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円卓の小人  作者: ひとりぼっちの桜
自己紹介
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第2章「事後紹介という名の自己紹介」

お忙しい中閲覧ありがとうございます。


今回は小人たちの自己紹介の回です。

ちょっと長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。

               第2章「事後紹介という名の自己紹介」




 悪夢だと思いたい、橋の出来事からの帰り道。

 俺は「帰りたくないな~」と思いを胸に、歩を進める。

 ため息はしだいと数を増していった。



「は~。何か神の怒りを買うようなことを俺はしたのかな? 楽園のリンゴを食った記憶は無いな。前世で食ったのかな~? でも、それは今現在の俺に下る罰であっていいのかな?」



 そして傾斜35度はあろう長い坂を上って自宅へと帰還した。


 築3年、長い坂の中腹、まだ真新しい2階建てのコンクリート住宅。

 そのマンションの2階の1室が我がMyホームとなる。

 家族は妹と2人暮らし、両親は


「ご主人、早く家に入らないのか? もうかれこれ5分そうしているが」

「うるさい。 今、現実逃避してんだからファンシーな生物が話しかけてくるなよ」

「フッ、私がファンシーだって? かわいい顔に騙されると火傷するぜ、ボウヤ」

「うるさいよ!!」


 俺はショルダーバックからピョッコッと出てきた小人の頭をバックの中にねじ込む。

 そしてジーーとチャックのジッパーを上げた。

 酸欠で死んでも、可。


 あーオホン! 先ほどの続きといこう。

 俺の両親は海外で働いている。

 2人とも外国為替銀行とやらで働いているので日本には正月ぐらいしか帰ってこない。

 まぁー慣れとは怖いものでこの生活にも一切不満もない、妹もかわいいしな…激カワユス。



「何でご主人は家に入らないんだ?」

「何か入りたくない事情でもあるのかもしれないな」

「そんなことより、誰かわたしのお尻触ってない? さっきからムズムズかゆいのだけど」


「お前かぁーマーリン!」


「グハッ! ワ…ワシじゃない!! というか、お前の横にいるワシがどうやってパーシバルに触れることが出来るというのじゃ!?」


「それもそうか」

「あー今、ケイもお尻触られた~」 

「マーリン!!」

「ベイリン落ち着け! わ、ワシじゃないっ、グハッ!」


「お前らうるさいんだよ! 今から家に帰るんだから静かにしてろよな!」


「「はーーーい♪」」


「ワシじゃないのに…」




 鉄骨で出来た螺旋状の階段を足取り重くえっさらほっさら上り、1番端まで行き明かりのついている部屋でチャイムを鳴らす。

 すると扉越しに聞こえてくる「ポスッポスッ」という軽快なスリッパの音が近づいて来るのがわかった。


「あっ、おにいちゃん、今日遅かったね」


 笑顔で出迎えたのは世界で一番かわいいであろう俺の妹。

 妹は俺が帰って来たのがよほど嬉しかったのだろうウキウキしている丸い目をさらに輝かせ、その艶っぽく長く清楚で可憐で優雅な黒髪はまるで兄に抱きしめてもらうのを待っているようだった。

(注、これは兄の主観であり効果や効能を保障するものではありません)



 妹は小さい身長にそぐわない大きなエプロン、右手には包丁を持っていた。

 どうやら今日の料理当番を実行していたようだ。

 俺はいつものように両手を大きく広げた。


「ただいま~~~お前はいつもかわいいな~~」

「もう、おにいちゃんったら(ドフッ!!)」


 兄の抱擁よりも早く打ち出される妹の拳、それは腹筋マシーンで鍛えた我がみぞおちを軽々と超えたのだった。

 まぁ、包丁じゃなくてよかったよね♪

 しかし、最近妹の力がみるみる強くなって…いや、気のせいだよな。

 俺の妹はか弱いんだもん♪


 俺は苦悶の表情をしながらも腹を抱えながら立ち上がった。

「うぅぅぅ。 ああ、ちょっと色々あったんだ」

 そう、ショッキングで不安な未来を彷彿させる出来事が。


「あーわかった! 彼女ができてデートだったんだぁ~こんな時間まで、やらし~」


 今の俺の表情を見てなぜそんなポジティブな連想ができる? 妹よ。

 認めたくはないが、兄はな、お前の兄はな……モテ…ないんだよ。

 そんな恋話が大好きな思春期妹、それが三錐愛梨16歳だ。 



「違うよ。 俺は飯まで部屋にいるけど、何か手伝ったほうがいいか?」

「う~うん。 もうちょっとで出来るからいいよ」


 なんてこの子は甲斐甲斐しくて頑張りやさんなんや~将来はええお嫁さんになるわ~。

 まぁ、彼氏候補は全て八つ裂きにしてやるけど。

 そんな殺人計画を心の中で吐露した時、バックから将来の殺人鬼に向かって小声が発せられた。


「ご主人、私たちもごはんが食べたい」 

「お前らも飯食うのかよ? 太陽光発電とか二酸化炭素を吸収しとけよ」

 ショルダーバックから囁かれる雑音に、俺は独自の解釈で返事を返す。


「おにいちゃん、誰と喋ってるの?」

「いや何でもない! ちょっと宇宙人と交信してた。 気にするな、お前の兄はちょっと電波っ子だったんだ。それでなあの~飯作るときに、夜食も作ってもらっていいか? いや、めんどくさいならいいんだよ本当、二酸化炭素とか吸っとくからさ」

「なんで二酸化炭素!? そんなの吸ったらお兄ちゃん死んじゃうよ!? そんなにお腹が減ってるなら別に夜食ぐらいいいけど、おにいちゃんが夜食食べるなんて珍しいね。 いつもは夜食を食べると体形が崩れてモテなくなるって言ってたのに」

「ああ、やっと体形がモテる要因に大した影響を及ぼさないことに気づいて…は、置いといて。 受験勉強の合間にな。じゃあ、部屋にバック置いてきたらすぐテーブルに行くよ」



 そして俺は部屋に戻ると、肩が外れんばかりにバックを壁に投げつけた。

 死ねぇぇこらぁぁぁ!!

