そのさん
前回までのあらすじ
危うく男の声を聞きながらアレをやってしまうところだったが、なんやかんやあって女子更衣室へ転移した。
ここは何と……俺が夢にまで見た女子更衣室だ!
……しかし生着替えの目撃までには、まだ時間がいるらしい。というのも、人が一人としていないのだ。
ちなみにただ単にステンレスの棚がいくつか置いてあるだけの狭ーい部屋なだけなので、女子更衣室か男子更衣室か老人ホームの更衣室かどうかも、本当は判別できない。
しかしまあ、女子更衣室は「死ぬまでに一度は訪れたい場所」の男性部門ランキングの常に上位に位置するという(嘘だが)。
そして、無人の女子更衣室に来たらやることはただ一つ!
「下着だああああああ! 下着を探せええええええ!!」
とにかく第一に発見すべきはぱんつ! その次にブラジャー!
第三に靴下! 第四にそれ以外の衣類!
第五第六が無くて、第七がぱんつ!
「うおおおおおおおおおお!!!」
俺はこの世に生を受ける瞬間のような躍動感を持って、さわやかな汗をまき散らしながら、この部屋が部屋でなくなるくらいの勢い(?)で目的物を探しに探した。
しかし……。
「ねえええええええええ!? ぱんつどころかいかにも女の子らしさを感じさせるアイテムがひとつとしてねえええええええええええ!!!?」
俺はこの世から死を宣告された瞬間のような虚無感に襲われて、この世に対する苦しみと憎しみにあふれた呪いの言葉をこの部屋じゅうにまき散らしながら、俺が俺でなくなるくらいの勢い(!)で壁に頭を打ち続けた。
「女子更衣室にぱんつがないなんて……それはもはや女子更衣室ではない!」
まあよく考えたら誰も「ここは女子更衣室だ」とは言っていなかったのだが。
でも女の子の匂いすらないなんて、ひどいと思わないですか?
気を利かせて女の子のぱんつくらい置いとけよ。
エロ本にすら挟まってたのに。
とりあえず冷静になることにした。
冷静になると、疑問がいくつか沸いてくる。
「まず、ここどこ?」
その時、小石が落ちるような微かな物音を聞いた。
人生に何度もは経験しないような超ハイテンションな物探しをしていたときは、からきし気付かなかったのだが、静かになったらいろいろと聞こえだした。
壁に耳を押し付けてみると、よりはっきりと聞こえた。
「ハジメマシテ。あの変態野郎を早く始末しなくてはなりませんね……」
「ひい!? こいつは確かクリニックファイアー専門科……じゃなくて……」
「アイツ、私のことを幼馴染だか何だかと言っていたけど、何だったのかしらね? アルジェーヌ・ミラーフェスタ=ラスト・ザ・クリニカル・フィアーアンドファイアー→クロニクルスカイ、あなたは知ってる?」
「ああああああそんな名前だったああああ……今ミラーフェスタって入ってたか?」
そいつは俺の後輩だ。前世の。
後輩さんと似た名前のヤツと、俺を助けてくれたヤツ――カエデ=クロニクル――が何か会話しているらしい。
そんなことより、俺と彼女らが壁一枚しか隔たれていないのならば、素早くここを離れた方が良いのでは?
下手に見つかって見ろ。ミンチにされてみんなのさらし者だ。
それはこの世で最も恐ろしい処罰だ……。
それは幾度となく俺が経験したから、苦しみが半端なく分かる。
……ん? 今俺変な思考しなかったか? まあいいか。
しかし、考えてもみてほしい。更衣室と思われる部屋の隣に、現に今、可愛い女の子たちがいるのである。
もしかしたら俺の隣で今、着替えているのかもしれない。
女の子の生着替えを盗聴できる以上に、この世に大切なことなどあるだろうか。
二番目に命、三番目に金だとしたら、一番大切なモノは女の子だ。
それを考えたら……俺は逃げ出すことなんてできなかった。
そう。
だってそれは、絶対に失ってはならない、この世でたったひとつのぬくもりなんだから……。
ドドドッドドッドドッドドドッドドッドド!!!!!!!
「おお、おおおお……!」
今衣擦れの音が聞こえたぞ!?
「おお……おお? ん……おおおおおおおおおお!! こ、これは……おおおおおおおお! ふおおおおおおお!!?」
※僕のセリフから隣の部屋でどんな状況が起こってるか、一緒に考えよう。
「ああああ、イイ、イイよ!! そうそう……女の子の着替えはこうでなくては……。え、二人いたと思うけど会話しないんだね? でも声が一切ないのもまた想像を無限大に膨らませる……!」
ドドドッドドドッドド!!!!
「ああ、そういえばエロ本は置いてきてしまった……。アレがあれば鬼に金棒だったのに……。それにしてもさっきから何か聞こえないか?」
ドドドッドドドドッドドドッドド!!!!!!!
「って弾幕だあああああああああ!!? 俺はおいしくないですよーーー!!? だから殺さないでえええええええええ!!」
いつの間にか元の砂漠世界に戻されていた。
「煩悩を検出したので元に戻しました」
「神様お前のせいかあああああ!!」
「で、どうだった? でかかった?」
「知るか! つーか何がだよ!?」
「えー男だったらそこは壁壊して現役JKちゃんたちの生着替えちゃんと見ないと~」
「なんでじゃああああああ! てめえの方が煩悩まみれじゃねえかあああああ!! ていうか助けて! 助けて! まじで! これは! 死んでしまう!」
息が上がってきた……。
「じゃ、神様はここで失礼するね」
「さっさと帰れえええええええ!! それにしても……誰か助げでええええええ!!!!!」
「屈め」
「へ?」
かなり低く聞こえたが……今のは女の子の声?
「屈め。二度言わせるな」
「は、はい」
俺は体の全てを砂地に接触させるように屈んだ。
すると……。
二、三発の電子音にも似た爆音が俺の耳を独占したかと思うと……。
同じ戦闘服を着た銃使いたちがマネキン人形のようにバタバタと倒れていった!
黒い人影が現れる。
「お、お前は……!?」
まだまだ!
続く!
主人公が気持ち悪いですが、仕方ありません。