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静寂が支配する霊廟の前で、ミカゲが発した不穏な言葉がまふゆの心に重くのしかかる。
質の良くない魔力の気配。金の卵。そして、閉ざされた鉄の扉。
一体、この奥で何が起きているのだろうか。まふゆが不安に震える唇をきゅっと結んだ、その時だった。
カツン、と霊廟の入口から硬質な靴音が響いた。一人ではない、複数の足音。
それはゆっくりと、しかし確かな意思を持ってこちらに近づいてくる。
ミカゲが即座に反応した。
音もなくまふゆの前に滑るように立つと、その広い背中ですっぽりと彼女を隠す。その手にはいつの間にか、闇から溶け出したかのような黒い短剣が握られていた。
彼の全身から放たれる殺気は、これまでとは比べ物にならないほど鋭く、冷たい。背中越しに伝わってくるその気配に、まふゆは息を呑んだ。
(ミカゲさん……?)
ただ事ではない。彼の本能が、最大の警戒を告げている。
やがて、夕暮れの淡い光を背に、入口に三人の人影が現れた。
中央に立つのは、柔和な笑みを浮かべた担任教師、エドウィン・ヴォルクシュタイン。金色の髪が夕日にきらめき、その姿はいつも通り穏やかに見える。
そしてその両脇には、屈強な体格の男たちが控えていた。学園の警備兵の制服を着ているが、その目つきや佇まいは、ただの警備兵が持つそれではない。
まるで獲物を前にした獣のような、獰猛な光を宿している。
「やあ、まふゆ君にミカゲ君。こんな所で奇遇だね。君たちも卵探しかな?」
エドウィンは、ミカゲの殺気にも全く動じることなく、にこやかに話しかけてくる。
その普段と変わらない態度が、逆に不気味さを際立たせていた。
「エドウィン……先生……?」
まふゆはミカゲの背後から、おそるおそる声をかけた。
どうして先生がここに?そして、この物々しい雰囲気は一体……?
疑問が頭の中を駆け巡る。
ミカゲは短剣を構えたまま、低い声で応じた。
「……用があるなら俺が聞く。こいつに近づくな」
地を這うような低い声で、ミカゲが明確な敵意を返した。
その一言で、霊廟の中の空気は完全に凍りつき、一触即発の緊張が場を支配する。背中越しに伝わる彼の殺気に、まふゆの体はびくりと震えた。
エドウィンは、短剣を構えたままのミカゲと、その背後に隠れるまふゆの姿を面白そうに眺め、ゆっくりと片手を上げた。
「おや、反抗的だね。だが……残念ながら、君に進行する権利はないんだよ、ミカゲ君」
彼が指を鳴らした、その瞬間。
ぞわっ、と肌が粟立つような感覚と共に、霊廟の天井や壁の影から、ぞろぞろと黒いローブを纏った者たちが姿を現した。その数は十人以上。全員が、禍々しい紫色の光を放つ機械を腕や肩に装着し、その銃口のようなものをこちらに向けている。
完全に、包囲されていた。
逃げ場はどこにもない。
「……魔導機、か」
ミカゲが忌々しげに呟く。その言葉に、まふゆははっと息を呑んだ。
「魔導機……?」
授業で習ったばかりの知識が、頭の中で鮮明に蘇る。
魔導機。
本来、エルフ以外の種族は魔術を使うことが出来ないが、これを装備すると誰でも魔術が使えるようになるという、夢のような機械。
学園でも、人間族の生徒や教師が使っているのを何度か見かけた。エドウィンも、人間だから魔導機を使っていると、そう思っていた。