 我が心に住まうストレスという猛獣に改心の一撃を与え、俺は食事に向かった。



「あははは」

「キャハハ」

「あははは」

 こんな楽しい時間、至福の時間はあっという間だった。

 可愛い妹との会話、暖かい食事を終え、夜食のおにぎり片手に部屋の前に佇む俺。


「この扉を開けたら、召喚獣変わってねーかなー?」


 ク…リーングオフは…ないよな?

 いや、でも今の世論を鑑みてクーリングオフが無いなんてことあるのだろうか?

 そうか!文句を言えば何とかなるかもせん!

 消費者の目を舐めんなよ!

 そんな淡い望みを胸に秘め、ドアノブに手をかけ、そっと回したのだった。


「わーい、わーい」

「くらえガーウィン! 枕シュート!」

「甘い! ウォリァーーーーー!!」


 まったく~こいつら楽しそうだな~

 俺は微笑ましいものを見るような顔になった。

そしてドアをしっかりと、しっかりと! 閉めた!!


「お前ら何しとんじゃーー!! 殺すぞーーー!!」




 とりあえず俺は椅子に座り、小人たちは俺のベッドに座らせた…いや、正しくは乗せたというのがしっくりくる表現だろう。

 一列に並ばせた小人はUFOキャッチャーの景品のようだった。

 などとよい比喩表現が浮かんだところで状況は一変しない。


 俺は両手で頭を抱え小人たちに目線をやる。

 ほぼ全員が中世ヨーロッパの騎士の服に鎧を纏い、おもちゃのような剣を腰にぶら下げている。


「お前らは何なんだ?」

「円卓の小人」

 何、それ?

 さっきまで枕投げをやっていた赤髪の男の小人が自信満々に言い放った。


「お前らは…まさかとは思うんだが…おれ、わたくしの~~」

「愛すべき、いとおしいあなたの召喚獣です♪」

 愛したくないし! いとおしいとも思いたくない!

 ピンクの髪をした女の小人は俺の希望を打ち砕いた。

 俺は椅子から雪崩のように崩れ落ちる。


「そっ、そんなバカな! こっこっ、こんなゴミ共が俺の召喚獣なわけがない! 俺は高校を卒業した後、特別な大学に行って俺の才能をいかんなく発揮するはずだったのに!! こんなやつらだと馬鹿にされるのがオチじゃないか~~我がバラ色ライフがぁ~」


 神よ~!!

 これは何の試練なのですか!?

 俺はカーペットでうずくまるり、現実を嘆いた。

 しかし望んだ神からの返答は無く、代わりに聞こえたのは小ざかしいやつらのさえずり声。


「ご主人、ご乱心」

「うん、うん」


 リストラされたサラリーマンのようにうずくまる俺。

 そばでは、まるで他人事の小人たち。

 俺は数回やわらかいカーペットに怪我をしない程度に頭を打ち付けた。


「チクショ~なんでこんなハズレを引いちまったんだ!」

「主、由々しき事態と考えられているようですが、どうか顔をお上げください」


 もう泣きたくなってきた俺の肩にポンと小さな手が置かれた。

 完全に地に伏した俺に手を差し伸べたのは、銀の髪をした男の小人だった。片目にかけているモノクルがキラリと光る。


「なんだよ~、顔を上げたってどうせ目の前にいるのはハズレだろぉ」

「ハズレにするか、アタリにするかは今後の主しだいではなかろうか?」


「うっせーよ! お前らが言うなーーーー!!」


 俺の瞳から流れてるのは水じゃねー、涙なんだよっ!



「ちょっと、聞き捨てなりませんわ。」


 急に扇子を持った、紫の髪の長い女の小人が生意気にも俺に食ってかかってきた。

「おねーちゃん、ご主人様に向かって失礼だよ」

 同じく紫の髪をした女の小人が、小さい声で制止しようとする。


「失礼なのはあちらの方ですわ! まるでわたくしたちのことを、ハズレなような言い方をなさって」


 “ような ”今この女、ようなと言いやがったとですか?

 おらぁ~血管がブチ切れましたぜ♪


 俺はムクッと立ち上がり、そして小人を見下すように指差す。

「ハズレなような言い方なんぞしてねーよ!ハズレだって断言してんだよ!」

「なっ!? なんですって!」


 エレガント紫(今、俺が命名)は上から見下す俺に負けないぐらいの目力で見返す。

「わたくしたちからすれば、あなたの方がよっぽどハズレですわ!」

「なんだとー!」


「わたくしは知っておりますのよ。 半年後、この世界におけるテストとやらがあるのでしょう? 互いの知恵と知恵をぶつけ合う戦争、それに負けたらわたくしたちは消える。 文字通り半年の命、こんな馬鹿そうな主に召喚されたのですからね!」

「ふ…ふふふっふふふ」

「なっ、なんですの?」


 動揺するエレガント紫。

 この女はこの俺のエリートさを知らんらしい、ならば見せてやろう!


