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シャノンとリリアのおかげで、少し重くなった財布を握りしめ、まふゆは意気揚々と菓専門店のカウンターへと向かった。
ショーケースの中で、雪のように白く輝くユキロンを指さす。
「こ、これを一つ、ください!」
店員にこやかに包まれた箱を受け取ると、まふゆはみんなが待つ場所へ小走りに戻った。
その顔は、先ほどまでの泣きそうな表情が嘘のように、ぱあっと明るく輝いている。
「お待たせしました!」
「お、買えたか!」
レオンハルトが嬉しそうに声をかける。
まふゆは近くのベンチに腰を下ろすと、まるで宝箱を開けるかのように、そっとリボンを解いた。
箱の中には、真っ白でふわふわとしたユキロンが六つ、綺麗に並んでいる。ほんのりと甘いミルクの香りが、ふわりと鼻先をくすぐった。
「わぁ……!」
まふゆが感嘆の声を漏らすと、リリアも「すごーい、本物だー!」と目をきらきらさせている。
「みんな、ほんまにおおきに……!」
まふゆは改めて深々と頭を下げた。見れば、レオンハルトもセリウスも、そしてミカゲまでもが、穏やかな表情でこちらを見ている。
「いいから、早く食べなさいよ。楽しみだったんでしょ?」
シャノンが、少し照れくさそうに促す。
「うん!あっ、よかったらみんな一つずつ、どうぞ!」
「いいのー?まふゆんが食べたかったんじゃ……」
「ええの!みんながおらんかったらそもそも買えへんかったんやから」
まふゆは箱をみんなの中心に差し出した。
それぞれが一つずつ、雪の塊のようなお菓子を摘まんでいく。
最後に残った一つを、まふゆもそっと指先でつまんだ。マシュマロよりも柔らかく、淡雪のように繊細な感触だ。
(これが、ユキロン……)
ごくりと唾を飲み込み、まふゆは意を決してそれを口に運んだ。
その瞬間、信じられない感覚が口内を襲う。
もちっとした弾力を想像していたのに、舌に乗せた途端、しゅわしゅわと音を立てるかのように儚く溶けていく。
まるで、甘いミルク味の雲を食べているかのようだ。後には、濃厚で優しいミルクの風味だけがふんわりと残る。
「……おいひ……!」
あまりの美味しさに、言葉にならない声が漏れた。頬が自然と緩み、幸せなため息が出る。
「……ほんとだ、口に入れた瞬間なくなるね……!美味しい!」
セリウスが驚いたように目を見開く。
「こりゃすげえな!人気なのも頷ける!」
レオンハルトも満足げに頷いた。
「ん〜!しあわせ〜!」
リリアは両手で頬を押さえ、うっとりとしている。
「……んん、悪くないわね」
シャノンも、普段のクールな表情はどこへやら、目を細めてその味を堪能しているようだった。
ふと、まふゆはミカゲの方を見た。彼は無言でユキロンを口に運び、そして、わずかに目を見開いている。
「……ミカゲさん、どうですか?」
おそるおそる尋ねると、ミカゲはゆっくりとこちらを向いた。
「……クレープより、甘い」
ぽつりと呟かれたその言葉は、彼なりの最大限の感想なのだろう。
その表情が、ほんの少しだけ和らいだように見えて、まふゆの胸はきゅっと温かくなった。
夕暮れの空の下、六人で囲む甘いお菓子。
今日の楽しかった一日の締めくくりに、これ以上ないほどふさわしい、優しくて、とろけるように甘い時間だった。




