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ミカゲの卓越した気配察知能力は、この卵探しゲームにおいて絶大な効果を発揮した。
並木道での一件の後も、彼はまるで答えを知っているかのように、次々と卵の隠し場所を指し示していく。
「……そこの噴水の裏」
「はいっ!」
「……温室の、一番大きな花の根元だ」
「ありました!今度は赤色です!」
「……時計塔の三階、窓枠の外」
「と、届きました……!」
ミカゲは決して派手に動き回らない。
ただ静かに立ち止まり、目を閉じて意識を集中させるだけ。
そして、ローゼリアが残した微かな魔力の痕跡を辿り、最短距離で次の目標を特定していく。
まふゆは彼の指示に従って卵を回収し、用意された小さな籠の中へそっと入れていくのが役目だった。
最初は緊張でぎこちなかった動きも、次第に慣れてきて、二人の間には阿吽の呼吸のようなものが生まれつつあった。
赤、青、黄色、緑……。籠の中は、あっという間に色とりどりの聖卵で満たされていく。
(すごい……ミカゲさんとおったら、もう全部見つけられそう……)
他のペアが必死に駆けずり回っているのを横目に、まふゆは感心と驚きで胸をいっぱいにしながら、ミカゲの後ろをついて歩いた。
……どれくらいの時間が経っただろうか。
学園の主要な施設をほとんど回り終えた頃、ミカゲの足は敷地の北西の端、普段はあまり生徒が寄り付かない静かな場所へと向かっていた。
そこは、鬱蒼とした木々に囲まれた、古びた石造りの建物が佇む場所だった。建物の荘厳な造りと、少しひんやりとした空気感が、ここが特別な場所であることを物語っている。
「ここは……?」
まふゆが尋ねると、ミカゲが短く答えた。
「霊廟だ。学園の創設者や、歴史に名を遺した者たちが眠っている」
「霊廟……」
そんな神聖な場所にまで卵が隠されているのだろうか。まふゆが辺りを見回していると、ミカゲの視線が霊廟の入り口、重厚な鉄の扉に注がれていた。
「……一番強い気配が、この奥からする」
「一番強い……ってことは、もしかして……」
「ああ。金の卵だろうな」
金の卵。100ポイントが与えられる、最もレアな聖卵。
ごくり、とまふゆは息を呑んだ。それを手に入れれば、きっと優勝は間違いない。
しかし、ミカゲは扉に近づこうとはせず、険しい表情でその場に佇んでいた。彼の様子に、まふゆは不思議に思う。
「ミカゲさん……?行かへんのですか?」
「……妙だ」
「え?」
「ローゼリアの気配に、別のものが混じっている。……これは、あまり質の良くない魔力の気配だ」
ミカゲの瞳が、鋭く細められる。それは、午前中の戦闘訓練で見た、暗殺者としての彼の目だった。
そのただならぬ雰囲気に、まふゆの胸にも緊張が走る。
ただの卵探しゲームではなかったのだろうか。
霊廟の中から漂ってくる、不穏な気配。
二人は、鉄の扉を前に、静かに立ち尽くすのだった。