 俺は高校生活における努力の結晶、最強の手札たる通信簿を勉強机から乱雑に取り出した。

 しかし! これだけではまだ甘い! ついでに机から前回のテストの答案をプラスする。


「見てみろや!」


 部屋の真ん中に置かれた丸テーブルにぶちまけられる強力なミサイルの数々。

 小人たちは各々ベッドから飛び移ったり、テーブルの足からよじ登ったりして、ミサイルの上に集合した。


 エレガント紫は「こっ、これは!」という表情をして言葉を失った。

 それもそうだろう、通信簿に書かれていた数字は10以外無いんだからな。

 しかも、テストは100点のみじゃ!!

 これが俺の青春全てを対価にして召喚した超ド級のモンスターじゃぁ。グスリ



「これで分かった? 俺は半年後のテストなんぞ、普通にやればトップ間違いなしなんだよ!」

「「おぉー」」


 小人たちから賞賛の拍手が送られる、たった1人を除いて


「ムムム」


「どうしたよ? 反論はあるかね、ハ・ズ・レ」


 俺は勝ち誇るように人差し指でエレガント紫の頭をツンツンと押しつぶしていく。

「ムゥゥゥ~ これ…あなたのではないのでしょう」

「はぁ? 俺のだよ」

「ウソおっしゃい! さもなくば…偽造、そう! 偽造に決まっていますわ! 偽造は重大な罪、死刑になっておしまい!!」

「テスト用紙を偽造しただけで死刑になってたまるか!お前どんだけ認めたくないんだよ!」


「マァマァ~ノッてるとこなんやけど、二人とも落ち着いて~や♪」


 緑の髪をした男の小人が関西弁混じりにヒョウヒョウと、俺とエレガントの間に割って入ってきた。

 エレガント紫の瞳が眉間のしわと共に鋭くなる。


「ディナダン、邪魔ですわ。 1秒以内に視界から消えなさい」

「1秒って無理やわ~、ワイ電球ちゃうし、モルももう認めようや~。 今回のワイらの主は優秀やってことを。 それにご主人も、ワイらとの契約は既に履行された。 もうチェンジはきかへん、ならワイらと言い争ったってええ事は1つもない。これからのことを仲よ~話し合ったほうがええんとちゃうん?」


「ふざけるな! 俺は契約書に判は押してない、これは違法だ!」

 

 そう言うとディナダンと呼ばれた関西弁の小人は、へらへらニヤニヤと口を開く。

「そりゃ~無理な相談やで。 あんさん、契約書に自分の血ぃ~使ったやろ?」

「だってそうしないと召喚獣が手に入らないから、しかたなく」

「しかたなく、自分の意思で」

「違う!自分の意思では無く…」

「なく?」


 うぅぅぅ、だってもっとかっこいいのがもらえると思ったんだもん。

 俺の気持ちを見透かした緑化野郎の目はニタリと笑う


「別に、何でもありません」

 涙が出ちゃうっ!だって男の子だもん。


 


「そいじゃ、とりあえず自己紹介といこうや♪ まずご主人、どうぞ~」

「なんで俺から言わなきゃ――」

「マァマァ、とりあえず言っちゃおう、言っちゃおうよ♪」


 何なんだこいつは?

 合コンですか? 調子狂うな。

 まぁ合コン行ったこと無いけどね。

 俺は椅子に座りなおしてわざと偉そうに足を組んだ。


「俺の名前は三錐用兵だ」

「さえない名前ですわね」

 いきなり憎しみが生まれました。

「モル、そんなこと言わないの。 大丈夫よ、ご主人さま、とってもいい名前よ」


 金髪の色気がたっぷりある女の小人がすかさず俺をフォローしてきた。

 でもなんかそのフォロー、涙が出てくるから止めてくれませんか。


「じゃあ次はワイらの番やな♪ じゃあまず――」

「ちょっと待った!」


 俺は引き出しの中から、新品のキャンパスノートとペンを取り出す。



「お前ら、基本的に似てるから書かなきゃ覚えられん」

「おっ、ご主人、ノッてるな~ワイらに興味津々やん♪ 飲んじゃう? 飲んじゃう? 今日飲んじゃう?」 

「やかましいわ!」

「照れるな、照れるな♪ じゃあ、ご主人が覚えすいように数字の若い順にしよう」

「数字の若い順?」


 俺の疑問系の復唱に関西弁の小人は分かりやすいように説明を付け足してきた。


「ワイら全員の体の一部には数字が書いてあるんや、だからその数字が若い順に紹介したほうがご主人も覚えやすいやろ?」

「はぁ~? まぁ、わかりやすけりゃなんでもいいや」

 ビリビリとノートの袋を破きながら興味なさげに俺は言ったのだった。

 本当は勉強以外でノートに何か書くのは嫌なのに。





ト「改めまして名乗りを上げよう。 私の名前はトリスタンだ、ご主人」


 トリスタンと名乗った黒茶色の髪をした男の小人は、左手薬指に印されているⅢというローマ数字を見せるようにして涼しげに名乗った。

 この小人の覚えやすい特徴を挙げるなら清楚な顔立ちに泣きボクロがあるってことかな。


「Ⅲか…お前が一番若い数字ってことは、この中ではお前がリーダーなのか?」

 俺がそう問うと、トリスタンは付き物が落ちたかのようにキョトンとした。

ト「私がリーダー? フッ、器ではないよ、ご主人」


 などと言った後、トリスタンは目を瞑ってブツブツ自問自答を始めた。

 ともあれこいつはクール&あんちくしょうなやつだ。

 俺はノートに「泣きボクロ+フッ」と書いた。

 PS.なんか今のフッってやつ、大層むかつきました。


 

