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大通りをしばらく歩くと、ひときわ大きな建物が目に入ってきた。
入り口には巨大な斧と盾の看板が掲げられており、ここが目的の武具店であることを示している。
店の中からは、カンカンと金属を打つ音や、武具を吟味する客たちの声が聞こえてきていた。
「着いたな。『ドワーフの金床亭』だ。ここの親父は腕がいいらしいぞ」
レオンハルトが満足げに言い、一行は店の中へと足を踏み入れた。
店内は、壁一面に剣や槍、鎧が所狭しと並べられ、ショーケースの中には魔法の力が込められたアクセサリーがきらびやかに輝いている。
圧倒的な品揃えに、まふゆは思わず息を呑んだ。
「す、すごい……これ、全部武器なんや……」
まふゆにとって、これほど多くの武器を一度に目にするのは初めての経験だった。
どの武器もずっしりと重く、鋭い輝きを放っており、人を傷つけるための道具なのだという実感がひしひと伝わってくる。
「おいおい、まふゆ。そんな怖がるなよ。こいつらは、いざという時に俺たちを守ってくれる相棒だ」
レオンハルトが、壁にかかった大剣を手に取りながら笑う。
「それに、昇級試験ではこういう店で売っているようなポーションや解毒薬も必要になる。君は支援が専門なんだから、そういう道具の知識も深めておくといい」
セリウスが、隣の棚に並んだ色とりどりの小瓶を指差しながら、優しく助言してくれた。
「は、はい!勉強します!」
二人の言葉に、まふゆはこくりと頷く。
「よし、それじゃあ各自、必要なものを見て回ろう。買い物が終わったら、店の前で集合だ」
レオンハルトの言葉を合図に、皆は思い思いの方向へと散らばっていった。
レオンハルトとセリウスは剣のコーナーへ、シャノンは身軽な者向けの短剣や爪のコーナーへ、リリアは薬の素材や錬金術の道具が並ぶ棚へと向かう。
ミカゲは特に何かを探すでもなく、店内の柱に背を預けて静かに立っている。彼の視線は、一人になったまふゆの方を向いていた。まるで、何かあればすぐに対応できるように。
(うちも、何か探さな……)
まふゆは、支援職として自分に何ができるか、何が必要かを考えながら、店の中をゆっくりと歩き始めた。
防御力を上げるローブ、詠唱時間を短縮する魔導書、仲間の状態異常を治すための薬草……。見るものすべてが珍しく、そして高価で、なかなか一つに絞ることができない。
(うーん、どれもこれも必要そうやけど……お小遣いには限りがあるし……)
まふゆが小瓶の並ぶ棚の前でうんうんと唸っていると、ふと、ある商品に目が留まった。
それは、手のひらサイズの小さな革袋だった。袋には「煙玉」と書かれた札が付いている。
「煙玉……?」
手に取って説明書きを読むと、「地面に叩きつけると煙を発生させ、敵の視界を奪う」とあった。直接的な攻撃力も治癒能力もない、ただの目くらましだ。
けれど、まふゆの頭には、先日の戦闘訓練の光景が浮かんでいた。
ホブゴブリンに襲われた時、もしあの場でみんなの動きを隠すことができたら。あるいは、危険な場所から逃げる時に、追手の目をくらませることができたら。
(これがあれば……みんなを守るための、時間稼ぎができるかもしれへん……!)
攻撃はできない自分だけど、これなら使えるかもしれない。
まふゆは、その小さな煙玉をぎゅっと握りしめた。値段も、お小遣いで買える範囲だ。
「これ、ください」
まふゆは、近くにいたドワーフの店員に声をかけ、初めて自分の意思で、自分のための「武器」を手に入れたのだった。




