3-15
結局、イースターイベントの優勝ペアは、金の卵こそ見つけられなかったものの、銀の卵を二つと他の卵を大量に見つけたC組のペアだった。
教室に戻ったまふゆとミカゲは、レオンハルトたちからの質問を「途中で体調が悪くなって休んでいた」と曖昧に誤魔化すしかなかった。
エドウィンのこと、白檻会のこと、そして魔導機の真実。あまりにも衝撃的な内容は、どこまで話していいのか判断がつかなかったからだ。
ミカゲは何も語らず、ただまふゆの言葉を肯定も否定もせずに聞いていた。その沈黙が、今は何よりも心強かった。
放課後、A組の教室。
今日の全ての授業が終わり、生徒たちが帰り支度を始める喧騒の中、まふゆはじっと自分の席で動けずにいた。
「まふゆん、大丈夫ー?」
ひょっこりと教室の入り口から顔を出したのは、B組のリリアだった。彼女は心配そうな顔でまふゆの席までやってくると、その隣に屈み込んで顔を覗き込んできた。
「顔色、すっごく悪いよぉ?イベントの途中からいなくなっちゃったし、レオンハルト様も心配してたし……」
「リリアさん……ごめんなさい、心配かけて……」
「ううん、それはいいんだけど……。本当は、何かあったんじゃない?」
キラキラした赤い瞳が、まっすぐにまふゆを見つめる。嘘をつけない。でも、本当のことも言えない。
まふゆが言葉に詰まっていると、不意に大きな影が差した。
「まふゆ、帰るぞ」
帰り支度を終えたレオンハルトが、鞄を肩にかけて立っていた。
「顔色が悪い。寮まで送っていこう」
「レオンハルトさん……」
「そうだね。今日はもう休んだ方がいい。僕も一緒に行くよ」
隣の席で静かに様子を窺っていたセリウスも、優しく声をかけてくれる。
そして、まふゆの後ろの席で、ミカゲが静かに立ち上がった。彼は何も言わない。だが、その存在そのものが「俺も行く」と告げているようだった。
「ちょ、ちょっとぉ!あーしも心配してるんですけどぉ!?」
仲間外れにされたと思ったのか、リリアが頬を膨らませる。その様子に、張り詰めていた空気が少しだけ和んだ。
「……みんな、おおきに」
仲間たちの優しさが、恐怖で冷え切った心にじんわりと沁みていく。エドウィンのことは恐ろしい。でも、自分は一人じゃない。
「うち、大丈夫やから。一人で帰れる」
これ以上、みんなを巻き込むわけにはいかない。そう思って無理に笑顔を作ると、レオンハルトがぐっと眉を寄せた。
「駄目だ。大丈夫な奴がそんな顔をするか。いいから、俺たちに任せろ」
「兄さんの言う通りだよ。君は少し、人を頼ることを覚えた方がいい」
セリウスも穏やかだが、有無を言わせない口調で諭す。
シャノンも、いつの間にかそばに来ていて、腕を組んでフンと鼻を鳴らした。
「あんたがフラフラ歩いてて転んだりしたら、見てるこっちの気分が悪いからね。さっさと行くわよ」
有無を言わさぬ仲間たちの気遣いに、まふゆはもう抵抗できなかった。
こらえていた涙が、またじわりと滲む。
「……あり、がと……」
その小さな感謝の言葉は、教室の喧騒にかき消されそうになりながらも、確かに彼らの耳に届いていた。
こうして、まふゆは四人の騎士(と、一人の友達)に守られるように、女子寮への帰路につくことになったのだった。
第三話・了