 え~と次はⅣ番…は飛ばすとして


ガ「飛ばすなー!」


 この俺の心の中にうるさいぐらいのツッコミを入れてきたのは、燃えるような赤い髪をした、これまた自信に満ちた、燃えるような火色の目をした男の小人。

 赤い髪の小人は、右手の甲に印されているⅣというローマ数字を見せ付けるように力いっぱい、その引き締まった腕を天に向かって振り上げた。

 まぁ天って言っても天井の「天」だけどね。


ガ「俺の名前はガーウィンだ! 用兵、よろしくな!」


 何でほぼ初対面の人、それも小人に呼び捨てにされなきゃならんのだ。

 と言おうかと思ったが、経験上こういったやからはめんどくさい。

「そうか、よく分かった。 じゃあ次――」


ガ「待てい! 用兵、俺に聞きたいことはないのか」

「大丈夫。何もお前に聞きたいことは無い。 もう十二分にお前の特徴は掴んだから――」


ガ「俺がリーダーだ!!」


 頼んでねーのに、こいつは…しかも多分ウソだろう。

 その時だった!

 今まで無かったはずのシックスセンス、第六感とも言われるそれは俺に語りかけてきた。


「ソイツ・リーダーチガウ」

 …うん分かってる。

 俺は目覚めたばかりの第六感にそっと一生開くことのない蓋をした。


「ウソですわ」

「虚言ですよ、主」

「ウソつくなよ! ボケ!クソ野郎!」

「嘘はダメだよ、ガーウィン君」


 ほらな、第六感に頼るまでもなく周りから巻き起こるリコールの嵐。

 ガーウィンは振り上げた拳を静かに下ろす。


ガ「リーダー的な感じだ!!」


「的ってなんだよ! なに妥協しながらプライド守ろうとしてんだよ。 まぁ~いいやそれでお前の大切な何かが守れるなら、じゃあ次」

 こいつに関しては書く必要が無いほどインパクトあったので何も書かなかった。




べデ「自分の名前はベディヴィエールです。主」


 次に出てきた小人は、銀灰色の髪をこちらに向け、礼節丁寧にまるで執事のように俺にお辞儀をしてきた。

 小人っつーのは性格もバラバラなんだな。

 俺はそんな感想を持ちながらベディヴィエールの体を見回した。

 着崩しなしに服、鎧を着こなすその姿は英国紳士のようだ。

 しかし着崩しが無いせいで肌の露出がほとんどなく、見える部分にローマ数字は発見できなかった。


「お前の体には、Ⅴっていうローマ数字は無いのか?」

べデ「もちろんありますよ。 今、お見せしましょう我が主」


 そう言うとベディヴィエールは左目にかけていたモノクル(片眼鏡)を外して見せた。 するとしだいに眼球にⅤのローマ数字がボゥ~と浮き上がってきた。


 怖っ!?

 キモっ!?

 不気味!?

 全てのバイオハザードがここに集約されていた。


べデ「これでよろしいですか、主?」

 ベディヴィエールはニコッと笑って言った。

 それがまた…なんとも不気味さを助長する。

 これ以上は無理、夢に出てくる。


「…もう十分だ。 モノクルかけていいぞ」

ベデ「仰せがままに、我が主」


 こういう衝撃のパターンもあるんだな、しかし人間としてこんなわけの分からん生物に遅れはとれん。

 俺は先にイラッとしたトリスタンの真似をして口でフッと言ってみせた。

「フッ、じゃあ、次」




パ「Ⅵ番パーシバルよ。 ご主人さま」


 他のやつより少し大人びて見えるフェロモンムンムンの女の小人。

 その長い髪は掻き上げる度に黄金に輝く。

 着ている服も他の小人より露出かなり多め、着崩しもプラスして水着のような鎧からおいしそうな胸が僕に挨拶してきました。(こんにちは、おっぱい)

 そして胸の谷間からは、それはもう白く柔らかそうな肌が顔を出す。

 もぅ~小人というのを忘れて食べちゃいたい。


パ「あらっ、何見てるの、ご主人さま?」

 パーシバルは少し首を傾げながら主に質問した。

 オリーブ色の瞳が全てを見透かしたようにクスッと笑う。


「いやっ!? 別に、何も見てません! おっぱいとかそんな…ハイ」

パ「うふふ」


 ひっくり返るような声で必死に否定する俺。

 何、小人にからかわれてるんだ俺は…

 胸っていったって所詮は小人……おいしそうだな~。

 ハッ!? また俺の目が無意識にロックオンしてしまった。

 俺は頭を数回ブンブンと横に振って煩悩を打ち消した。


「お前も数字は隠れてんのか?」

パ「見たい?」


 見たいです!! 


 じゃなかった。

 そもそも何、その選択肢?


「え…ええ、まぁ」

パ「そう…でもそうなると、わたしはここで服を脱がなければならないのだけど…」


 ありがとうございます!


 じゃなかった。

 相手は小人だ、理性を保て俺!

 俺はどこに書いてあるのか、その答えを脳内で目まぐるしく考えながら断腸の思いでくちびるを噛んだ。


「べ…別に、いいよ。 信じてないわけじゃないから!」

パ「あらっ本当。 ご主人さまは優しいのね」


 クスッと笑う妖艶な唇

 パーシバルは皆の所に戻っていく。

 こいつとの会話はえらく疲れる。

 俺は視線を落としながらパーシバルの後ろ姿を見る。

 大きく割れたスカートのスリット、その間から見えたのは白く美艶な右足、太ももに印されていたⅥというローマ数字だった。


 別にあの位置なら服を脱ぐ必要はないのでは?

