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「……こ、口実!?」
思わず、まふゆの声が裏返った。
レオンハルトの屈託のない言葉は、真っ直ぐにまふゆの心に突き刺さり、顔にぶわっと熱が集まるのを感じる。
口実。その言葉の意味を考えただけで、心臓がとくんと大きく跳ねた。
「なっ……!兄さん、君って人は……!」
隣のセリウスが、呆れたように、しかしどこか羨ましそうに兄を睨む。
「ははっ、悪い。だが、事実だからな」
レオンハルトは悪びれもせず豪快に笑う。その配慮は嬉しいけれど、あまりにもストレートな物言いに、まふゆはどう反応していいかわからず、俯いてしまう。
「もうっ、レオンハルト様、デリカシーなさすぎー!まふゆんが困ってるじゃん!」
リリアがぷんすかと頬を膨らませる。
「ふん。まあ、あたしも暇だし?街で新しい爪研ぎでも探そうと思ってたところだし?付き合ってやらなくもないわよ」
シャノンはそっぽを向きながら言うが、その口元は少し緩んでいる。
「……行く」
それまで黙っていたミカゲが、短く、しかしはっきりと呟いた。その視線は、赤くなったままのまふゆに静かに注がれている。
「決まりだな!それじゃあ明日の朝、10時に正門前集合でどうだ?」
レオンハルトがパンと手を打って、場を仕切る。
「賛成だよ」
「あーしもオッケー!」
「……別にいいけど」
「……ああ」
次々と同意の声が上がる中、まふゆだけがまだ俯いたまま、もじもじとしていた。
明日、みんなと街へ行く。
嬉しい。すごく、嬉しい。でも、自分のためにみんなを付き合わせてしまうのが、少しだけ申し訳ないような気もする。
そんなまふゆの気持ちを察したのか、セリウスが優しく声をかけた。
「まふゆ?君も、いいだろう?」
「……は、はい!うちも、行きたい、です……!よろしくお願いします!」
まふゆは勢いよく顔を上げて、そう答えた。
まだ頬は熱いけれど、それ以上に、明日への期待で胸がいっぱいになっていた。




