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訓練場にはすでに多くの生徒が集まり、担当教官が来るのを待っていた。
教官は筋骨隆々とした熊族の獣人の男性で、その大きな声は訓練場全体によく響いた。
「よし、新入生ども!俺が戦闘基礎学を担当するガレオスだ!ここでは種族もクソも関係ねぇ!強ぇ奴が上だ!だが、今は基礎を学ぶ時間だ!まずは各種族の特性を活かした基本的な立ち回りを覚えてもらう!」
ガレオスの指導のもと、生徒たちはそれぞれの種族や得意分野に分かれて訓練を始めることになった。
人間やドワーフは剣や斧を手にし、ダークエルフは魔術と剣技を組み合わせた動きの確認、獣人たちは持ち前の身体能力を活かした俊敏な動きの訓練を始める。
「さて、と。俺は剣の素振りでもしてくるか」
レオンハルトは壁にかかっていた訓練用の剣を手に取り、軽く振るう。
「まふゆ、君は……」
セリウスがまふゆの方を向く。
「君は白魔術の訓練になるはずだ。治癒術や支援術は、タイミングが重要だからね。……無理はするなよ」
「……う、うん……」
まふゆは不安そうに返事をする。
その時、教官であるガレオスの声が響いた。
「エルフ族!お前らは魔術訓練だ!こっちへ来い!」
ガレオスに呼ばれ、まふゆとセリウス、そして他のエルフ族の生徒たちが訓練場の一角に集まる。そこには的や訓練用の人形が設置されていた。
「白魔術師は負傷者の治癒や仲間の能力向上、黒魔術師は敵への攻撃が基本だ!まずは己の魔力をコントロールする訓練から始める!そこに並んでる的に向かって、一番得意な魔術を放ってみろ!威力や効果は問わん!まずは自分の魔力を形にしてみろ!」
ガレオスの指示で、生徒たちが一人ずつ的の前に立つ。
黒魔術を使うエルフが炎の矢を放ったり、ダークエルフが闇の弾丸を撃ち込んだりする中、まふゆの番がやってきた。
(う、うちの番……)
まふゆは恐る恐る的の前に立つ。攻撃魔術は使えない。自分にできるのは、治癒や支援の術だけ。
(ど、どうしよう……黒魔術なんて使えへんし……ええい!)
まふゆは両手を的に向かってかざし、意識を集中させる。
ふわり、と柔らかな光が手のひらから溢れ出し、的を包み込んだ。
それは、傷を癒し、力を与える支援魔術『ヒールライト』。もちろん、ただの的に何の変化もない。
「……」
訓練場が、一瞬だけ静かになった。
攻撃魔術が飛び交う中で、まふゆの放った穏やかな光はあまりにも異質だった。