 ……弄ばれたれた!?


 俺はノートに「お姉さん怖い!」と即行で書いた。

 でもそんなのも嫌いじゃないです…ハイ。




 次の小人はさっきのとは間逆という感じだった。

 さっきのが妖艶と称するのなら、こいつは純真無垢と言えるだろう。

 服や鎧も戦闘向きというより、そのまま社交会にでも行けそうな展覧豪華な装いだ。

 淡いピンクでクルクル縦ロールの髪をした女の小人は開口一番、自分の持ちうる最高の笑顔を俺に向ける。


ケ「はじめましてぇ♪ わたしはケイって言うの。 よろしくねぇ用兵ちゃん♪」

「お、おう」

ケ「こんな、かっこいいご主人様だなんてぇ、ケイすっごくうれしい♪」

「そっ、そうかな? まぁ、それほどでもあるな! ハッハッハ」


 よかった~いいやつ(小人)もいて。

 俺は心からホッとした。


ケ「用兵ちゃん、ケイの数字見てよぉ。変な所にあってすごく気分落ちちゃったのぉ」


 ケイはそう言うと、後ろの髪を上に持ち上げ、(うなじ)に印されているⅦという数字を見せた。

 微かに香水のいい香りが鼻に漂う。


「いいじゃん。 カワイイって。」

ケ「え~本当~? 用兵ちゃんからかってるでしょぉ~もぉ~プンプンなんだからね」

「本当♪ 本当♪ 似合ってるよ♪」

ケ「ほんと~? しかたないな~じゃあケイもこの場所、好きになるぅ♪」


「ご主人、お楽しみのとこ悪いんやけど」

 緑色の髪の小人が残りのメンバーを指差す。

「押してるから、次に行ってもらってもいい?」


「あ~そうだな。 じゃあなケイ」 

ケ「うん♪ ばいば~い。 テッテッテ」

 テッテッテと口走りながら戻っていくケイ、俺はノートに「Ⅶ番、超~いい子」と書いた。




「超~いい子か…ノッてるね~ご主人、女には気つけーや」


 先ほど押せと言ってきた関西弁の緑葉食野菜がよく似合う緑色の髪をした男の小人が、ノートを覗き見ながら忠告をしてきた。


「見んなよ! 個人情報保護法でお前を告訴するぞ」 

「あー ごめん♪ ごめん♪」


 緑色の髪をした小人はヒョウヒョウと悪びれる様子無く謝る。


「次はお前なのか?」

「うん。 そうそう。 ご主人、ヨッロシクね~♪」


 小人はやたらいい笑顔でウインクしてきた。

 左耳にしているトランプのスペードを模したイヤリングがチャラチャラと音を立てて揺れる。


「ちなみに今のはノッてるケイのマネ~♪ ドキッとした?」

「イラッとしたよ! 早く名乗れよ」

「あらら、つれへんな~」


 小人は左耳のピアスを触りながら大きく舌を出す。

 舌にはⅧのローマ数字。


デ「Ⅷ番ディナダン、よろしくな♪」


 軽い、ノートに書くことが今、決定した。


デ「ん~? 今、ご主人そのノートにワイのこと軽いって書こうと思った?」

「!? いいや」

デ「じゃあ、軽いの横にヒョウヒョウとしてるって書いたらええ。 より覚えやすなるで、じゃ~ね~♪」


 ディナダンは後ろ手を振りながら戻っていく。

 あいつは俺の心が読めるのか。

 そう思いながらもディナダンの忠告どおり「軽い+ヒョウヒョウ」と書いた。

 確かに覚えやすい、俺はうんうんと納得しながら頷いた。




「おい! 早くしろよ! ボケっ!」


 またか…また主人を主人とも思わないやつなのか。

 ガーウィン2号めっ!

 俺は不快そうに、そしてどんな野郎だと確かめるため振り返る。

 しかしそこにいたのはオレンジの髪をした女の小人だった。

 健康的な小麦色の肌、その左頬にはⅨというローマ数字が書き殴ったように首まで伸びていた。


 小人は肩まで伸びたストレートの髪を無造作に2度ほど掻き毟り、敵意満々と目尻が上がったつり目を主人である俺に向ける。


ベイ「オレの名前はベイリン。 番号はⅨ、以上」


 これが自己紹介?

 いいえ、これはメンチです。

 自分のことをオレと称するベイリンは、俺にメンチを切ってスタスタと戻ってしまった。

 こいつもノートに書かなくても覚えれるから大丈夫だな。


「ハァ~」


 この溜息は安心?

 いいえ、不安です。


「次のやつ、来~い」

 もう疲れてきた…帰りたい。

 あっ、ここ俺の家だった。

 ということは八方塞だっ!




「何ですの? その気のない呼び方は」


 !?

 なんと、次に出てきたのは…一番、俺と相性が悪いと思われるエレガント紫!

 もう無理だ、これだけすげージャブ(個性)を浴びた後、アッパーなんぞ受けた日には、俺の頭はパンクするかもしれん。


 エレガント紫は持っていた扇子を口の前で大きく広げた。


モ「わたくしの名前はモルドレッド、モルドレッドですわ。 よく頭に覚えこませ心に刻み付けることですわね、モルドレッドと!」


 連続宣言される名。

 エレガント紫ことモルドレッドの腰まであろう紫の長い髪が清楚になびく。

 こんな個性の塊みたいなやつが何度も何度も自分の名前を言って、こいつは選挙にでも出るつもりなのか?


