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すると突然、それまで鈍重だったゴーレムの動きが止まった。
そして、その魔力水晶でできた両の目が、禍々しい紫色にぎらりと光を放つ。
「────ッ!」
その紫色の光を見た瞬間、まふゆの背筋をぞわりと冷たいものが走った。
(この光……まさか……!)
忘れもしない。つい先日、学園を恐怖に陥れた魔物侵入事件。
あの時、狂暴化した魔物たちの目と同じ不吉な紫色。
あれは、単なるゴーレムの機能ではない。何者かによる外部からの干渉……悪意ある魔術の兆候。
まふゆの全身が強張る。その緊張は、後方にいる彼女からでも、前線で戦う三人に即座に伝わった。
「どうした、まふゆッ!?」
いち早くゴーレムの異常を察知したレオンハルトが叫ぶ。強化された大剣でゴーレムの腕を弾き返しながら、その紫色の目に警戒を強めた。
「この魔力の質……試験用のゴーレムじゃないのか!?」
「この感じ……間違いない、あの時の魔物たちと同じだ!」
セリウスは顔を青ざめさせながらも、杖を構え直す。彼の優れた魔力探知能力が、ゴーレムから発せられる邪悪なオーラを明確に捉えていた。
「ガレオス先生!試験を中止してください!このゴーレムは危険です!」
彼は試験官に向かって叫ぶ。
「そうしたいのは山々だが……!!この野郎、結界を張りやがった!これ以上近づけねえ!!」
ゴーレムによる紫色の結界が張られ、ガレオスたち教師陣も近づけないでいるようだ。
「グルォォォオオオオオオッ!!!」
紫色の光が一層強く輝いた瞬間、ゴーレムの動きが劇的に変化した。
先ほどまでの重々しい動作が嘘のように、俊敏かつ獣じみた凶暴さでレオンハルトに殴りかかる。
ドゴォォンッ!!
レオンハルトは咄嗟に大剣でガードするが、先ほどとは比較にならない衝撃に数メートルも吹き飛ばされた。まふゆがかけた防護魔法が、派手な音を立てて砕け散る。
「……チッ」
ミカゲが影の中から飛び出し、体勢を崩したゴーレムの背後から首の関節を狙う。
しかし、紫色の魔力に覆われたゴーレムの装甲は異常な硬度を誇り、彼の短剣が甲高い音を立てて弾かれた。
「何だこれは……硬すぎる……!」
ミカゲの眉間に、初めて焦りの色が浮かぶ。
「こっちは何とか結界を解除する!お前らはそれまで耐えろ!!」
結界の外からガレオスが叫ぶ。結界を解除できるエルフ族の教師陣が集まり結界を解こうとするが、時間がかかりそうだ。
────これはもう試験ではない。実践だ。
三人の男たちは瞬時に状況を理解し、表情を引き締めていた。彼らの視線が、後方で息をのむまふゆに向けられる。
彼女は守らなければならない。何があっても。
彼らの決意が、紫色の殺意と正面からぶつかり合う。訓練場は、再び戦場へと姿を変えた。




