7-8
「こ、こんなん……こんなん、Gランクが勝てる相手やない……!」
まふゆの悲鳴に近い呟きが、激しい戦闘音の合間に虚しく響く。
彼女の言う通りだった。紫の魔力に染まったゴーレムは、もはや試験用の魔導兵器などではない。
その圧倒的な破壊力と異常な耐久性は、最高ランクであるSランクの冒険者ですら苦戦を強いられるレベルに達している。
Gランクの新入生たちにとっては、ただただ死を意味する存在だ。
その絶望的な状況を、三人の男たちがそれぞれのやり方で覆そうと必死に抗っていた。
「まふゆッ!俺から離れるな!絶対に後ろに下がってろ!」
吹き飛ばされた衝撃で口の端から血を流しながらも、レオンハルトは即座に立ち上がり、まふゆの前に立ちはだかる。
まるで彼女を守る盾になるかのように、その広い背中がゴーレムを睨みつけた。
「ただの石人形が……調子に乗るなァッ!」
彼は咆哮し、再びゴーレムへと斬りかかる。
その剣筋は先ほどよりも荒々しく、しかし一撃一撃に「まふゆを守る」という揺るぎない意志が込められていた。
「くっ……!まだ結界は解けないのか!?」
セリウスは氷の魔術を連続で放ち、ゴーレムの注意を引こうと奮闘する。
だが、強化された魔力耐性を持つ巨体には、牽制以上の効果が見込めない。彼の視線が、恐怖に顔を強張らせるまふゆに向けられる。
(だめだ……彼女を怖がらせちゃいけない……!僕が、僕がなんとかしないと!)
焦りが彼の冷静さを奪いかける。だが、守るべき存在がすぐ後ろにいるという事実が、逆に彼を踏みとどまらせていた。
その中で、ミカゲだけは無言だった。
彼は一度距離を取り、冷徹なまでに戦況を観察する。そして、最も効率的にこの状況を打破する方法を思考していた。
(……核だ。あの紫の光を発している胸の魔力水晶。あれを破壊すれば、動きは止まる)
しかし、それはゴーレムの最も強固な正面に位置している。レオンハルトですら近づけないあの位置に、どうやって攻撃を届かせるか。
彼の視線が、後方で震えながらも懸命に立っているまふゆに移る。彼女の内に秘められた、規格外の力。
(……こいつの力が必要だ)
ミカゲは静かに決断を下す。それは、彼らの常識を、そして彼自身の存在をも賭ける、危険な賭けだった。
彼は、まふゆの足元の影から、音もなく姿を現した。
「まふゆ」
低く、しかし切迫した声が、彼女の名を呼んだ。驚いて振り返るまふゆの菫色の瞳を、ミカゲの真剣な黒い瞳がまっすぐに射抜く。
「俺に、もう一度あんたの力をかけろ。今度は、もっと強く」