ケ「演説みたいだね」


 大声でケイがこっちに向かって言う。

 That‘s right!

 俺は激しく同意した。


モ「ケイ、うるさいですわ!」


「それでお前はどこにローマ数字があるんだ?」

モ「…………」


 何、その沈黙?

 恐いんですけど、

 その高圧的な瞳で何を言うつもりだ?


モ「用兵さんのヘンタイっ!」


 ええ~~!?

 何が~? 


モ「女に人前で素肌を、晒せなどと」

「…どうせ、そう言ってパーシバルみたいに足とかにあるんだろ?」

モ「足にはありませんわ!」

「じゃあどこ?」

モ「む……」

「む?」

 モルドレッドの顔はみるみるりんごのように真っ赤になっていく。


モ「このヘンタイ!!」


「なんでお前に変態扱いされなきゃならないんだ! まだお前には何もしてねーだろうが!!」

モ「まだって、なにか今後するつもりですの!?」

「したらごめん。 魔が差したんだ、許せ!」

モ「最低ですわ!!」


 モルドレッドは真っ赤な顔を冷ますように扇子を扇ぎながら小人たちの方に戻っていった。

 そしてすぐ1人の小人の手を掴んで戻ってきた。


 モルドレッドとまったく同じラベンダーのような紫の髪。

 違うのは長さがショートでクセッ毛があるってことぐらい、しかし徐々に近づいていくにつれモルドレッドよりも…なんていうか、暗い感じに見えた。




モ「ほらっ、ライオネル」

 モルドレッドに促され、紫の…いや、もう名前は分かったんだった。

 ライオネルは緊張からか身を小さく縮め、爪を噛みながらこっちを見てきた。

 子犬のような丸い瞳に俺の姿が映る。


ライ「ウチの名前は…」


モ「ライオネル! 自分のことをウチと言うのはおやめなさいと言っているでしょう!!」

ライ「ごっ、ごめんなさいお姉ちゃん! わ…(わらわ)ⅩⅠ番ラ…ライオネルと言います」


 海底の奥深くから聞こえるような声。

 後半あまり聞き取れなかった。

 というか、涙ながらに自己紹介されても…しかも妾って、どこの大奥だよ。

 こいつの姉モルドレッドは満足そうに腕を組んで頷いてるし。


「お前の数字はどこに?」

ライ「(ビクッ!) ごめんなさい。ごめんなさい。ウチみたいなゴミが生きててごめんなさい。」

 そんなにビクついて謝らなくても…俺襲ったりしないよ…多分。

「いや、別に何でもないよ。 じゃあ次」




「ハ~~悲劇だ。 ボス、もう僕死にたい」


 黒い長髪を1つに束ねた男の小人が言いました。

 皆さん、いや、読者のあなた!

 もう疲れたのではありませんか?

 俺はもう疲れました。だからこう言ってやったよ。


「そうか、頑張れ~。 んで、お前はⅩⅡ番でいいんだよな?」


 男の小人は寝不足なのか、目の下にできた深い真っ黒なクマを下に向け溜息を漏らし、そしてそのまま遠い目をした。


「頑張れ…か。 既に頑張っている人に頑張れ…か。 もう…頑張れないんだよ、ボス。 頑張っている人に頑張れって言うと、その人は…」

「めんどくさいわ! 早く名前言え!」


 小人はウンザリとした顔で左手を広げ、俺に手の平を見せた。

ユ「ⅩⅡ番ユーウェン、ハァ~悲劇的なぐらい死にたい。」


 自殺願望者ユーウェンは焼死、圧死、窒息死など死に方をブツブツと呟きながら、ひょろりとした体をゆらゆら揺らし帰っていく。

 しかし、刺殺とユーウェンが口走った時、ピタッと動きを止め、クルリとこちらに振り返った。


ユ「ボス、人間はいずれ死滅するだろう」

「何、その捨てゼリフ!?」

 ハァ~変なのばっかりだ。




「…ん? 次は?」

 俺はベッドの上で集まっている小人たちに言う。

 するとディナダンが俺の問いに答えた。


デ「ご主人! ガラハットが起きひん」 


「寝てんの!?」


 俺がベッドまで行くと、小人に囲まれた中心でシーツに包まっている男の小人がいた。

 澄み切った海のようなマリンブルーの髪が大きく寝返りをうつ。

 ガラハットは寝息をたて、起きる兆しがまったくといっていいほど無かった。

 俺は親指と人差し指でガラハットの頭を掴み、空中にかっさらう。


 そしてゆら~す

 ゆら~す

 激しくゆら~す


ガラ「ん?…ああ、どうかしましたかマスター?」

 蒼白な肌が断じて自分は「寝てない」と主張する。

「今、寝てたよね?」

「わたくしが…ですか?」

 はい。


「何かの間違いではないですか?」

 いやいやいや。


「いびきをかいてたでしょ?」

「あははっはっは。 今宵のマイマスターは面白いことを言われる」

「どこが? ねぇ、何が面白いの? ねぇ?」


「ところでわたくしに用とは、なんぞや?」

「自己紹介してただろ! やっぱり聞いてなかったんだろ!?」

「我がマスター、聞いていない=寝ていたとは短絡的かつ、単純な思考でございます。 わたくしは、聞かなくていいことは聞かない、そうしているだけでございます。」

「ご主人様の話が聞かなくていいことってどうゆうことだよ!?」


「ふっはっはっは」

 だから何がおかしい?


