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やがて、思い思いの場所に散っていた仲間たちが、一人、また一人と店の入り口に戻ってきた。
それぞれの顔には、新しい武具や道具を手に入れた満足感が浮かんでいる。
「ようし、全員揃ったな。どうだ、いい物は見つかったか?」
レオンハルトが、手にした鞘付きの長剣を軽く揺らしながら尋ねる。今までの大剣よりは少し細身だが、より鋭く、洗練された印象だ。
「僕も、魔術の伝導率がいい新しい杖を手に入れたよ。これで詠唱が少し早くなるはずだ」
セリウスも、銀の装飾が施された美しい杖を嬉しそうに眺めている。
「あーしはコレ!状態異常を治す薬の調合セット!これでまふゆんのサポートもバッチリだよ!」
リリアは、様々な薬草や瓶が詰まったポーチを胸の前に掲げてみせた。
「あたしはこれよ。新しいダガー。前のより軽くて、バランスもいいわ」
シャノンは、腰に差した二振りの新しい短剣の柄を、確かめるようにトンと叩く。
皆が次々と戦利品を披露していく中、ミカゲは相変わらず何も持っていなかった。
彼はただ静かに壁に寄りかかっているだけだ。彼ほどの腕になると、下手に新しい武器を持つより、使い慣れたものの方が良いのかもしれない。
「まふゆは何を買ったんだ?」
レオンハルトの視線が、まふゆに向けられる。皆の注目が、彼女が小さな革袋を握りしめている手に集まった。
「あ、うちは……これです」
まふゆは少し照れながら、買ってもらったばかりの煙玉を見せた。
皆が買った立派な武器や道具と比べると、あまりにも地味で頼りなく見える。
「煙玉……?なんでまた、そんなものを?」
シャノンが不思議そうに眉をひそめる。
「その……うち、直接攻撃したり出来ひんから……。でも、これがあれば、いざという時に煙でみんなを隠したり、敵の目をごまかして逃げる時間を作ったりできるかなって……。みんなを守る、お手伝いができるかなって、思ったん、やけど……」
しどろもどろになりながらも、まふゆは一生懸命に説明した。
自分の非力さを補い、仲間を助けるための、自分なりの選択。
その言葉を聞いて、仲間たちは一瞬顔を見合わせた後、ふっと表情を和らげた。
「……なるほどな。確かに、それは俺たちにはない発想だ。いい選択じゃないか」
レオンハルトが、感心したように力強く頷く。
「そうだね。攻撃だけが戦いじゃない。君らしい、素晴らしい選択だと思うよ、まふゆ」
セリウスも、優しい微笑みを浮かべた。
「……悪くない」
ミカゲが、ぽつりと呟く。短い言葉だったが、その響きには確かな肯定の色が込められていた。
仲間たちからの温かい言葉に、まふゆの胸はじんわりと熱くなる。
自分の選択が認められたことが、何よりも嬉しかった。
「よし!腹も減ったし、昼飯にしようぜ!さっきまふゆが食いたそうに見てた食べ歩きでもするか!」
レオンハルトが、明るい声で提案する。
「えっ、ええんですか!?」
「当たり前だろ!買い物に付き合ったんだから、今度はこっちが付き合う番だ!」
その言葉に、まふゆの顔がぱっと輝いた。
一行は活気あふれる大通りへと再び繰り出す。
先ほどまでの武具店の緊張感とは打って変わって、これからは楽しい食べ歩きの時間だ。
まふゆの足取りは、来た時よりもずっと軽く、弾んでいた。




