5-11
ユキロンの甘い余韻に浸りながら和やかに談笑していると、街の鐘楼が重々しい鐘の音を響かせ始めた。
それは、王立特異能力者統合学園の寮の門限が近いことを知らせる合図だった。
「おっと、もうこんな時間か」
レオンハルトが空を見上げて、名残惜しそうに言う。オレンジ色だった空はすでに深い藍色に染まり始め、一番星が瞬き始めていた。
「ほんとだー。そろそろ帰らないとだねー」
リリアが残念そうに唇を尖らせる。
(もう、終わりなんや……)
まふゆは、胸にぽっかりと穴が開いたような寂しさを感じた。
楽しければ楽しいほど、終わりの時間は寂しいものだ。
でも、その寂しさと同じくらい、胸の中は温かいもので満たされていた。
初めてみんなで出かけた街。たくさんの武器が並ぶ武具店。みんなで食べた肉串とクレープ。
そして、とろけるように甘かったユキロン。
一つ一つの思い出が、きらきらと輝く宝物のように心の中に積もっていく。
明日は日曜でお休み。
みんなに会えないのは少し寂しいけれど、今日の思い出があれば、きっと乗り越えられる。
むしろ、月曜日にまたみんなと会えるのが、今からとても楽しみだった。
「……そろそろ、帰ろか。今日は、ほんまにありがとう。めっちゃ楽しかったです!」
まふゆは寂しさを振り払うように、満面の笑みでみんなを見渡した。心からの感謝を込めて、深々と頭を下げる。
この気持ちを、どう伝えたらいいのかわからない。ただ、ありがとうという言葉しか見つからなかった。
「ああ。俺も楽しかったぜ、まふゆ。また行こうな」
「今度は、もっと遠くまで足を延ばしてみるのもいいかもしれないね」
「今度はあたしがオススメの店、教えてあげてもいいわよ」
「あーしも!可愛い服屋さん、いっぱい知ってるしー!」
みんな、次の約束を口にしてくれる。
ミカゲは黙ったままだったが、その静かな視線が、確かにまふゆに向けられているのがわかった。
その視線だけで、彼も同じように感じてくれているのだと、なぜか信じることができた。
(うち、幸せやなぁ……)
この学園に来て、記憶もなくて、不安なことばかりだったけれど。
今は、こんなにも素敵な仲間たちに囲まれている。
込み上げてくる温かい感情に、また少しだけ泣きそうになりながら、まふゆはみんなと一緒に、灯りが灯り始めた寮への道を歩き始めた。
第五話・了