「ガラハットです」

 で、何がおかしかったんだ?

「番号は?」


 一瞬、ガラハットは番号?という表情をする。

 そりゃ、聞いてなかったらそうなりますよね!!

 やがて理解したのか、ガラハットは服をごそごそと脱ぎ始めた


ガラ「この神なる漆黒の穴に記されしは」

「へそだよな」

ガラ「…、まぁ俗世間ではそういう表現をされるかもしれませんね。 円卓が騎士のⅩⅢ番、ガラハット。 我がマスター、なんなりとお申し付けください」

「じゃあ、もう寝るな」


ガラ「はっはっは。 わたくしに寝るなと? ははっははっは、今宵がマスターはご冗談が好きと見える」

「いや、まじで言ってんだけど」

ガラ「はっはっはっはっは」

「……もういいです。 じゃあ、次」




「ワシはマーリンじゃ、よろしくなダンナ」


 マーリンと名乗った白髪の老人は、同様に白い立派なひげをモシャモシャと触る。

 しゃがれ声はすべてをバカにしているようにニヤけていた。


「今さらだけど、お前は他のみんなと服がまるで違うな」


 他の小人は、まぁー多少の違いがあるにしても騎士みたいな格好をしているけど、なんというか、こいつは…ローブを着ている。


マ「ワシは他とは違うのじゃ~。ワシは特別、そう、ワシは魔法使いじゃ」

 お前の風体はどう見てもエセ占い師だよ。


「まぁいいけどさ。 お前はどこにローマ数字があるんだ?」

マ「ワシ無いよ」 

「無いの!?」 

マ「無い!」

「へ~そ~なんだ、何で1人だけ?」


ト「そこなんだ」



 今まで自問自答していたクール&あんちくしょう、トリスタンが話しに割り込んできた。


「そこって、どこだ?」

ト「唐突だがご主人、円卓の騎士を知っているか?」

「本当に唐突だな…。 アーサー王物語に出てくるやつだろ?」

ト「そう。 どれくらい知ってる?」

「正直あんまり知らんぞ。アーサー王っていうのがいて、その部下が12人いるってことぐらいだ。 名前もあやふやって感じ」


ト「フム、概要は掴んでいるな。 まぁギリギリ合格と言えるだろう」

 1人うんうんと腕を組み、トリスタンは頷く。

ト「最初私たちは円卓の小人と名乗った。 そう、私たちは円卓の騎士のスピンオフだ!」


「自分からスピンオフっていうの!?」


ト「それがこの世界では1番合っている言葉だと思って選択したんだが、間違いだったか?」

「いや、当事者であるお前らがそう言うなら間違ってはいないんだろうが、不思議とお前らが召喚獣ってことでのありがたみや喜びは薄らいだな…まぁ、最初からそんな感情は皆無だから俺は構わんが」


 トリスタンは言葉の選択を間違いに首を捻っていた。

 まあ、合ってるからいいんじゃね?と俺が言うと、不満気ながらもトリスタンはおもむろにマーリンに一指し指を真っ直ぐと向ける。

ト「だから、今更だけど、何でマーリンがいるんだ?」 


「え?」


 トリスタンの疑問の提示に今まで黙っていた小人たちも、端を発して口を開き始めた。


ガ「そうだよ! 何でマーリンのジジイがいるんだよ!」 

ベデ「確かに老がここにいるのは些かおかしいですね」 

ベイ「エロジジイなんかと一緒にいたら病原菌が移んだよ! ペッ!」


「ちょっ、ちょっと待て! こいつは円卓の騎士じゃないのか? 俺、マーリンって名前を円卓の騎士で聞いたことあるぞ」


 俺がそう言うと、ベディヴィエールが俺に向かってかけているモノクルをクイッとあげた。


ベデ「主、円卓の騎士とは文字通り騎士の集まりです。 中には魔法のようなものを使うやつもいましたが、基本的には魔法使いという部類はいません。 そしてマーリンは我らが王に付き従いはしましたが一度たりとも円卓を囲んだことはありませんでしたよ」


「じゃあなんでこいついるの?」


 俺と小人たちの視線はスーとマーリンに向く。

 まる視線にマーリンは爆笑しながら答えた。


マ「ほらっ、ワシ優秀じゃから♪」


ベデ「ベイリン」

ベイ「おう」

 ベディヴィエールは条件反射のように口を開く。


マ「いたい!痛い!イタイ! コブラツイストって何でそんな技知っておるんじゃ! イターーイ、ベイリン決まっておるぞ!ギブギブ!聞こえとるか!? メーデ!メーデ!」

 マーリンがベイリンに技をかけられている間も俺たちの会話は続く。


ト「しかも、ランスロットがいない」

「ランスロット?」


 何かその名は聞いたことがある。

 あれは小説かアニメでだっけか?


