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第3話  半年間の過ごし方

泣いてもどうすることは出来ない。

カホは大きく深呼吸する。

半年をなんとか過ごす決意をする。

しかし、可愛らしい容姿で男の子の体。

(自分の体だと思えず、直視出来ないし、全てが思い出しても恥ずかしい)

初めて体を拭くことになり、体の拭き方を教えてもらった時は、自分の体に中々触れることが出来ず

お湯の入った陶器のポットと人間1人入れそうな桶を目の前にかなり悩んだものだ。

この体に慣れて、半年付き合わなくてはいけない。


「レナンさん、私は半年何をして過ごすのがいいですか?」

「そうだね。君の姿はリオンだから・・・。」

レナンは考え込み、執事と耳打ちする。

「そうですね。私は屋敷内と屋敷内で働いている者達の顔を覚えて頂くこと。

後は・・・学校は、記憶喪失ということで、過ごして頂くのは?」


「学校?」

「はい。リオン様は、大変優秀な魔術師で魔法学校では、ハイクラスです。

ですが、カホ様は魔術は何も出来ません。初歩を教えている学校へ行く手続きをしましょう」

にこやかに爽やかに執事は説明する。その違和感にカホは気付く。


「待って。もしかして、私がこのままの姿で過ごす可能性が大きくて魔術を習えと?」

カホは、たかだか半年なのに学校へ通わせて魔術を習わせようとする執事の思惑に

直感で問い詰めた。

「これは、凄い。私の先の考えを当てるとは」


執事リトーリは、見た目40代の渋くて温和なイメージの120歳のおじ様。

この世界は、カホの世界の3倍長生きの世界で、見た目で判断は出来ない。

そのおじ様がカホを見て驚いた。

「なんとなく・・・。おふたりは、私が元の体を取り戻せないと察してません?」




しばらく沈黙が続き・・・。


「ははは、実はそうなんだ。そう思っていたりするんだ」

「私も。リオン様のことですから、フォルティー様の寝所に忍び込むことくらいやっているかもしれません。そうなると、元の体に戻っても・・・その・・」

彼らの言わんとしていることが、よく分かるからこそ、カホは叫んだ。

「・・・・・私の体~。早く戻ってきて~」





どこにいるのか分からないリオンを探すよりは、待つしかないけれど。

腹立たしいリオンは、監督不行き届きだとレナンに散々お小言を言いつつ

執事に宥められていた。

レナンには、リオンの顔でお小言を言われたことがかなり笑えたと後で言われて

カホが戦いを挑みそうになった。


「元気になったところで、夕食にしましょう。侍女には手配をさせていますが、そろそろ良い頃かと」

彼は上着の内側から懐中時計を取り出し時刻を確認する。

どうやら時間は、元の世界と同じ24時間だとカホは気付いた。



食堂に招待されると、10畳ほどの洋室に長方形のテーブルと左右3客と上座に1客の椅子が並べてある。家族的な人数で食事をとる部屋だ。

並べられている食事も洋食に近い。

喜んだのもつかの間、見た目と味が違う。


(りんごだと思ってかぶりついたら、ももだったような感覚ね)

カホは見た目に騙されないようにと思いつつも、かなり頭の中を混乱させて食事を食べる。

鶏肉に見える牛肉の味にも慣れ始めた頃、執事が主の帰還を伝えた。



「ただいま~」


かなり低いバリトン声を響かせて、笑顔で大きな男が入ってきた。見るからに逞しい。

「バーシス、遅かったな。先に食事を頂いてるぞ」

「ああ、レナン。1度戻ったフォルティーとさっきまで打ち合わせをしていてな。そういえば、

解散して城を出たところで、フォルティーを待っていた美女がいたぞ。リオン、もう諦めたらどうだ?」


どうやら、リオンとカホの事情を知らないらしい。

そもそも気を失った養子のリオンが行方不明ということで、仕事を休んで屋敷に戻っていたレナンとは数日振りだった。その間は、知らせをしていなかったとレナンは説明する。


「その美女は、リオンだ。このリオンの体にいる魂の本当の持ち主」

バーシスにここ数日の話をレナンが説明すると、バーシスは顔に手を当てて大きくため息を吐いた。

「あちゃあ、あいつとうとうそこまでしてフォルティーの傍にいるのか?」

「止められそうにないか?」

「フォルティーもまんざらではなかったな」

バーシスの呟きに、カホは蒼白。


「・・・・・」


「リオンが出て行って、2日経っているからな」

男女が深い仲になっていることを2人は察した。

「悪いな、お嬢さん。養い親としては誠に申し訳ない。」

「そう言うなら、居場所が分かりそうなら、捕まえてよ」

(私の体を使って、勝手に恋愛してるってことよね。酷い話よ)


「リオンは、甘やかせて育ててしまって、私達も止められないんだよ」

「親として情けなくだな・・」

レナンが言葉を付け加えて、肩を落とす。

「もう、親なのに~」

「すまない。ここでの生活は快適に出来るよう、協力する」

バーシスが頭を下げるので、カホは執事が渡してくれた紅茶に近い飲み物が入ったカップを受け取り

黙って飲んで落ち着きを取り戻した。

わざと気を紛らわせてくれた執事に感謝しつつも、腸煮えたぎる思いだ。



その後快適に過ごす為、侍女達から余った布や端切れを貰い

気分転換に趣味と実益を重ねたことをすることにした。

一緒にこちらの世界に持ってきた箱から、道具を出すと

カホは自分の天職である服作りに没頭することにした。

元々リオンの部屋に案内されたカホは

「ほとんど全部道具は揃っているから良かった。手の力で使う小型ミシン最高。

電気がない世界だから、これは重宝ものね」

いろいろ複雑な気持ちはあるものの、現実逃避の為に生地を鋏でジャキジャキ切り始めた。


その様子を執事と侍女は眺めつつ部屋の扉を閉める。

「不思議ですね。リオン様が女の子に見えます」

「そうだね。あの容姿で男の子だというのが不思議でしたが、裁縫をしている姿が違和感ないですね」

「見た目とすることがようやく合ったというところでしょうか?」

「リオン様本人には、聞かせられませんね」







学校は、今は休暇期間(現代でいうところの夏休み)ということで、執事が転校手続きをしている。

新学期が始まれば、初等教育の学校へ移るらしい。

数日暇だと聞いて、カホはますます服飾作りに没頭。


可愛らしいメイド服を完成させると、その出来栄えに侍女達が感動し

執事に今使用のものと変更するよう訴えたことは、レナンとバーシスに衝撃を与えた。





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