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「んーっ♡どれも美味しいわあ……!」
まふゆは、右手には香ばしい匂いを立てる大きな肉串、左手には甘いソースがかかったフルーツクレープを持ち、幸せそうに頬を緩ませていた。
レオンハルトの提案で始まった食べ歩きは、まふゆにとって夢のような時間だった。
大通りには美味しそうなものを売る露店がずらりと並び、まるでお祭りのようだ。
レオンハルトに勧められたスパイスの効いた肉串にかじりつき、リリアと一緒に買った甘酸っぱいベリーが乗ったクレープを頬張る。
どれもこれも、初めて食べる味で、格別の美味しさだった。
「ははっ、まふゆは本当に美味そうに食べるな。見てるこっちまで腹が減ってくる」
レオンハルトが、自分も同じ肉串を豪快に食べながら笑う。
「ふふ、でも、買い食いなんて少し行儀が悪いかなって思ってたけど……楽しいものなんだね」
セリウスも、普段の彼からは想像もつかないが、小さな焼き菓子を片手に微笑んでいる。
「でっしょー?街歩きはこうでなくっちゃ!あ、まふゆん、そっちのクレープ一口ちょーだい!あ、あそこの焼き魚も美味しそー!」
「ちょっと落ち着きなさいよ、もう……。確かにこのクレープは美味しいけど……」
リリアとシャノンも、すっかり買い食いの魅力に取り憑かれているようだ。
まふゆは、仲間たちと賑やかに笑い合いながら、ふと自分の少し後ろを歩くミカゲに目を向けた。
彼は何も食べておらず、ただ静かに皆の様子を眺めている。その姿は、まるで群れから少しだけ距離を置く黒豹のようだ。
(ミカゲさんは、何も食べへんのかな……?)
美味しいものは、みんなで分かち合うともっと美味しくなる。
そう思ったまふゆは、食べかけで申し訳ないと思いつつも、自分が持っていたクレープをミカゲの前にそっと差し出した。
「あの、ミカゲさん。これ、ベリーがいっぱいで美味しいんやけど、よかったら……」
ミカゲは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの無表情に戻る。
彼はまふゆが差し出したクレープと、まふゆの顔を交互に見て、少しだけ逡巡するような素振りを見せた。
そして、ほんのわずかに屈むと、まふゆが持っているクレープの端を、小さな口でぱくりと食べた。
「……甘いな」
ぽつりと呟かれた感想。その声は、いつもより少しだけ柔らかく聞こえた。
「!?」
思いがけない行動に、今度はまふゆが固まる番だった。
まさか直接食べてくれるとは思わず、顔にカッと熱が集まる。心臓が、肉串を焼く炭火よりも熱く、激しく音を立て始めた。
「なっ……!ミカゲ、お前っ……!」
「抜け駆けはずるいんじゃないかい!?」
レオンハルトとセリウスが、信じられないものを見たという顔で声を上げる。
「え?なに?今のなにー!?」
「……やるわね、アイツ」
リリアとシャノンも、興味津々の目を向けてくる。
仲間たちの視線が一斉に集まる中、まふゆは真っ赤になったまま、ミカゲに食べられたクレープの先を見つめることしかできなかった。
甘いクレープの味が、なんだかもうわからなくなってしまっていた。