ト「ランスロットとは我々の中で1番有名だろう人物だ。 そして円卓の騎士内においてリーダーの位置にいた人物。 当然そのスピンオ…円卓の騎士を反映している我ら円卓の小人も基本的には変わらない。 つまり私たちのリーダーもランスロットだ」

「じゃあそのリーダーとやらは何でいないんだ? ストか?」


 う~ん。

 トリスタンは再びそのクールな瞳を閉じ、考え込んでしまった。


ガ「おい! 用兵!」

 ガーウィンが俺のズボンの裾をグイグイと引っ張ってきた。


「何だよ?」

ガ「用兵。 俺たちの召喚、ちゃんとやったか?」

「何だ、その疑心に満ちた目は? やったわ! ちゃんと紙に書いてある通りやって、出てきたのがお前らだったからこっちはヘコんでんだよ!」

ベデ「主、その紙を見せてください」


 俺はバックに手を突っ込み、召喚の紙をベディヴィエールに手渡した。

 ベディヴィエールは自分より大きなA4用紙を器用に風に乗せ、まるでマタドールのように紙を操ってテーブルの上に乗せた。


「ワイも見せて♪」

「あ~ケイも~」

「ウチも…」

「わたくしも見ますわ」


 小人たちは砂糖に群がるアリのようにテーブルの上の紙に群がった。

 ふと、捻り潰したくなったことは秘密だ。

 すると今までずっとマーリンにプロレス技をかけていたベイリンが技を解いて立ち上がる。

 マーリンはカニのように泡を吹いていた。



ベイ「おい!ボケ主。 紙を血で真っ赤にしたのか? どうせヒヨッたとか言うんだろ!このチキン野郎が! 死にやがれ!」


 ヒヨッたか~なるほどね♪

 俺はニコニコと笑ってベイリンに近づく。


ベイ「お? や、やんのか!?」

「ハッハッハ。シネ」


 俺の日々のティッシュで包んだあれやこれ、それらが入ったゴミ箱にドーン!してやった。


「ハ~、スッキリした」

 ベイリンは汚らしいゴミ箱から顔を出してきた。

 まぁ~汚らしい。


ベイ「お前! 女に手ぇだしやがったな!」

「女? お前ら全員、2頭身で男女の違いなんてあって無いようなもんだろうが」

ベイ「なに!? オレは女だ!」

「お前は小人の中でもぺったんこのほうなんだから、男でいいだろうが!」

ベイ「なに!? もっ、もっぺん言ってみろ!」


「やーい、やーい、ぺったんこ~。悔しかったら大きくなってみろ~」


ベイ「止めろ~! ネコじゃらしでワサワサすんな~!ハッ!?そこは胸だ!止めろ~」

パ「2人とも楽しんでいるとこ悪いのだけれど…。 ベイリン、あなたの言った血の量が足らなかったというのはないと思うわよ」


 ほとんどがテーブルの紙に集まる中、わたしは興味が無いわと言い切るように窓際の小形サボテンの横で足を組んでいるパーシバル。

 ベイリンの目尻がつりあがる。


ベイ「何でだよ!?」

パ「だって、血の量が足らなかったら、わたしたちは12人いなかったはずじゃない。 ベイリンも前回こと覚えてるでしょう?」

 ベイリンは何か思うことがあるのか、悔しそうに「ああ」と口にした。



パ「それに、前回敵だったマーリンがいて、味方だったランスロットがいないなんて異常な事態だもの。 分かったらご主人さまにちゃんと謝らなきゃだめよ」


 ベイリンはゴミ箱の中で少し俯き、小さな声で「ワルかったな」と言った。

 なんかむずがゆいわ!


 その後、小人たち全員での話し合いが10分ほど執り行われた。



ト「すまないご主人。 理由が解明できなかった」

 申し訳なさそうに頭を下げるトリスタン。


「あ~別にいいよ」


 俺は漫画を読みながら言った。

 正直、ランスロットとやらに興味がまったく湧かん。

 これだけ小人たちが言うんだから強いのかもしれんが…所詮小人だも~んな~。


ベデ「主、これを読んでいただけませんか?」


 ベディヴィエールは召喚時の紙を指差す。

「なんでよ?」


ベデ「もう理由が分からないので、一度、主に読んでもらおうという意見が纏まりました」

「…俺が間違えたと?」

ベデ「いいえ主、そういうんじゃなくて。 さぁ、どうぞ」

「じゃなくて、何だよ? まぁ、いいけど。 読む前に一言だけ言っておく! お前たちの主は超~~がつくエリート様だ! 地べた這い蹲う庶民とは全てが違う、それをよ~く」

デ「ご主人、分かってるから。 読んで、読んで、早く」


 言いたいことは山ほどあるがディナダンに言われるまま、とりあえず俺は読むのだった。




 召喚の時のあの長い文章。

 再び読んでいるとその時のことを思い出す。

 読む前はどんな美人の召喚獣、いや、人だから召喚人かな?

 まぁ、なんにせよ美人吸血鬼みたいのを楽しみにしてたのに…結果は


全「「ちょっと待った!!」」


「え!?」


ト「今、ご主人なんて読んだ!?」


 今って?

 今日1日を振り返りながら読んでいたからどこのことを言っているか分からん。

「どこ?」 


モ「来たれの後ですわ!」

 今までで1番、小人たちが慌てていた。

 何で…?

 何か変な読み方したかな?


「え~と、来たれ遠巒(えんざん)より、時知らずの従者よ」


 小人たちの動きが完全に停止する。

 なぜだ?

 俺に”ザ・ワールド”は使えないはずだが?

 数人、顔が青ざめている。


ガ「今、なんとおっしゃりました?我がマスター?」

「あ~、もう一回読むのかよ? めんどくせーな、よく聞いとけよ。来たれ遠巒(えんざん)より、時知らずの」


ユ「待った! ボス、そこもっかい」

「チッ! これが最後だかんな。来たれ遠巒(えんざん)


全「「「えんざんて何!?!?」」」




ここまで閲覧ありがとうございます。


なにぶん初投稿なので勝手が分からず、読みづらかったらすいません。

小人たちが大勢出てくるので、小人たちのセリフの前に頭文字的なものを入れたのですが、、。

書き方これでよかったの…かな?

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