかしくはない。

 きつい原色の服をそれぞれが着ていて、見るだけで気色悪かった。

 まあ、とにかくだ。




 そう、今こそ反逆の時……!




 俺はボタンを押した!

 ドドドっドドドドドドドドドドドド!!!!

 目の前の敵が六人死亡した!

 体重を固定しようとしなくても余裕で連射できるうえに、殺傷力もすさまじい。

 ぶっちゃけ、ありえないと思った。

 どうなっている……?

 それでも多勢に無勢すぎた。

「おらおら死にやがれ!」

 刃物を持った男たちが襲い掛かってくる。

 懐から、背後から、天空から。

 避けられるハズが無かった。

 ザシュっと肉のこすれる雑音が鳴り響き、俺の身体はあっという間に崩れ去っていった。

「はははははーーーーー、花になりやがれええええええ!!」

 花……?

 死んだら花になるのか?

 それは初耳だった。

「死ねええ! 死ねええ! 死ねええ!」

 ザシュザシュと不愉快な音が、雨音のように鳴り続けた。

 俺の意識も混濁していく。

 まあ、慣れてはいるが……。

 俺はここでゲームオーバーか。

 いっそゲームオーバーでいいか。

 この世界には気になる女の子が三人もいたのに、無念だ。

 おそらく三人しかいない。

 最初は別人だと思った。

 性格も違うし外見も違う。名前も共通点がいくつかあるだけ。

 でも、本質的には一緒だったのだ。

 おい、そこのお前ら。

 ナイフを振り回しているヤツと、大口開けて笑っているヤツらと、傍観しているヤツらと。

 ……一応、これを読んでいるヤツらと。

 俺のポッケの中の靴下が、すべてを物語っているんだぜ。






 しかし、それにしても、俺主人公だぜ?

 このまま死ぬのか?

 せめて主人公らしく死にたかったなあ。

 もしかしたら観戦者もいたかもしれないのに、合わせる顔が無い。




 でも、次の時までには、俺は元気に動きまくって、好き放題しているだろう。

 そう。

 俺は、この世界では主人公なのだから。

















 一冊のノートがあった。

 いろいろな情報が書きなぐってある、そんなありふれたノートだった。

 ノートそのモノは埃まみれの汚れまくりで、字も解読不能なほどグチャグチャだった。

 それはある意味部屋のカギのようなものだろう。

 たった一人の人間に対してのみ意味のある、そんな何かだ。

 たった一人の人間のみ、読むことができ、たった一人の人間のみ、内容を理解することができる。

 ソレの書き手をAとしてみよう。

 Aは、独自の言語保有者だった。

 歴史の中で社会的少数派の多くが駆逐されていったように、彼もまた味方を持たなかった。

 社会の一員になることを望み、社会のさらし者になることを拒んだ。

 さらし者だった。

 星や大地に醜態をさらすのなら、どんなに良かっただろう。

 しかしあまりに自分に近すぎる人間たちや社会ならどうか。

 ミンチにされてみんなのさらし者になること。

 それはこの世で最も恐ろしい処罰だ。

 それは幾度となくAは経験した。

 ……Aはひとりだった。

 人は一人では生きていけないという常識が、呪詛のように彼を縛り付けた。

 ……味方を欲した。

 Aの人生は、生まれてから死ぬまで、味方を手に入れることだけを目的としていた。

 Aは搾取され続けていたのだ。

 あまりに搾取され続けて、もしかしたら自分は搾取され続けるために生きているのか、とAが考えたということは、想像に難くない。

 せめて、味方だけでも。ひとつだけでもと。

 しかし、社会や人と接点を持つことは、結局できなかった。

 だからAは、ノートを書いた。

 ソレは彼の生き写しとなって、連続的にムクムクと形状を変化させていった。

 はたから見たら、ソレは怪物か魔物か、おぞましいモノに見えただろう。

 しかしAにとっては、ソレは正真正銘の味方だった。

 同胞ともいう。

 Aはその後、電子の渦に呑み込まれ、浮世から姿を消した。

 電子の配列は、Aにかりそめの社会性や人間性を与えることに成功した。

 上を見ても、横を見ても、下を見ても、細かい粒子の流れが織りなす劇場だけが映っていた。

 ……砂漠のように。

 しかしながら、ソレはあくまでマイノリティの加速器に過ぎず……。



 気づくと、Aは住んでいたのだ。

 転生に転生を重ね、意識を失っては取り戻し、記憶が引っ込んでは現れて。



 Aは山田健一となっていた。

※この物語はフィクションです。

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