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A組の教室は、大講堂ほどではないにしろ、かなりの広さがあった。
天井は高く、大きな窓からは陽光がたっぷりと差し込んでいる。机や椅子も様々な体格の種族に対応できるよう、多種多様なものが用意されていた。
「うわあ……!広い教室やね……!」
「本当だな。さすがは王立学園、か」
レオンハルトが感心したように呟きながら、教室を見渡す。
「席は自由みたいだね。……どこに座る?」
セリウスが冷静に状況を分析し、二人に問いかけた。
教室にはすでに何人かの生徒がおり、思い思いの場所に座って談笑したり、静かに本を読んでいたりする。
その中にはエルフや獣人、ドワーフなど、様々な種族の姿が見えた。
「まふゆはどこがいい?窓際のほうが落ち着くか?」
レオンハルトが気遣うように、まふゆの顔を覗き込んだ。
「んー……ほなうちは、窓際のここで」
「そうか。じゃあ俺はその前に座るかな」
レオンハルトはそう言って、まふゆが指さした席のすぐ前の椅子を引いた。
「じゃあ、僕は君の隣に」
セリウスもまふゆの隣の席に静かに腰を下ろす。彼の柔らかい視線が、窓から差し込む光を受けてきらめくまふゆの白い髪に注がれた。
まふゆが席に着いて荷物を下ろしていると、ふっと背後に人の気配を感じた。
振り返るよりも早く、すぐ真後ろの席に誰かが音もなく座る。
そこにいたのは、黒い装束に身を包んだ青年だった。目元から上以外は布で覆われており、表情は窺えない。
ただ、覗く瞳は底なしの闇のように静かで、感情の色を一切映していなかった。
彼がそこに座るまで、まふゆは全く気配を感じなかった。まるで、影そのものが人の形をとったかのようだ。
その青年は、他の誰とも言葉を交わすことなく、ただ静かに前を見据えている。教室の喧騒が、彼を中心にしてぽっかりと穴が開いたように感じられた。
(……この人、いつから……?)
まふゆはわずかな緊張を覚えながらも、視線を前に戻した。
こうして、A組での席順はまふゆの前がレオンハルト、隣がセリウス、そして後ろが謎めいた黒装束の青年だと決まったのだった。




