2-16
このクエストは新入生用として設定されている。だから、あの巨大なゴーレムも、本気で殺しにかかってくるようなものではないはず。
けれど、それでも、この威圧感は本物だった。
ゴオォォォン……
ゴーレムが低い唸り声のような音を響かせながら、ゆっくりとこちらへ歩を進める。
その一歩で、広間全体が揺れた。岩のような拳を持ち上げ、今にも振り下ろそうとしている。
「まふゆ、リリア、下がってろ!俺たちが前に出る!」
レオンハルトが叫び、訓練用の剣を構える。実戦用ではないが、その身のこなしは既に歴戦の戦士のようだった。
「シャノン、左を頼む!」
「言われなくてもわかってるわよ!」
シャノンが身を屈め、獣人特有の俊敏さで左側へと跳んだ。猫族の爪が、淡い光を帯びる。
「……右は俺が見る」
ミカゲは無言のまま影のように動き、ゴーレムの死角へと滑り込んでいく。その動きは音もなく、まるで本当に影そのものになったかのようだった。
「セリウス、魔術で援護を!」
「わかった、兄さん!」
セリウスは詠唱を始める。その声は冷静で、戦いの緊張を微塵も感じさせない。
「風よ、刃となりて敵を断て――『ウィンド・カッター』!」
セリウスの杖から、鋭い風の刃がゴーレムの足元へと放たれた。しかし、ゴーレムの岩の体は硬く、風の刃は小さな傷をつけただけで弾かれてしまう。
「くっ……やっぱり硬いか……!」
「大丈夫、今のでちょっと動きが鈍ったよ!」
リリアがまふゆの隣で、ゴーレムの動きを観察している。
確かに、セリウスの魔術でバランスを崩したのか、ゴーレムの動きが一瞬だけ止まった。
「今だ!」
その隙を逃さず、レオンハルトが剣を振りかぶり、ゴーレムの右腕へと斬りかかる。
ガキィン!という硬質な音が響き、剣が岩に阻まれる。だが、レオンハルトの怪力は伊達ではない。ゴーレムの右腕に、小さなひびが入った。
「いけるぞ!このまま畳みかけるんだ!」
その言葉に呼応するように、シャノンが左側から、鋭い爪でゴーレムの足の関節部分を引っ掻く。
ミカゲは背後から、短剣をゴーレムの背中の隙間へと正確に突き刺していく。
だが──
ゴーレムは、怒りの咆哮を上げると、その巨体に似合わぬ速さで腕を振り回した。
「うわっ!?」
「きゃっ!」
レオンハルトとシャノンが、とっさに後方へと飛び退く。
ミカゲだけは影に身を溶かし、攻撃を回避していた。
「やばい……思ったより反応が早い……!」
レオンハルトが歯噛みする。




