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第5話  それなりに

なんとか学校生活をクリア。数日経ったが、大きく変わったことはない。

それだけでカホは安堵する。


こちらの世界の常識は全く分からない。

屋敷内でも今までの生活常識がたまに出ては、侍女さんや執事を驚かせているので

毎日の学校生活は冷や冷や。


「どうですか?」

「まあ、なんとか常識は笑われながらも教えて頂いてます」

「そうですか。記憶を失くすという話は良い案だったようですね」

「あ、そのことなんだけど。私、かなり魔力があるそうです」


学校から戻り、お弁当の袋を執事に手渡しながら、カホは事のあらましを掻い摘んで説明する。

「呪文を唱えなくても、考えた言葉を言うだけで出来ると」

「そうなの。最初は何かの偶然かと思っていたけど、今日確信出来た」

「リオン様は、必ず呪文を唱えてましたね」

「え?リオンは違うの?」

「どうやら、貴女自身に魔力があるのかもしれません。魔力があったからこそ、

リオン様の召喚に反応したということも考えられますね」



執事の言葉に、カホは顰め面。魔力があっても、元の世界では使えそうにないものだ。

「カホ様、そろそろ着替えを」

「は~い」

私服に着替えるよう侍女に言われながら、部屋へ駈けて行く。

彼女の後姿が見えなくなったところで、執事は懐中時計を取り出し蓋をパチンと開け

相手の姿を確認すると

「レナン様、ご報告があります」

「どうしたんだ?リトーリ」





バサッ。

マントを取り、上着を外し裸になると、人間が一人入れる桶の中に入り

ポットの入った湯あみ用のお湯を小さな桶に入れ、タオルを浸して絞り、体を満面なく拭く。

最後にそのお湯を少しづつ体に掛けて、タオルで水分を拭き取ると

私服へ着替える。

(お風呂は、週1で、普段は温泉に入るかこの拭き取りだもの。なんだかなあ)

屋敷には、お風呂はない。

お風呂事態が家の中ということは考えられないらしい。

水分を家の中で扱うということはない。

キッチンもなるべく外の出入りが出来る近くにあり、それを食事を採る中の部屋へ運ぶくらいなのだ。


(屋敷事態が、レンガとコンクリートに似たもの、木で出来ているし、水分はカビが生えるから

難しいのかもしれないわね)


キッチンで何かおやつを頂こうと、訪ねていくと、自分のデザインした可愛らしいメイド服の侍女達がキッチン担当の給仕係達やシェフ達と交代でお茶をしているところだった。

「あ、私も何かない?」


ひょこっと顔を出すと、自分の事情を知っている侍女達と知らない給仕係とシェフ達がこちらを見る。

「あれ?リオン様。レアがお部屋へお茶をお持ちしているはずですよ」

「あ、あれ。もう食べた。お煎餅とかない?」

(洋菓子ばっかりで、ポテチとかお煎餅が恋しいな)


「「「「お煎餅?」」」」


「うん。ない?」

「リオン様。それは異国のお菓子ですか?」

「聞いたことないです」



最初は、リオン自体が我儘なお坊ちゃまだったことで、警戒されていたが

侍女さん達が、今のリオン様は変わられたと教えてくれたことで

最近は、誰とでも話せるようになっていた。


「そうなんだ。似たような材料がないもんね。あ、でも芋餅くらい出来るかな?」

「芋餅?」


(あ、でも塩はあるけど醤油はないんだよねえ。)

片栗粉に似たようなものもないが、でんぷんが豊富そうなもので代用出来ると考えたカホは

早速、シェフに掛け合い芋を分けてもらう。

「それで芋餅を?」

「そう。こっちには餅自体ないからね。この芋でそれが出来るか試してみる」


鍋に水を入れ、15個の芋をゴロゴロと入れ火にかける。

茹でて柔らかくなったことを串で芋を刺して確かめると、ザルにあげ、熱いうちに皮を剥く。

片栗粉のような芋も混ぜておいたので、一緒に鍋の中で練ると

粘り気のあるものに変わる。それをお団子サイズに丸めて厚みのある小判のように平たくする。


バターをフライパンに入れ、餅をいくつか入れ、両面を焼いて出来上がり。


「どう?」

「へえ、外側はカリッとしていて、中は柔らかいですね」

意外な作り方に、皆で試食をし、味が足りないとのことで話しは終わった。

(たぶん、醤油味があるともっと美味しいと思う。醤油の作り方までは記憶に・・・)


「あ、そういえば」


自室へ戻り、こちらの世界へ持ってきた箱を漁ると、いつか自給自足で作りたいと買っておいた

単行本サイズの本が出てきた。

「これこれ。自給自足で作る料理」

パラパラ捲ると、デザートから100種類近くのものが載っていた。

「醤油は何が必要かな」

既に頭の中は日本の料理のことで、頭がいっぱいになっていた。




その頃仕事先の城の執務室で、レナンは執事からの報告を休憩しているバーシスに話をしていた。

屋敷のことやカホのこと、毎日の様子を、普段は中々屋敷に戻れない2人へ報告がされている。


「リオンよりも魔術が優れているということか?」

「そうだな。この国に呪文も唱えずに魔術を使える人間は知らない」

「あの伝説の騎士フォルティーでも、見たことないな」

「あの規格外の男でも、呪文は唱えていたはずだ」


2人で、沈黙になると、彼らの秘書官が報告書を持ってきた。

「女性になったリオン様を追っていた者からです」

隊長であるバーシスは先に小さな紙きれを受け取り、唸った。

「どうした?」

「あのバカ(フォルティー)。あれほど、警告して手紙を送ったのに、関係を持っちまいやがった」

「・・・・・カホには言えませんね」

「まったくだ」





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